海の音  制作順

8001 やがてもう死もなく生もない世界 時が洗っていった砂浜
8002 姫神の曲も終わってふるさとの潮騒すでに聴こえなくなる
8003 時を隔て波を隔てて語りあう 幾千の闇越えて見たもの
8004 浜辺には連歌の人の庵跡 遠浅なれば青の漣
8005 弟の、その子の、養子先のなど烏帽子・直垂の絵を分かつ如
8006 そのように自害した人幾人も連枝連雀、炎の蒔絵
8007 城は火を放って落ちる 自害してその人の子も夢も炎に
8008 一切の敵に離れて春の城 連歌に遊ぶ 滅びてあらむ
8009 一滴の血のつながりのありやなし 四季花鳥図のかささぎほどの
8010 その人が愛した茶碗と掛け軸と歌に連なる一筆の書と
8011 「いつも口髭のあたりに春風が遊んでいるような男」と司馬遼太郎の書くその人
8012 キリスト教布教を許した戦国の武将は微風を纏うその人
8013 信長が開く以前に開かれて許す以前に許されていた
8014 その町は活気に溢れ賑わった自由交易都市の始まり
8015 修羅の人信長以前、キリスト教布教を許し茶人利休を友としていた
8016 大徳寺襖絵に見る花鳥図のエネルギッシュな中世の力
8017 長袴、烏帽子の射手が放つ矢と墨で書かれた隠れ字の鬼
8018 百手という弓矢の神事 本年の的を射抜いた射子衆の射子
8019 神楽舞う男ありけり昼の舞、夜の舞、なお続く炎の舞
8020 聚光院殿、歌に連なり歌を書き利休の墓に並び眠れる
8021 掛け軸も襖も常に変わらずにそこにあるかのように鈍色
8022 八百年続いた井戸の透明さ 神の社につながった水
8023 懸けのいおと発音している智恵さんはウオではなくてイオと懸けの魚を
8024 田畑を失くし山林を失くしあらゆる一切を失くし 儀式行事だけを伝える
8025 灰を持ち清めているのは智恵さんで支店から来た本家のお嫁さん
8026 正月が終って家屋敷清める魔除けの灰も一周
8027 神棚に飾る注連縄を作るのは男の仕事とオモのおじさん
8028 民俗の伝統辿るシリーズの一巻として《ふるさとの伝承》
8029 白砂に波打ち寄せてふるさとはNHKの画面の中に
8030 故郷は遠きにありてというドラマ見つつ琴弾浜の夕陽を
8031 暮れ残る琴弾浜の銭型の寛永通宝、砂に描く文字
8032 泉蔵院、城壁に似た白壁の道を曲がれば七月の海
8033 三架橋、琴弾八幡、神恵院 楠の大樹と涅槃の釈迦と
8034 銭型の寛永通宝、白砂に描かれて琴弾浜海水浴場
8035 射吹島、亦島、菊紋円神島 箕浦走る海岸電車
8036 三豊郡、十六箇村の年貢米納めて昏き蔵屋敷なれ
8037 流金も和金も川を流れ来る金魚問屋の庭陰の川
8038 雨霧城、由佐城、仁尾城、九十九城 讃岐は城もお結びコロリン
8039 四国路の衛門三郎、伝説に蓮華微笑のような昇天
8040 寒気団迫り来るころ魚捕る四万斗の霧凍るこの朝
8041 火を振って魚集めて漁れば魚は桜の色帯びて来る
8042 漁火の海があるから帰るべき海もあるべし空海の幼名は真魚
8043 海彦の裔にして婆沙羅の裔、海の彼方に立つ蜃気楼
8044 水仙は春の香りの黄水仙 海を見ていた城の水仙
8045 貝殻に残っているのは海の傷 巻貝がつつむ青い潮騒
8046 冬鳥が南へ向かう風の道 島々に鳥 島々に花
8047 海知らぬ都のひとの戯れ言に海の下にも木賊唐草
8048 めひかりが珊瑚の林泳ぐからそよと風吹け砂巻きながら
8049 いにしえの道を辿れば海も見え高凪という凪の瀬戸内
8050 敷石の道をたどれば鬱蒼と幽冥き森の茅の輪、流鏑馬
