花詞集(花言葉付き)

花詞集                        風間 祥


〈紐鶏頭=心配御無用・不死・不滅〉

不死・不滅 心配御無用何事も思い通りにはならないものさ

不死・不滅・心配ご無用ヒモゲイトウ鶏頭のその赤い冠

〈秋海棠Begonia evansiana=片思い〉

秋海棠冷たい雨の秋の花 紫匂う秋の雨の庭

〈クレマチス= 美しい・たくらみ・旅人の喜び〉

美しい企み秘めてクレマチス旅人の手の赤い風車

〈みそはぎLythrum anceps =悲哀〉

禊萩は仏の乾き癒す花 薄紫の悲哀の水辺

〈なつめZiziphus jujuba=健康の果実〉

敷島の国に棗は植えられてその実その花愁いを除く

〈ツルコベア=世間のうわさ・変転〉

変転は限りなくまた魂の落ち着く先もなく迎える終の日

〈チューベローズ=危険な楽しみ・危険な関係〉

チュ−べロ−ズ危険な楽しみだと言われ恋は魔法の薬と言われ

〈マリーゴールド=健康・可憐な愛情〉

健康と愛情だって?贅沢さ 他にいったい何があるって

〈サルビアSalvia=燃ゆる想い、知恵、家庭の徳、尊敬〉

私のブルーサルビア咲きました唐辛子の赤、サルビアの青

〈レンゲソウ=感化・私の幸福・心が柔らぐ〉

蓮華草あなたの苦痛を和らげる道端にまだ残る春の日

〈芙蓉Hibiscus mutabilis=繊細な美、富貴〉

芙蓉咲く繊細にして陽気な花 富貴の歓楽充ちる夕闇

〈花魁草Phlox paniculata=同意、温和 〉

花魁草ほんとうの名は草夾竹桃 温和な日々が流れますように

〈檜扇Belamcanda chinensis=誠実〉

ぬばたまの緋扇の種、二十手を越える指し手の誠実な詰め

〈へちま=剽軽な〉

剽軽な糸瓜の蔓がのびてゆくひょうきん族のふえる夏の庭

〈アガパンサス(紫君子蘭)Agapanthus praecox=恋の訪れ〉

君子蘭 紫匂う君にして恋の訪れ待つ白き闇

〈オオケタデ(大毛蓼)=汚れない心〉

大毛蓼、蓼科の蓼は多年草河原にあっても汚れない心

〈コマツナギ=望をかなえる〉

駒繋ぎどんな望みを叶えたら駒を繋いでもらえるのだろう

〈ユリノ木=見事な美しさ・幸福・田園の幸福〉

ユリの木の百合の高潔 田園の幸福約束している美しさ

〈ほていあおい=Eichhornia crassipes  揺れる想い 〉

           (英名ウォーター・ヒヤシンス)

