ふりむけばいつでもそこに街角に海があったが夢かもしれない












風間祥  * 『歌画集「えごの花」』関連 * 18:28 * comments(0) * trackbacks(0)

版画&短歌集『えごの花』

風間祥  * 『歌画集「えごの花」』関連 * 23:59 * comments(0) * trackbacks(0)

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風間祥  * 『歌画集「えごの花」』関連 * 23:06 * comments(0) * trackbacks(0)

街角の海

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ブラインド越しに見ている街の空 赤い屋根から濡れはじめている

 

.光る海、海見る丘に吹いた風 その気軽さが好きだったのに

 

.「問題は数学ですね。」今回は私は母として聞いている

 

.放心をしているような午后の空、春のプールに揺れている影

 

.教室の窓から遠く眺めていた 鉛色したある日の海を

 

.青谷を降りれば海星女子学院、聖母子像も遥かなる街

 

.春早き神戸の街の花吹雪今年の桜見ずに終りぬ

 

.昨日来て今日帰りゆくような旅 親しみ薄き街になりゆく

 

.この駅は久坂葉子の死んだ駅、阪急六甲通過している

 

.もう一度風に逢うため私も一つの風となるための旅

 

.私は急ぎ始めているらしい生き急ぐというほどではないが

 

.老残を見せたくはない見たくない、風を誘って散る花がある

 

.距離感が私を誘う 水流は風を含むと中国の詩に

 

.この街にカラスが飛んでくるわけは死臭が漂いはじめたからさ

 

.蜘蛛の巣の繊細な糸かけられてついに息やむまでの宙吊り

 

.物置に蛇のぬけがらいたちの巣迷宮の入口というわけではないが

 

.燃える街、暖炉に落ちた焼夷弾 母の記憶の中のその夏

 

.ふりむけばいつでもそこに街角に、海があったが夢かもしれない                

 

 

             歌誌「短歌人」・「玲瓏」より 

風間祥  * 『歌画集「えごの花」』関連 * 09:39 * comments(0) * trackbacks(0)

「遥かなる街」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光る海、海見る丘に吹いた風 その気軽さが好きだったのに

 

 

ふりむけばいつでもそこに街角に、海があったが夢かもしれない

 


青谷を降りれば海星女子学院、聖母子像も遥かなる街

 


春早き神戸の街の花吹雪今年の桜見ずに終りぬ

 

 

この駅は久坂葉子の死んだ駅、阪急六甲通過している

風間祥  * 『歌画集「えごの花」』関連 * 09:39 * comments(0) * trackbacks(0)

えごの木

風間祥  * 『歌画集「えごの花」』関連 * 17:59 * comments(0) * trackbacks(0)

往き帰り枯葉の寝床に蹲る白い猫見るこの幾日か

風間祥  * 『歌画集「えごの花」』関連 * 17:59 * comments(0) * trackbacks(0)

風の連弾

・少しだけ暗いところが好きだった陽あたる丘に住んでいたから
・木陰から木陰へ続く小径より栗のいが踏み上る石段
・栗の木の栗落ちる音えごの木の実の雨だれに似て風に鳴る音
・くぬぎの実ならの実しいの実けやきの実かしの実も落ちよ風の連弾
・音のない雨を見ている音のない風を見ている一年の後

・風ならば初夏の小径を吹いていた 古井戸一つ隠す草むら
・つわぶきの黄色い花も咲いていた萼あじさいの群落の蔭
・王女という渾名のがまが待っていた 雨降る前の夜の玄関
・美しい楽しいことはもうないと街の隠者のように棲む蟇(ひき)
・「お母さん かたつむりって貝なんだよ」 六月の雨、雨の降る庭

・山椒の赤い実を腹いっぱいに詰めているよ香ばしそうな鳩だよ
・白黒のぶちと茶色の子猫が林で生まれてさざんかも咲いた
・あじさいの花の下にはかたつむり 雨降る午後の物思いして
・国分寺の家の樹に似て太い幹蝉がとまっている夏の闇
・窓際に誰かが忘れていった本 風が読んでる「梁塵秘抄」

・私も月の小舟を一人漕ぐ「梁塵秘抄」の桂男のように
・降る雨のように触れられないならばいっそ何にも無い方がいい
・今さらに何を求めて小綬鶏は午睡している榛の木を呼ぶ
・榛の木は応えられずに耳澄ます 崖を下ってゆく水の音
・ひまわりに似た花が咲く夏の朝それも晩夏の雨上りの朝
・往き帰り枯葉の寝床にうずくまる白い猫見るこの幾日か

・駅前にビル増えてきて柿色の空のむこうの富士が小さい
・国分寺崖線に立つ古家は嵐吹くたび傾いでいった
・夕暮になれば富士山影になり石段降りる猫も影になり
・どんぐりが帽子被って落ちているゆうべ風が吹いたらしくて
・傾いて立つ樹のように傾いて風の手紙を待っているだけ
・夕暮の富士シルエットになってゆく想い出だけで生きてみようか

           歌誌 「短歌人」・「未来」より

風間祥  * 『歌画集「えごの花」』関連 * 10:59 * comments(0) * trackbacks(0)

崖(はけ)の家

風間祥  * 『歌画集「えごの花」』関連 * 09:35 * comments(0) * trackbacks(0)

野火止用水

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


・西武線小川駅から線路添い徒歩七分の小さな踏切
・その家の木々鬱蒼と生い茂り木の間の道に揚羽が消える
   煙突を二本持つ家 鎧戸も屋根も緑青色のその家
・ひとつだけ灯りのともる窓がある 木立透かしてあかりが見える
   その家に行くため石の橋渡るそのためにだけ架けられた橋

・石橋の下の澱みに魚が棲む 昼さえ暗い木立の中に
   裏口の通用門に架かる橋 古い木橋をわたる黒猫
・四阿に至る小径にピアニスト、フジコのような老婦人立つ
   隣家には簡素な黒い鉄の橋 ポストの下に眠る老犬
   白黒の斑で垂れ耳、温和しい犬が雨の日雨の川を見ている

・鴨泳ぐ野火止の水 稚魚を抱き花を浮かべて街中流る
 野火止に稚魚、泥色の稚魚泳ぎ 木橋を渡り人影消える
・用水にだいこんの花、エゴの花 澱みに跳ねる黄金の鯉
・えごの木の白い花びら散りかかるカルガモの雛およぐ川岸
 懼れ気もなく土手を遊び場に 人をも猫をも無視して遊ぶ

 エゴの木とムラサキシキブ咲く道は家鴨が散歩する道でもある
 ダイエーの雑木林の駐車場 自転車、カート、主人待つ犬
・沢山いた鯉も大方いなくなり野火止の夏少し寂しい
・何もかも変ってしまう何もかも失うような夏めぐり来る
 昔あるエゴの木を知っていた 武蔵野で一番大きなエゴの木だった

・野鳥も来、見知らぬ水鳥なども来て教師、生徒が観察もする
・喫茶店「G」の裏庭 水流を引き入れ雨の紫陽花も咲く
・木洩れ陽にきらめく小石 武蔵野の夏が始まる、野火止の夏

(・印「早稲田文学」より 福島泰樹選)

 

 

風間祥  * 『歌画集「えごの花」』関連 * 09:33 * comments(0) * trackbacks(0)
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