8051 夕空に浮かぶ満月さざなみの海辺の村の砂糖黍畑
8052 菜の花の月は上弦 吹く風も海峡こえて四月の吹雪
8053 夏の夜の月は大きい故郷の海岸に来て風の夏来て
8054 民営化スタートするから引越しも考えている小さな局舎
8055 長屋門の片袖使って開局し 水色のペンキ色褪せてゆき
8056 一丁目一番地から配達の赤いバイクが出る急坂の町
8057 郵便の袋が山と積まれたお盆前 集配・郵便・簡保の窓口
8058 夕陽射す局舎に漸く浜風が もうすぐ帰って来る釣り船が
8059 桟橋に横付ける船引き入れて照明灯の下に烏賊
8060 伊勢海老の舌に仄かな甘さに似て暮れなずむそら港夕景
8061 港には雨降るもよし止むもよし 出船入船にぎわう夏は
8062 海底に眠っていたと思うのに引き揚げられて哀れ蛸入道
8063 吊るされしまま削がれゆく鮟鱇の体内にありしころの水嵩
8064 海鼠、雲丹、壷焼きさざえ、蕗に添え貝の酒蒸し潮の香の膳
8065 波の花、月の小舟を吹き寄せて 風は早瀬を潮の音戸を
8066 塩、砂糖、讃岐三白永年の田地経営 無駄な歳月
8067 腑抜けとも愚か者とも旅行記の独逸、伊太利亜、長い空白
8068 鵞鳥より暢気な当主、落魄も知らずに遊ぶ稚気のみの医師
8069 やがて消えやがて総べては洪水の去った後より跡形もなく
8070 港から上がる坂道 降る雨のたちまち過ぎて海は薔薇色
8071 雪降れば雪降る巌 雨降れば雨の岩礁 入り江の村の
8072 離れには飛び石伝いに行けるからお祖父さんの隠居所は近い
8073 保命酒本舗の杉の香りする玄関に立てば薄闇の夏
8074 夕されば風は心を過ぎてゆく川面を走る一粒の石
8075 夏、驟雨 あなたのいないK町の五色海岸土用波立つ
8076 風ならば無人の島の廃屋の枇杷の木の葉もそよがせるのに
8077 楽譜集燃やしてあがる炎がある また夏が来る海岸倉庫
8078 重力を持って飛べたら歌えたら水平線が霞んでいるね
8079 空想と空想むすぶ接点に空の巣があり燕やすらう
8080 水の夏、火の夏、風の星祭 北の大地の古式の祭り
8081 イクパスイ彫刻された木の意匠 道南十二の館の出土品 
8082 吹雪く城 蝦夷の地に立つ城ゆえに年貢納める米倉を持たず
8083 交易の商品あれば石高に換算すれば無限の富を積む
8084 弁財船、北前船の航路から引き揚げてくる数多の賜物
8085 異文化と異種交易の接点に蝦夷の夕焼け落日の海 
8086 一族の興亡語る戦記にも降る雨はあれ 夏越しの祀り
8087 城落ちて自害して果つ幾人かその影曳いて死を見る狐
8088 見たかった祖の親たちの炎える城 夏越しの祭りの茅の輪をくぐる
8089 あぁ、鯨 鯨のように海に出て大海原の風になりたい
8090 日振り島、魚島、燧灘の島 鯨の泳ぐ海だった瀬戸内海(うみ)
8091 鯛網の盛んな頃の燧灘マッコウクジラもレイゴンもいた
8092 鯨獲る漁師の顔も輝いて鯨来る海、幸いの海  
8093 奉納の額に描かれた出漁図 海亀、スナメリ、銛で突く鯨
8094 その後の漁業衰退する海の遥か洋上鯨見る夢
8095 鯨には漁業探知機付けられて深海調査船の追跡受けて
8096 またいつか帰っておいでレイゴンと呼ばれたスナメリそして鯨も  
8097 笹の葉が小さくゆれる杣の道 風の鞍部に住む八百戸
8098 真浦港、尾浦港には繋留中の出航を待つ新造の船
8099 水仙の自生する谷 鬼の端 純友伝説百合若伝説
8100 白い船見ていた岬 花が咲き風車が回る 最果てという
8101 仁尾の浜、太陽発電する浜に六基の風車、砂の描く波  