ウオーターレタス浮かべる水槽とウォーター・ヒヤシンス植える 夏の水辺に

ふくらんだ葉ッパに何の想い秘め揺れているのかウオーター・ヒヤシンス

〈朝顔=はかない恋・固い約束・愛着・愛情の絆・仮装〉

朝生まれ夕べに儚い生終る仮装のような紫紺の一生

〈芥子=(赤)慰め・慰安〉

〈白粉花=あなたを思う・臆病・内気 〉

臆病なオシロイバナは思います芥子の慰めさえ遠過ぎる

〈カボチャ=大きさ・広大〉

南瓜って広大な夢を育んだアジアの野菜っていう感じだね

〈ツルバラ=いつも美しい・愛〉

〈ヒョウタン=繁栄・利得・夢 〉

〈ヤナギラン=集中する・焦点〉

蔓薔薇は「美しい夢」瓢箪は「繁栄の夢」柳蘭は何故「焦点」なの?花言葉

馬印千成瓢箪 秀吉の夢を担って伸びてゆく蔓

〈菩提樹=夫婦愛・結ばれる愛・結婚・熱愛〉

熱愛はいつかは冷めるそのうちに感謝の心に変るのだろう

〈モルセラ=感謝〉

〈リシアンサス=希望〉

菩提樹は知ってるモルセラの「感謝」リシアンサスの「希望」は知らない

〈麦藁菊Helichrysum bracteatum =永久に、永遠の記憶〉

ぼーぼーと涙流れてとどまらず 永遠にというにはあらざらむ記憶に

〈ステファノティス=傾聴する〉

ステファノス=傾聴するべししなくてはするなら全て解決もせむ

〈フィソステギア=十分に望みを達した〉

十分に望み達したその時に脆くも崩れ脆くも潰え

〈日々草=友情、楽しい思い出〉

友情は愉しい日々のたまゆらの思い出かしら 湖上の花火

日々の楽しい思い出、花束の包装紙から剥がれてしまう

公園の花壇の隅に咲いている日々草は日々元気

日々の患い知らず夏の日も毎日咲いて蕾も一杯

〈すいれんNymphaea=清純な心、甘美〉

睡蓮の花咲く朝 芥川龍之介死す芥川死す

〈ネムノキ=歓喜・創造力〉

ねむ木の合歓の眠りのその中に歓喜している妖精ジータ

〈ジンジャー=豊かな心〉

白い花ジンジャー香るこの夕べ花に降る雨、小径の翳り

〈ルドベキア=公平、正義〉

公平も正義も何もありません 人は何処に塒もつ鳥

凍る夜に凍る心に飛べざれば電網投網投げよ私に

夏の日のブラック・バード黒鳴き鳥 バイバイ、ブラック・バードさよなら

〈フィソステギア=達成〉

達成は何事にもあれ最終の列車、連結解く摩擦音

嘘という理あると知らざりし角砂糖など詰めゆく隙間

裏切りにあらざりハムレットには叔父のローマングラス

〈トルコキキョウ=よい語らい・優美・希望〉

トルコ桔梗、優美な花と思われて希望ある身と思われていて

〈ケシ=眠り、忘却〉

罌粟眠り芥子忘却すケシ揺れてヒマラヤの蒼、青の透明

〈マリーゴールドTagetes =嫉妬、悲哀、勇者、悪を挫く〉

千寿菊、万寿菊とは和名にてマリーゴールド嫉妬の炎(ほむら)