8102 その店の名前は「風車」阪急六甲の昔の駅舎降りてしばらく
8103 異邦人観光客の来る街のアンネ・フランク隠す屋根裏 
8104 ナウシカの風の谷にもありました風車と緑の谷の伝説
8105 鳥の歌、風の心の草笛を鳴らして過ぎる風車の村で
8106 火蜥蜴の這う道を来る旅人の背に覗いている風車 
8107 森の騎士、海の男に守られて風車の町は千年夢む  
8108 海の底プランクトンも漂えば水母も水の宇宙漂う
8109 我魚、一糸纏わぬ海水魚 日向の海の水海月かも
8110 離れ島にいると星の音がする俊寛も聞いただろうか
8111 海に立つ波の墓標が虹を呼ぶ滴く屍や座礁する船
8112 青色のインク滲めば海色のイルカが泳ぐ夏の絵葉書
8113 逢うために越えた青空、越えた海 風切り羽も汚れてしまう
8114 いつか風、いつか暗闇吹く風に告げてください待っていますと
8115 太陽が水平線に沈むから 今燃えさかる舟があるから
8116 レイゴンと呼ばれたスナメリ菊島のアシカと呼ばれた海の客たち
8117 鯛網の盛んな頃の蘇芳島 海亀もいたレイゴンもいた
8118 各地から出稼ぎに来る漁師もいて魚島の頃、魚燐燿めく
8119 奉納の絵馬に描かれた出漁図 海亀、スナメリ、鈴生りの鯛
8120 満ち潮の岬の空の薔薇色の空に届けと帽子を飛ばす
8121 連絡船見ていた岬の日没の竜神崎の海の夕映え
8122 誰知らぬ竜神崎の洞窟の海賊の船隠す水際
8123 流氷の岬めぐれば風光る遠いロシアの白嶺がある 
8124 日振崎、海に続けばゆっくりと夕陽の海に向かう野生馬
8125 病む馬は群れを離れて遅るらし風の岬の烈しさ避けて
8126 岬には白いはまゆう咲いていた瀬戸の小島の蘭に似た花  
8127 浜木綿が咲く砂地には入り江には朝日夕日の舟もゆれていた  
8128 群生のハマユウ香る入り江から岬を回る舟が出て行く  
8129 水仙が終ればハマユウ群生し島の岬は夏を迎える  
8130 日振島、来島、潮が渦を巻く 水軍消えてハマユウが咲く  
8131 箕浦を海岸線が回りゆく 岬の蔭も青い燧灘  
8132 遠く来て私の知らない海に来て 海の青さに包まれている 
8133 夜の風朧の月を吹きすぎて艀溜まりの波となるまで
8134 桟橋を離れる船の描く波 ただそれだけを残して消えた
8135 水面には燿めく風の置き土産カモメの好きな海のきらきら
8136 いつかこの風になる日のそのための青夕焼けの満ちる空洞
8137 海色の目の魚「めひかり」宮崎の土々呂という地の深海の魚
8138 めひかりのほのかに甘き海の味 仄かに春もそこに来ている 
8139 拾われて嬉しかったと貝殻がひとりぼっちで淋しかったと
8140 貝殻は海の記憶を届けます 窓を閉じても海の潮騒
8141 花があり貝殻があり星の砂深夜に降るよ 月が見ている
8142 焼き蟹の赤き甲羅と牡丹雪 尾張名古屋の望郷の宴
8143 めひかりってどんなお魚なんだろう深海に棲む魚の目の青 
8144 砂浜の松に忘れた衣なら汚れ破れて潮騒ばかり 
8145 とぷとぷとたぷたぷたぷと波の音 沖は夕凪、港は小凪
8146 こちやぼら 棄てる魚でございます やさぐれ仲間にあらずグレなど
8147 黒鯛はチヌと呼ばれることもある グレと呼ぶのはいつからのこと
8148 不器用な私にできないことができる 手蚕糸を針に結ぶ老人
8149 紫雲出山、荘内半島、浦島と遊ぶ子供の一人であった
8150 綿の実さん?海綿うさぎって何でしょう?〈卵で産みたい〉秋吉久美子