〈ぎぼうしHosta=沈静〉

ギボウシの沈静、夏の日は高く王者のようにまわる日輪

〈ツルボラン=生涯信じます〉

生涯信じますって何を?ツルボランって無責任だね

〈スイトピー=優しい思い〉

スイトピーどんな優しい思い出も失うまでに時間はいらない

思い出を語れば星の瞬きの遠くにあれば過去世の光り

〈グァバPsidium guajava =強健〉

灼熱の太陽支配するゆえに繁栄の美酒剛健グァバ酒

〈つゆくさ=小夜曲〉

露草の青の小夜曲聴くときにカウンター・ショック 水性の死か

〈ツユクサ=尊敬〉

露草が路傍に咲いて露の青ドクダミの白シャガの紫

〈ムラサキツユクサ=尊ぶ〉

菩提寺の僧の袈裟より紫の尊い色の冴える露草

〈ハマユウ=あなたを信じます・汚れがない〉

浜木綿の咲く柚木島の突端の海に下って行く斜面の道

はまゆうが入り江に近い丘に咲き夏越しの夜の海の火祭

〈ヒマワリ= 憧憬・熱愛・情熱 〉

情熱のひまわりが咲く向日葵の種の一つの焦げ茶の秘密

〈松葉菊 怠惰 クレマチス 心の美 〉

〈金魚草 欲望 フロックス 温和〉

〈けし(白) 忘却 〉

欲望も怠惰も希望も忘却もすべてまとめて今日の花言葉

〈ラベンダー= 不信・疑惑・沈黙・芳香・私に答えてください〉

ラベンダーの匂い仄かに香る部屋 まだ見ていない最果ての空

〈ビヨウヤナギ =有用・薬用 〉

白秋も歌に書きたるその花のびようやなぎの薬効は何

〈ざくろPunica granatum= 円熟した優美、子孫の守護〉

石榴科の落葉中木、挿し木して接木して殖やす花言葉は優美

今日も雨、朱色の石榴熟れていて木戸のかたえに実を輝かす

朱の石榴、ここで日記は止まっていてその日流れた血のような赤

〈びわ=治癒 〉

治癒祈る枇杷の実琵琶の形して杳い敗北滅びの歌を

外はまた冷たい雨だ中空に燕飛ぶ夏 枇杷に降る雨

〈 ライラック=美しい契り・思い出 〉

美しい契りかさねるその朝 北のキャンドル灯る明け方

ライラック苦しきことを忘れんと買い求めくる水無月の花

〈ウイキョウ= 賛美に値します・賞讃・力量・よい香り〉

茴香のウィのかなしみ水無月は憂いある月、上水に雨

〈茉萸=用心深い〉

慎重に用心深く生きてゆくこの石垣の上、茉萸の大木

茉萸の実の真っ赤に熟れてあかねさす茉萸の実入れる籠に一杯

〈月見草=自由な心〉

月見草=自由な心の花言葉もう失った心かもしれなくて

〈スイカズラ=友愛。献身的な愛〉

スイカズラ、友愛、献身的な愛 役目終るまで循環してゆく

スイカズラ、献身的な愛のこと ひとりぼっちで墜ちてきた天使

言うなれば素裸で立つ樹の心誰よりも知り寄り添う心

《コデマリ=努力する》

「努力する」そんな苦手なことはないなんて言っていたからこんな有様

コデマリの白い可憐な花が咲く 笹走という小さな村に

裏山のコデマリ霧に濡れている霧は流れて谷風運ぶ


〈アヤメ=よき便り〉

よき便りだっていうのに発熱中、朝夕気温が定まりません

スウィートピーでしたね確か昨日の花言葉スウィートピーはとても好きです

〈イチハツ=使者〉

使者の首を奪っておいで イチハツの花咲きいでて美しい月

〈マリーゴールド=友情〉

お馴染みの友情が出てまいりましたね ご機嫌ようマリーゴールド

〈ダマスクローズ=美しい姿。血色の良い〉

多血質ってわけじゃないんだダマスクローズ血色が良いだけなんだ

〈トケイソウ=信仰。信心〉

人間が信じているもの、その一は、時の信仰。マチガイアリマセン

〈チャ=追憶〉

チャって何?茶の木の茶のこと?追憶のページ開けばどこでも逢える

〈ペチュニア=あなたとなら心が安らぐ〉

私はどうして生きているのだろう あなたとなら心が安らぐ

〈シデ=装飾〉

翼あるシデの種子ゆえどこまでも装飾多き種族の側脈

側脈のはっきりしているクマシデとイヌシデ・アカシデ分ける装飾

〈エンレイソウ=熱心に。モダンな美〉

延齢草、水辺に咲けば水の精、山辺に咲けば森の妖精

〈スターチス=永久不変〉

スターチス、永久不変の何がある 胡桃のような明日を信じて

〈苧環=捨てられた恋人〉

捨てられた恋人みたいに俯いた深山苧環の雨の紫

〈ユリノキ=田園の幸福〉

田園の憂鬱よりも幸福をユリノキは選ぶ思案しながら

〈ライラック=初恋の感動〉

初恋の感動いまだこにある閉じた頁のライラックの栞

サングラス越しに見る時万華鏡みたいに吹雪く桜花びら

倒される時に外したサングラス桜降る日の光の中に

さくらにはさくらの理由あるらしく道避けて通る兄のサングラス

〈アマ=親切に感謝〉

亜麻色の亜麻なのかしら親切に感謝しています 夜はアダージョ

〈カーネーション=傷心。愛を信じる〉

「人間は必ず間違いを犯す」一医師の日記に見える傷心の痕

〈ハナショウブ=優しい心〉

花菖蒲、優しい心どこにある夏来る頃の剥き出しの心

花菖蒲、いつか失くした優しさの降る雨に似た五月の朝 

〈ムギワラギク=常に記憶せよ〉

麦藁菊いったい何を記憶する失ったものばかりだというのに

もう私死にそうな気がしていますムギワラギクが憶える前に

〈ノカンゾウ=宣告。媚びをもてあそぶ〉

ノカンゾウ何を宣告されている萱原に夏来るという夕べ

〈カンパニュラ=感謝。誠実〉

美しい星降る夜の銀河鉄道の露受けて咲く野のカンパニュラ

〈アルメリア=心遣い〉

桃色のアルメリア咲く海近くお日様のどんな心遣いで

〈庭石菖=豊富〉

〈グラジオラス=用心。堅固。密会〉

密会を果たした二人の帰り道 「人言を繁み言痛み」昔も今も

〈矢車草=愉快。繊細。幸福〉

くるくると回るよ回る幸福の矢車草の回転扉

〈茉萸=用心深い〉

慎重に用心深く生きてゆくこの石垣の上、茉萸の大木

〈リアトリス=燃える想い 〉

ブレイジング・スター紫の花リアトリス炎の星の燃える想いに

〈アワモリソウ=恋の訪れ〉

アワモリソウ=恋の訪れなどと言っても風邪の熱にもかなわない恋の熱

昨日から泳いでいます熱い熱い夏草原の海の揺籃

〈ハナショウブ=優しい心〉

花菖蒲、優しい心どこにある夏来る頃の剥き出しの心

〈ムクゲ=繊細な美〉

槿には槿の思いあるらんに繊細な美が踏み躙られる

〈スターチス=永久不変〉

スターチス、永久不変の何がある 胡桃のような明日を信じて

〈ユリノキ=田園の幸福〉

田園の憂鬱よりも幸福をユリノキは選ぶ思案しながら

〈ライラック=初恋の感動〉

初恋の感動いまだこにある閉じた頁のライラックの栞

〈アマ=親切に感謝〉

亜麻色の亜麻なのかしら親切に感謝しています 夜はアダージョ

〈ボタン=はじらい。富貴。壮麗〉

牡丹咲く 富貴、壮麗、羞しさの壮絶にして儚いドラマ

〈カーネーション=傷心。愛を信じる〉

〈カンパニュラ=感謝。誠実〉

美しい星降る夜の銀河鉄道の露受けて咲く野のカンパニュラ

〈アルメリア=心遣い〉

桃色のアルメリア咲く海近くお日様のどんな心遣いで

〈藤=恋に酔う。歓迎〉

藤の花、白雉の舞の藤の花 あかねさす恋あなたを迎える

〈庭石菖=豊富〉

花の季(とき)花に誘われ紋白蝶 花の愁いの森蔭の道  

アヤメ咲く危め殺めと変換す 薄紫に野原を染める

〈グラジオラス=用心。堅固。密会〉

密会を果たした二人の帰り道 「人言を繁み言痛み」昔も今も

〈黒種草=当惑〉

久々に黒っぽい花 当惑の表情見せるアルカロイドって毒?

〈アスター=美しい追想。変化〉

スピードと変化と自由 射手座には必要十分条件として

〈りんご=選択〉

林檎はいいな嘘がなく選択肢として最上の果実と果汁そして花びら

すべて終り、もう何もないと歩く時、道にはツツジ炎え始めている

〈キショゥブ=消息。音信不通〉

日々遠くなりゆくものを何と呼ぶ 消息不明の愛の一片

「亡き名聞く春や三年の生き別れ」丈草の句の中の人影

また消える霞のような人だった消息もなく逝ったあの人

〈シャガ=反抗〉

シャガ=反抗、大根の花に混じり咲くシャガの一群れ小川のほとり

〈ハハコグサ=いつも想う〉

ハハコグサ、風さえやんだ沈黙の薄闇の中いつも想って

〈ナシ=博愛〉

梨=博愛、心底虚しいムナシサのゆきつくところ梨の花咲く

〈アズマギク=別れ〉

アズマギク=別れだなんてさびしいですね またお会いしに来ていいですか

〈ニシキギ=危険な遊び〉

新しい玩具手にして微笑ってる大統領の薄い唇

今日の花言葉は苦手領域 媚を知らずに少女の媚は

やや淡くややしどけなき鄙桔梗 初秋の風に乗る赤蜻蛉

鄙桔梗、山かげに咲く風車 夏蝉だけが知っている青

鄙稀の可憐、汚れを知らぬ青 本陣油屋秘蔵の青磁

花言葉は「迷信」という 今日までに信じた空を明日も信じる

花言葉は「迷信」という 今日までに信じた空は明日は無いかも

血まみれで生まれてきたから私たち「貴方をうらむ」なんてできない

勢力の分散和音 薄には薄の立場 金銀穂波

〈キツネノマゴ〉

許されることがなくても美しい ひっそりと咲く狐の曾孫

〈モミジ=自制。謹慎。隠退。保存〉

欲張りな紅葉。「自制、謹慎、隠退、保存」 露払い・太刀持ちにして

いつだってセットで登場する場合 紙の力士の相撲の場合

〈弁慶草=静穏〉

うなだれて主人の下知を待つように控えるように咲く弁慶草

「チョロギ」って何だほんとに花なのか今さら驚くのも能がない

〈ダリア=華麗、優雅、威厳〉

にっぽんのダリアの艶麗まけていない薔薇より百合より牡丹より華麗に

〈アケビ=才能〉

アケビには白い心の疚しさが才より樹液溢れる果肉

〈ユーカリ=思い出〉

さみしくて死ぬコアラ ユーカリの森よ育て

思い出は夏のあの人 輝いていた海 鉛色

複雑にしないで 朱雀血を吐いたか

〈アスクレピアス=行かせてください〉

アスクレピアス=行かせて下さいと言ったっていったい何処へほんと愉快な花言葉です

〈ナナカマド=用心。慎重〉

遅すぎるもう遅すぎる用心も慎重ももう間に合わない

〈オオデマリ=約束。天国〉

約束の天国なんてどこにもない明日地球を離れる想い

〈万年草=記憶。私を思い出して〉

誰ゆえに名づけられしか万年草 記憶の底の花に逢いにゆく

〈リコリス=悲しき思い出〉

〈リコリス=(彼岸花・甘草・熱帯魚でもあった)悲しき思い出〉

〈ルピナス=空想。貪欲〉

死んじゃいたい。そんな気分になったりするルピナスおまえは貪欲すぎる

《ジャスミン=愛の通夜》

「愛の通夜」いったいどうしてそんなことに 茉莉花(ジャスミン)の花祭り

「頼りすぎ」蔓紫の花言葉 明日は何で笑おう私

祥  * 『倉庫・混:白鳥座』 * 13:25 * comments(3) * trackbacks(0)

酔芙蓉

物足りないくらいでちょうどいいのです そうです風が吹き荒れました
三ヶ月経ったんですね蔵本さん 何も変われずにいる私です
何にしろ強制するのは自然には誰にも尊敬されない場合に限られ

観音寺、豊浜、箕浦、伊予三島 夕日に染まる金色の海
観音寺16時07分発、松山行き 海に沈んでゆく夕日あり
私の拒否反応の半分は 死んでしまった誰かのものかも
焼け出され、引き揚げて来た知人、親類も二年近くを暮らしたという
あの街を焼いた炎の中にいた 当時の人も大方は死んだ