8151 富士壺は藤壺ならず宮ならずbarnacleなる甲殻の類
8152 グレという巻き餌の魚あるらしき 黒鯛に似て非なる下魚
8153 砂の城 築く、崩れる、繰り返す 波がさらった二人のお城
8154 塩水に沁みた傷口、
祥  * 『海の音』 * 17:36 * - * -

海の音 200













やがてもう死もなく生もない世界 時が洗っていった砂浜
姫神の曲も終わってふるさとの潮騒すでに聴こえなくなる
時を隔て波を隔てて語りあう 幾千の闇越えて見たもの
浜辺には連歌の人の庵跡 遠浅なれば青の漣
弟の、その子の、養子先のなど烏帽子・直垂の絵を分かつ如
そのように自害した人幾人も連枝連雀、炎の蒔絵
城は火を放って落ちる 自害してその人の子も夢も炎に
一切の敵に離れて春の城 連歌に遊ぶ 滅びてあらむ
一滴の血のつながりのありやなし 四季花鳥図のかささぎほどの
その人が愛した茶碗と掛け軸と歌に連なる一筆の書と
「いつも口髭のあたりに春風が遊んでいるような男」と司馬遼太郎の書くその人
キリスト教布教を許した戦国の武将は微風を纏うその人
信長が開く以前に開かれて許す以前に許されていた
その町は活気に溢れ賑わった自由交易都市の始まり
修羅の人信長以前、キリスト教布教を許し茶人利休を友としていた
大徳寺襖絵に見る花鳥図のエネルギッシュな中世の力
長袴、烏帽子の射手が放つ矢と墨で書かれた隠れ字の鬼
百手という弓矢の神事 本年の的を射抜いた射子衆の射子
神楽舞う男ありけり昼の舞、夜の舞、なお続く炎の舞
聚光院殿、歌に連なり歌を書き利休の墓に並び眠れる
掛け軸も襖も常に変わらずにそこにあるかのように鈍色
八百年続いた井戸の透明さ 神の社につながった水
懸けのいおと発音している智恵さんはウオではなくてイオと懸けの魚を
田畑を失くし山林を失くしあらゆる一切を失くし 儀式行事だけを伝える
灰を持ち清めているのは智恵さんで支店から来た本家のお嫁さん
正月が終って家屋敷清める魔除けの灰も一周
神棚に飾る注連縄を作るのは男の仕事とオモのおじさん
民俗の伝統辿るシリーズの一巻として《ふるさとの伝承》
白砂に波打ち寄せてふるさとはNHKの画面の中に
故郷は遠きにありてというドラマ見つつ琴弾浜の夕陽を
暮れ残る琴弾浜の銭型の寛永通宝、砂に描く文字
泉蔵院、城壁に似た白壁の道を曲がれば七月の海
三架橋、琴弾八幡、神恵院 楠の大樹と涅槃の釈迦と
銭型の寛永通宝、白砂に描かれて琴弾浜海水浴場
射吹島、亦島、菊紋円神島 箕浦走る海岸電車
三豊郡、十六箇村の年貢米納めて昏き蔵屋敷なれ
流金も和金も川を流れ来る金魚問屋の庭陰の川
雨霧城、由佐城、仁尾城、九十九城 讃岐は城もお結びコロリン
四国路の衛門三郎、伝説に蓮華微笑のような昇天
寒気団迫り来るころ魚捕る四万斗の霧凍るこの朝
火を振って魚集めて漁れば魚は桜の色帯びて来る
漁火の海があるから帰るべき海もあるべし空海の幼名は真魚
海彦の裔にして婆沙羅の裔、海の彼方に立つ蜃気楼
水仙は春の香りの黄水仙 海を見ていた城の水仙
貝殻に残っているのは海の傷 巻貝がつつむ青い潮騒
冬鳥が南へ向かう風の道 島々に鳥 島々に花
海知らぬ都のひとの戯れ言に海の下にも木賊唐草
めひかりが珊瑚の林泳ぐからそよと風吹け砂巻きながら
いにしえの道を辿れば海も見え高凪という凪の瀬戸内
敷石の道をたどれば鬱蒼と幽冥き森の茅の輪、流鏑馬
夕空に浮かぶ満月さざなみの海辺の村の砂糖黍畑
菜の花の月は上弦 吹く風も海峡こえて四月の吹雪
夏の夜の月は大きい故郷の海岸に来て風の夏来て
民営化スタートするから引越しも考えている小さな局舎