「美しい国」を語っている人に戦争も多分美しいのだろう
お隣と家を残して焼け野が原 母が語った記憶とともに
真実の一つも私は知らないが脳遺伝子に記憶している
消え去った幻だろう その校舎講堂に置かれた死体
小学校校舎に残る黒い跡 『火垂るの墓』の頃の名残りと

ひったりとゆたかに充ちていたるゆえ その蝦蟇、痩せ蛙となる
その頃の芦屋、神戸の悲惨など知らざりしかな 彼の郷の人
酒樽が醸造用の酒樽が防火用水桶になった時代と
頂いた大きな大きな酒樽でわが家は燃えることをまぬがれ
お隣の山邑さんやわが家にもその日、落ちたという焼夷弾

戦前に住んでいた家の家具調度、ロシアの人が残したものと
皇帝の別荘のある村映る 19世紀ロシアの話
私も宣戦布告したらしい宣戦布告したくなる日の今日に
この人は誰なんだろう解らないまま日々読むブログ
こんなことばかりしている場合ではないのだがこんなことばかりで終わる一生 多分

平然とナショナリストを自認する人を選べば陥る地獄
言葉などもう持つことを諦める カケスにはあれカケスの言葉
秋の風吹いてくる日の裏通り 一心不乱に咲く酔芙蓉
安倍さんが新総裁に就任する 暗い時代の秋の日に入る
細木数子さんの抗議で削除するなんてフジテレビは情けないです。
祥  * 『倉庫・混:白鳥座』 * 16:03 * comments(0) * trackbacks(0)

伽羅の木


その亀の齢(よわい)は250歳 死亡調書は老衰とあれ
日常の中に張られた死の鎖 死の連環を閉じるその時
一頭の蝶と数えてみるときに白粉花の花にまぎれる
一匹の黄色い蝶が迷いこむ 棕櫚の葉陰の野火止の道
とぐろ巻くものはともかくとりあえず作るというから美しい国

辺見庸、小熊英二、高橋哲哉の本がある隣 櫻井よしこさんや上坂冬子さんの本が
トワイライトエキスプレスと名付けられ夕日の国を駆けぬけてゆく
鉄塔で首を傾げている烏 嘴太烏の羽濡らす雨
一対一、空間未満のつまりはもう窒息しそうな関係がある
親殺し、子殺し、夫、妻殺し 煮詰まってゆくカプセル家族

転がってゆくとき石は重くなり生木も土も巻きこんでゆく
などと言っても大勢は「九条廃棄」、「憲法全面改正」へ
九条を世界の憲法にすれば・・・そのために努力する国でありたい
ファシズム、新興宗教、社会主義、 集団主義はみな同じ顔
映像のムラヴィンスキーの指先が心臓外科医のように触るよ

イスラムの教義は邪悪とベネディクト16世は言い?波紋広がる
夏中をがんばってきた臓器たち冷房病という説もある
伽羅の木の枝一本と残されたロシアの画家が描いた海の絵
水色の尾を持つ鳥が羽ばたいてジャスミンの木に別れを告げる
夏越えてもうおやすみと言っている霧か靄かが湧いてきている

夏中をがんばってきた臓器たち冷房病という説もある
そうやっていつも出鱈目書いていていつかあなたには罰があたります
などと続ければ、それだけが本当のような嘘の領分
なんてTVを見ましたが地上に月も描かれていて
嘴の長いハチドリ描かれてナスカ地上絵コンドルも飛ぶ

折鶴蘭、風船蔓、鳳仙花 霧雨降れば霧雨の中
その当時、言葉のアヤと言ったのは言葉のアヤであったのでしょうか
鬱陶しい日本になってゆくような ただ一本の道の行く先
ボランティア義務の位置づけ兵役の義務へといつか移行してゆく怖れ
液晶の画面の青の涼しさの 後輪が轢く露草の青

歌を書く賽の河原に石を積む 今日も夕日の射す瀬戸の島
「局地的豪雨」のあとに雨上がる 9.11、から5年目という
悲しみの連続として生があり 部分月蝕にも似て欠けて
橡の実は栗に似ていてしっとりと光沢帯びて九月の朝
栗の木に栗の花咲き橡の木に橡の実が生るキウイにも似た
祥  * 『倉庫・混:白鳥座』 * 16:02 * comments(0) * trackbacks(0)

蒔絵

このままでお終いにする方法考えている橡の実に雨
長い長い長いへびです六メートル 羊をのんで羊のかたち
星の王子さまの象をのみこんだ帽子の形の絵のような羊をのんだニシキヘビがいて
湯を抱くと書いて湯抱温泉と呼ぶ温泉のレポートを視る
安倍さんの時代が来ると人のいふ おそろしい時代が始まっている

いつ雨が降ったのだろう水たまり一つ残って映る秋空
「どす黒いまでに孤独」と麻生氏の修辞なかなか秀逸と思う
ゆっくりと頂上めざす甲虫 光は木々の頂上にある
雨、雨、雨、森に大地に木の枝に、天道虫ののぼる葉末に
この夏が終わる椿も沙羅も枯れ 水の無い木は枯れよと照る日

ペンギンはペンギン同士固まってブリザードから身をよけてきた
本日の〈虚構新聞〉によれば太平の世の一日である
大仰な言葉が溢れ氾濫し 火事の夢から目覚めた朝
夏草に倒れ伏したり、川底に沈んでいたり。放置自転車
精密な線で描かれる蒔絵には 「琵琶湖の芦辺のクマネズミの毛」

のであればと人工の毛も試みられ 未だことごとく成功しない
代替は不可能にして輪島塗蒔絵の承継危ういという
擦れこすれ摩滅している大都市の鼠の毛では描けないという
水毛という一際細い毛がないと漆の流れは調節できないという
蒔絵筆師、村田九郎兵衛氏の語る 琵琶湖の芦辺のクマネズミの毛

鼠の毛で作った黒毛で書く蒔絵 琵琶湖の芦辺の鼠の毛がよいという
皇統の男子出生喜んで「慶び溢る大八洲」とは勝谷誠彦氏
論争に参加したくはないけれどその論点に意義の数々
鳥たちのアウシュヴィッツのその後に人間たちのアウシュヴィッツが
人を殺すほどに傷んでいたことを 窓をつたった雨の雫を

暗闇が夜明けを連れてくるような ゆきどまりには海あるような
あの頃は自由であったと今思う 真っ先に脱け出す自由
この世という遠いところに生まれ逢いやがて離れゆく二つの影か
秋刀魚焼く煙も見えず秋はきて失意のままに逝く秋も来て
鈍色の光りを放つ中世の絵巻の中の鈴虫と月

金銀を螺鈿を漆、朱の塗りを 風の館の鎮まる櫃に
月光を宿した真珠、瑠璃、珊瑚 小函の中に納った秘密
mixiという場について規定するコメントがあり?と思う
こうあらねばなどという場は特になく と思うのは未成熟ゆえ?
火炙りの刑にあってる そののちの罪と罰とを問うな夢人
祥  * 『倉庫・混:白鳥座』 * 16:00 * comments(0) * trackbacks(0)

ぼろぼろの駝鳥

このように螢のように明滅し 宙の故郷へ帰る私たち
そしてまた神の劫火に灼かれたり 戦場に 否 人を焼く炉に
一瞬に あるいはゆっくり順番に ただそれだけの違いとも言える
鶏にとっても受難の年だった 人間たちが襲って来た年
安倍さんの理想の国を思ったら暗澹とする『火垂るの墓』思う

皇子がいて安倍さんがいて日本は再び歩む皇国化の道
イツダッテミンナガソレヲノゾンデル ソウイウワケデウマレタ水母
分身の術を使えば倍々の相乗効果、繁殖の秘密
水母の子、零点3mm手と口を一杯使って大きくもなる
透明に浮いて沈んで浮遊して六億年を生きた水母だ

千本の触手を持てば毒針の効果も千倍、千の餌食を
ぼろぼろの駝鳥を今日の自画像と 冬の渚の白い流木
千年の夢を夢見るぼろぼろの駝鳥が立った砂丘のオブジェ
太陽が海を離れた 金色の海に浮かんだ帆影、舟影
金色の海の向こうにお日さまが昇るよ 夢はどこにでもある

意味もなく不安を抱いて眠れない 泡立つように咲く百日紅
光り射す直下に向かい地震あり雲の隙間を洩れ来る光り
向日葵の最後の夏を見届けて いまゆっくりと地震波襲う
宿題を残したままの八月が終わって五輪候補地も決まる
自傷する形で愛を告げている求めていると解説の人

何者か歩き出すとき死は兆し 研究室の森閑と夏
ロマノフ朝最後の皇帝二コライの夏の離宮の夕暮れの鳩
1907年製の湯沸しのニコライ帝の治世の刻印
モスクワが全市が焼けているという ナターシャが見た炎えるモスクワ
切っ先となって尖端、痛かろう 冥王星の彼方まで行け

何だって一人で生きてゆけないか 多分、類人猿としての習性
和邇族の裔たる人の瀟洒な墓 簡素、清明、古拙な字体
草の葉のしっかり巻いて巣を作る 鬱蒼とした森で名も知れぬ虫
岩山にも僅かに水分あるらしく蘇鉄が茂る森もあるという
歌を書くことも暴力、どこまでも暴¥¥力なんぞ美しからぬ

間引かれているかもしれない私たち 遺棄、ネグレクト、燦と照る月
耐性菌少なくなって死んでゆく漂う卵、水槽の澱
飢えたことがないので飢えた時きっと真っ先に死ぬのであろう
インドでは死体流れて悠久の大河流れてガンジスの夕べ
ひたすらに退屈である退屈を紛らわせること優先課題
祥  * 『倉庫・混:白鳥座』 * 15:56 * comments(0) * trackbacks(0)