長屋門の片袖使って開局し 水色のペンキ色褪せてゆき
一丁目一番地から配達の赤いバイクが出る急坂の町
郵便の袋が山と積まれたお盆前 集配・郵便・簡保の窓口
夕陽射す局舎に漸く浜風が もうすぐ帰って来る釣り船が
桟橋に横付ける船引き入れて照明灯の下に烏賊
伊勢海老の舌に仄かな甘さに似て暮れなずむそら港夕景
港には雨降るもよし止むもよし 出船入船にぎわう夏は
海底に眠っていたと思うのに引き揚げられて哀れ蛸入道
吊るされしまま削がれゆく鮟鱇の体内にありしころの水嵩
海鼠、雲丹、壷焼きさざえ、蕗に添え貝の酒蒸し潮の香の膳
波の花、月の小舟を吹き寄せて 風は早瀬を潮の音戸を
塩、砂糖、讃岐三白永年の田地経営 無駄な歳月
腑抜けとも愚か者とも旅行記の独逸、伊太利亜、長い空白
鵞鳥より暢気な当主、落魄も知らずに遊ぶ稚気のみの医師
やがて消えやがて総べては洪水の去った後より跡形もなく
港から上がる坂道 降る雨のたちまち過ぎて海は薔薇色
雪降れば雪降る巌 雨降れば雨の岩礁 入り江の村の
離れには飛び石伝いに行けるからお祖父さんの隠居所は近い
保命酒本舗の杉の香りする玄関に立てば薄闇の夏
夕されば風は心を過ぎてゆく川面を走る一粒の石
夏、驟雨 あなたのいないK町の五色海岸土用波立つ
風ならば無人の島の廃屋の枇杷の木の葉もそよがせるのに
楽譜集燃やしてあがる炎がある また夏が来る海岸倉庫
重力を持って飛べたら歌えたら水平線が霞んでいるね
空想と空想むすぶ接点に空の巣があり燕やすらう
水の夏、火の夏、風の星祭 北の大地の古式の祭り
イクパスイ彫刻された木の意匠 道南十二の館の出土品 
吹雪く城 蝦夷の地に立つ城ゆえに年貢納める米倉を持たず
交易の商品あれば石高に換算すれば無限の富を積む
弁財船、北前船の航路から引き揚げてくる数多の賜物
異文化と異種交易の接点に蝦夷の夕焼け落日の海 
一族の興亡語る戦記にも降る雨はあれ 夏越しの祀り
城落ちて自害して果つ幾人かその影曳いて死を見る狐
見たかった祖の親たちの炎える城 夏越しの祭りの茅の輪をくぐる
あぁ、鯨 鯨のように海に出て大海原の風になりたい
日振り島、魚島、燧灘の島 鯨の泳ぐ海だった瀬戸内海(うみ)
鯛網の盛んな頃の燧灘マッコウクジラもレイゴンもいた
鯨獲る漁師の顔も輝いて鯨来る海、幸いの海  
奉納の額に描かれた出漁図 海亀、スナメリ、銛で突く鯨
その後の漁業衰退する海の遥か洋上鯨見る夢
鯨には漁業探知機付けられて深海調査船の追跡受けて
またいつか帰っておいでレイゴンと呼ばれたスナメリそして鯨も  
笹の葉が小さくゆれる杣の道 風の鞍部に住む八百戸
真浦港、尾浦港には繋留中の出航を待つ新造の船
水仙の自生する谷 鬼の端 純友伝説百合若伝説
白い船見ていた岬 花が咲き風車が回る 最果てという
仁尾の浜、太陽発電する浜に六基の風車、砂の描く波  
その店の名前は「風車」阪急六甲の昔の駅舎降りてしばらく
ナウシカの風の谷にもありました風車と緑の谷の伝説
鳥の歌、風の心の草笛を鳴らして過ぎる風車の村で
火蜥蜴の這う道を来る旅人の背に覗いている風車 
森の騎士、海の男に守られて風車の町は千年夢む  
海の底プランクトンも漂えば水母も水の宇宙漂う
我魚、一糸纏わぬ海水魚 日向の海の水海月かも
離れ島にいると星の音がする俊寛も聞いただろうか
海に立つ波の墓標が虹を呼ぶ滴く屍や座礁する船
青色のインク滲めば海色のイルカが泳ぐ夏の絵葉書
逢うために越えた青空、越えた海 風切り羽も汚れてしまう
いつか風、いつか暗闇吹く風に告げてください待っていますと
太陽が水平線に沈むから 今燃えさかる舟があるから
レイゴンと呼ばれたスナメリ菊島のアシカと呼ばれた海の客たち