光りは木々の

ミンミンがツクツクボウシが鳴き交わす 魂を病む一夏がある
精神の不安思えばある意味では(肉体の)病気は健全なのかもしれない
生きている悲しみもあれ 白球の行方の空の虹消えた空の
静かなる黎明として見しものを薄暮の空と知る人も出で
ジャコメッティ眠る小さな白い墓地 「あともう少し」と語った人の

彫像は光りに透けてやがてその光りに吸収されてゆく線
最後は死 ゆえにひとえに唯今に 瑠璃色の蝶めざめる朝
『まほろ駅前多田便利軒』駄目なら駄目で駄目なまんまで
逃げろという『若者殺し』の著者がいう殺されぬため引き籠るのか 
何かしら不貞腐れている魂が私の中にあって満月

破損した羽根数枚に罅があり原発はなお稼動するという
水蛸が卵を守る 岩の間に卵を抱いて仮眠している
もぎ取って来たのは鬼の片腕に似ているようでもある現実
銀の鈴鳴らして来ればしゃんしゃんと子馬、親馬、祭りの神馬
夢に来た子がブランコを漕ぐという月光公園、風のブランコ

炎(ひ)のように水が奔って野を分けて 千年昏く沈む大河か
ひとかけらの希望すらないこののちの真っ暗闇と知って点る炎
想像力には意味がなく言葉にも意味はなく 空っぽらしく
それに語り継ぐ何ものも持っていない 何も無い世代だったし
経験しなければ解らないのならそうすればいい語っても無駄なら

この国の誰かに絶望するのではなく『神々の微笑』に書かれた日本の泥土
適切に判断しますという人の脳葉に棲む薄羽蜻蛉
絶望は小泉さんのその後に安倍さんが来る繰り返されるだろう愚かしさ
一台の柩のような車が来て 一人の男現れて去る
超A級戦犯もいたはずなのに 氷雨降る雨、黙する森よ

そしてまた全ては過去へ流れゆき南の空に十字星光る
誰もいない何にもない辿り着くその空間を死と呼んでみる
ひとかけらの希望すらないこののちの真っ暗闇と知って点る炎
和邇族の裔たる人の瀟洒な墓 簡素、清明、古拙な字体
眠れますように 眠れるといいね 満月が浮かぶこの夜

意味もなく不安を抱いて眠れない 泡立つように咲く百日紅
静かなる黎明として見しものを薄暮の空と知る人も出で
生きている悲しみもあれ 白球の行方の空の虹消えた空の
逃げろと言う『若者殺し』の著者が言う 殺されず殺さぬために引き籠るのか 
産卵を終わったモリアオガエルらしい紫陽花の根方の池で一休み
祥  * 『倉庫・混:白鳥座』 * 15:52 * comments(0) * trackbacks(0)