鯛網の盛んな頃の蘇芳島 海亀もいたレイゴンもいた
各地から出稼ぎに来る漁師もいて魚島の頃、魚燐燿めく
奉納の絵馬に描かれた出漁図 海亀、スナメリ、鈴生りの鯛
満ち潮の岬の空の薔薇色の空に届けと帽子を飛ばす
連絡船見ていた岬の日没の竜神崎の海の夕映え
誰知らぬ竜神崎の洞窟の海賊の船隠す水際
流氷の岬めぐれば風光る遠いロシアの白嶺がある 
日振崎、海に続けばゆっくりと夕陽の海に向かう野生馬
病む馬は群れを離れて遅るらし風の岬の烈しさ避けて
岬には白いはまゆう咲いていた瀬戸の小島の蘭に似た花  
浜木綿が咲く砂地には入り江には朝日夕日の舟もゆれていた  
群生のハマユウ香る入り江から岬を回る舟が出て行く  
水仙が終ればハマユウ群生し島の岬は夏を迎える  
日振島、来島、潮が渦を巻く 水軍消えてハマユウが咲く  
箕浦を海岸線が回りゆく 岬の蔭も青い燧灘  
遠く来て私の知らない海に来て 海の青さに包まれている 
夜の風朧の月を吹きすぎて艀溜まりの波となるまで
桟橋を離れる船の描く波 ただそれだけを残して消えた
水面には燿めく風の置き土産カモメの好きな海のきらきら
いつかこの風になる日のそのための青夕焼けの満ちる空洞
海色の目の魚「めひかり」宮崎の土々呂という地の深海の魚
めひかりのほのかに甘き海の味 仄かに春もそこに来ている 
拾われて嬉しかったと貝殻がひとりぼっちで淋しかったと
貝殻は海の記憶を届けます 窓を閉じても海の潮騒
花があり貝殻があり星の砂深夜に降るよ 月が見ている
焼き蟹の赤き甲羅と牡丹雪 尾張名古屋の望郷の宴
めひかりってどんなお魚なんだろう深海に棲む魚の目の青 
砂浜の松に忘れた衣なら汚れ破れて潮騒ばかり 
とぷとぷとたぷたぷたぷと波の音 沖は夕凪、港は小凪
こちやぼら 棄てる魚でございます やさぐれ仲間にあらずグレなど
黒鯛はチヌと呼ばれることもある グレと呼ぶのはいつからのこと
不器用な私にできないことができる 手蚕糸を針に結ぶ老人
紫雲出山、荘内半島、浦島と遊ぶ子供の一人であった
富士壺は藤壺ならず宮ならずbarnacleなる甲殻の類
グレという巻き餌の魚あるらしき 黒鯛に似て非なる下魚
砂の城 築く、崩れる、繰り返す 波がさらった二人のお城
塩水に沁みた傷口、富士壺で切れた傷口治りましたか
永遠をただ待つ亀がいてもいい セント・ジョージはガラパゴスで待つ 
待ちぼうけ このまま亀になれるなら 気づかぬままでいたいと思う  
天蓋を支えて亀は永遠の孤独の賢者 風に吹かれて  
海は待つ海底(うなぞこ)杳く藻のそよぐ竜宮の亀、浦島を待つ
紫雲出山、仁尾の海辺に佇めば太郎の亀も来る燧灘  
海亀が卵を産むよ泣きながら潮騒が呼ぶ海へ帰るよ  
浦島を乗せた海亀、月の夜 人魚と遊ぶ僕は海亀  
観音寺、浄光心寺、西の海、紫雲出半島包む夕光(かげ)
深海魚、春の渚に横たわる 渚の砂に葬られるという  
先週は鯨が死んだ入り江があり海豚も死んだ 四月の渚
さようなら黄金の月が出ています 春の渚の蛤、浅蜊
平家蟹、怨み忘れぬ月の夜、凪渡る海、鳴き砂の海
船玉を祀った船の船尾にも魚群監視機みたいな鴎  
春だから海は薔薇色、その空も水平線も幸福の色
雪の道、海まで続く北国の海辺の藁や板覆いの小屋
北国は雪と氷に閉ざされて 春待つという時化の海という
瀬戸内のぽんぽん船はないけれど夕凪の海、金の巻き砂
瀬戸内の海見る座敷、七卿を匿っていた離れの石蕗
瀬戸内のポンポン船の船停まり潮待ち船を洗うさざなみ
海と砂、水の記憶のたどりゆく指の向こうはすべて水色 
魚眠り海草眠り貝眠り海辺はあさき春のトレモロ  
海沿いの旧街道の宿場町 鶯が鳴く酒舗の梅林 
神戸市の御影・芦屋の真ん中の白砂青松 流され稲荷
廃船の中に蟹這うその蟹の行方を追えば海は蜃気楼
帰ろうか 少し疲れてきた私 今、故郷の空の誘惑
故郷と言ったら何を思いだす光る海とか薔薇色の海  
故郷は青い海です鮮やかな それから鉛色した海も   
海辺には海辺の墓地が 故郷に私を待つ花の咲く道 
観音寺・箕浦、燧灘めぐる海岸線は予讃本線
絵葉書の余白に滲む海の色 桜前線黒潮育ち 
約束はまだ果たせない花便り渡海船は一日二便 
菜の花が海までつづく道をゆく海辺の道は潮騒の道  
桜鯛、瀬戸の小島の海水の匂いしているピチピチ尾ひれ
洞窟に潮満ち潮引きたぷたぷと波の音だけ聞こえ天心
ぎらぎらと太陽が照る油照り狐が待っている曼殊沙華
人はみな酔生夢死の旅人で竜宮城の浦島太郎
海の底歩いていたり海老や蟹 そよいでいたり若布や昆布
海の底虹色の夢見る珊瑚 海の底にも月光の道
海の絵の傷だったかもしれなくて 水平線に隠れる夕日
夜明けには太陽昇るその海の水平線の傷よ 海の絵
網元の暗き湯殿に仄白き午前零時の湯気立ちのぼる
甲冑の触れ合う音のする如き黒き家並の果てに海あり
断崖の上の老樹のそのもとに墓地あり小さき葬列が行く
白壁と定紋瓦、長屋門 昔日知らぬ子らの落書
その昔合戦ありという杜の傍ら行けば風花が舞う
舟隠し洞窟、潮の引く時につ小さき魚の残る岩陰
坂道に籠をおろして老人は道を尋ねしわれ案じ待つ
夕焼けの墓地に海見る少年は熟れしばかりの無花果を食む




深海の底に眠っていた卵 星の卵を生んだあのひと
翡翠の卵(らん)、碧玉の卵、勾玉も真珠のようなやさしい卵
あぁもしも夢であったら夢のまに うつつ、うたかた、さゆらぐ水藻
夢だったそれはひとときその夢のひとときのため生まれた雫
夢をみるその夢よりもうつくしい翡翠の色を奏でるぴあの
海の絵の海の底には残されたaquamarineの眠る揺り籠
スナメリの伝言を見た月翳るラッコもジュゴンももういない海
スナメリは漁師の網にとらえられ 鱶の餌になる月夜の浜辺
スナメリは網切って逃げ月の夜 王子の舟に救われました
月燭の「片っぽ鋏」の蟹ならば切ってください夢の海草
崩壊の過程を生きているらしい遠い海まで行けたらいいね
海珊瑚 私ハ遠イ世界カラ来タガ 月読ノコト忘レテイナイ
私の呼んでいる声聞こえます?深夜に星の降る海の底
入り江には黄金の波、油凪 夕日に赤い帆 絵葉書の海
絵葉書の海の底にはプランクトン 鮫や鯨の重なる屍骸
無意識の構造物の仮の名を幸福の木と呼んでもいいが
試みに宇宙を縮小してみよう 君の存在が見えるかな?
創造の中心にある粒子のこと誰かが神と呼ぶこともある
創造のネットワークの中心がまばゆい光で見えない理由も
鯨にもイルカにもある中枢を人間もまた持つということ
発信は遥か南極凍る海 鯨の言葉は虹の変数
海豚から鯨へ 今日も元気かい 南氷洋に星が墜ちたよ
存在の中心地点であることに気づき始めた鯨が出てきた
大昔遥か昔のその昔 ぼくらが鳥であったその頃
大昔遥か昔のその昔 あなたが鳥であったその頃
大昔遥か昔のその昔 私が魚であったその頃
少しずつ海を歩いてみた彼は泳げることに気づいてしまう
あるものは空に昇ってあるものは海に潜った 僕たち、鯨
観測船Uの船尾と船首にはイルカがついて先導をする
鯨骨や駱駝の骨で彫った亀・梟の透かしの部分
祥  * 『海の音』 * 15:07 * comments(0) * trackbacks(0)
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