白鳥座 2787首版 3−1

1 ゆっくりと頂上めざす甲虫 光は木々の頂上にある
2 雨、雨、雨、森に大地に木の枝に、天道虫ののぼる葉末に
3 太陽が海を離れた 金色の海に浮かんだ帆影、舟影
4 金色の海の向こうにお日さまが昇るよ 夢はどこにでもある
5 そしてまた全ては過去へ流れゆき南の空に十字星光る
6 誰もいない何にもない辿り着くその空間を死と呼んでみる
7 ひとかけらの希望すらないこののちの真っ暗闇と知って点る炎
8 和邇族の裔たる人の瀟洒な墓 簡素、清明、古拙な字体
9 眠れますように 眠れるといいね 満月が浮かぶこの夜
10 意味もなく不安を抱いて眠れない 泡立つように咲く百日紅
11 他者の死が意識の底を離れずに魂を病む一夏がある
12 七夕の願いは届き一年を 夕顔白く映る中空
13 破損した羽根数枚に罅があり原発はなお稼動するという
14 静かなる黎明として見しものを薄暮の空と知る人も出で
15 生きている悲しみもあれ 白球の行方の空の虹消えた空の
16 逃げろと言う『若者殺し』の著者が言う 殺されず殺さぬために引き籠るのか 
17 銀の鈴鳴らして来ればしゃんしゃんと子馬、親馬、祭りの神馬
18 炎のように水が奔って野を分けて 千年昏く沈む大河か
19 産卵を終わったモリアオガエルらしい紫陽花の根方の池で一休み
20 残された時間を生きるほかはなく花を眺めて歌を歌って
21 覚悟を決めよう 泥でも塵でも芥でも 命あるだけ命を生きる
22 六月十八日 今日は辛い日になった 石榴が割れるようにざっくり
23 煉獄のこの世を出でて蓮の花迎えるお釈迦様の世界へ
24 南無地獄 南無南無地獄 殺生の噂絶えざるこの世の地獄
25 四万斗の雨降りそそぐ梅雨の空 ゆきて帰らぬ鳥のいる空
26 梔子の雨に打たれて変わりゆく蜜蜂色に変わるその色
27 梔子と百合が開いた雨あがり 昨日の雨が茎をのぼって
28 そしてまた田村高広さんの声がする干潟の二重ドキュメントのナレーション
29 生きてゆく世界はいつも苦しくて 空ゆく鳥の喘ぐ 声無く
30 『一塊の土』思い出す芥川の 淡々としたモノクロームの
31 戦争に往かせないため目を刺した清作の妻のその物語
32 モノクロの映画でよかった鮮血の飛び散る様を見ないでよかった
33 この二人合うのだろうか「模範兵」清作と反抗的人間、情念の妻
34 あらくさのしとねに逢瀬重ねゆく 清作とその妻になるひと
35 『清作の妻』を観ている 亡くなった田村高広も出ていて若尾文子と
36 急速に興味なくしてゆくように言葉が消えてゆく夏の闇
37 銅に見る塩素の反応 黄の煙たちこめる試験管
38 「折り返し鍛錬」という鍛え方「繰り返し鍛錬」まで昇格する刀鍛冶
39 明日もまた暑さの中で働いて それが思えば格差であるか
40 スキャナーには頭蓋の形撮られていてシンメトリーの影絵のように
41 保護膜のように時間が必要で空間もまた必要ではある
42 いつだって変わらない時がめぐって深夜のルーシー・ショー
43 しとしととなお降る雨を喜んで蝸牛這う葉裏ありけり
44 六月の雨は静かに降るものを コサックダンスするような雨
45 ムツゴロウ泥の中にて立ち上がるそれが求愛の姿だという
46 たましいのさいはてに咲く花に似て火縄銃にも人の手が要る
47 春の夜の夢は幻過ぎゆけば シルヴェスター・リーヴァイ楽曲の誘惑
48 私の場合はここに抜け道があると思っていた真暗闇
49 蝋燭は今華やかに炎えていて 絵本の中の白鳥は死ぬ
50 今日一つだけいいことがありました 綺麗な声で鳴く夏の鳥
51 再放送を見ておりました なでしこや芍薬の咲くターシャさんの庭を
52 腹を摺るコギー犬ではあるけれど日陰を選ぶ花の木の下
53 この年になれば許されるというターシャさん 貴女ならいつでも赦されている
54 どんな日か忘れてしまうどんな日か 北北西に雲が流れる
55 その庭の紫色の勿忘草 ここにいるよと咲いてきたよと
56 もうここに何があるかもわからないそんな時にも水仙香る
57 九十歳のターシャさんは痩せてコギー犬のメギーは太って花の咲く庭
58 ターシャは言う 「春は奇蹟ね」花が咲き鳥が鳴きだす命生まれて
59 春は来る いつでもそれは突然に 緑がそよぐ 風が生まれて
60 ターシャにはターシャの時間流れゆき 黄金の明りのきらめく絵本
61 待つことに喜びがある 小机にスケッチブック開くその人
62 窓際のゼラニウムにも陽は射してターシャの庭の温室がある
63 雪の庭 ターシャの庭に花はなく暖炉に燃える薪はぜる音
64 金魚絵や菖蒲の団扇配られて 紫陽花もまだ咲き誇る頃
65 薔薇の木も瓦礫に埋まるとナレーション ヒルデスハイムの薔薇の閲歴
66 重力をもって飛ぶから凧 びゅんびゅんと今風を切る音
67 暴力は連鎖するという そんなとき攻撃的な競技始まる
68 この国は集団発狂していると ゴミを漁ってつついてカラス
69 毎日のように事件は起こるらし 親子が殺しあって梅雨空
70 小授鶏がチョットコイチョットコイって鳴いている雨が上がった上水の道
71 月光はなお燦々とふりそそぎ いざなってゆく夜の恒河沙
72 満天の星空、銀の河の水 天の柄杓を傾けて汲む
73 流星も蛍も虹もやませみもその山奥の村で見る夏
74 この夜の果てを旅してゆくような綺麗な軌跡描いて消えて
75 お隣に板坂さんがおりましていささか先生と言いそうになる
76 雨の日の雨のモビール透明の青のモビール雨の雫の
77 チョットコイ、チョットコイって小授鶏が 水色の尾の尾長が雨に
78 かたつむり、蛙、紫陽花、シャガの花 雨が好きなら私の仲間
79 熱っぽい今日は一日降る雨のこの密やかさ愛していたり
80 『さよならをもう一度』をもう一度 イブ・モンタンやイングリッド・バーグマンを
81 臆測が飛び交う風土 百年も経ってもきっと変わらぬ風土
82 多分あの勝気な人はそのこともすでに気に入らないのであろう
83 この頃はエレベーターもシャッターも殺人あるいは殺人未遂を
84 鉄焼ける匂いがしたよ 火事の夢 殺人事件の報道ばかり
85 第一の犯罪隠すためにある第二の場合の理由の詳述
86 中国の映画であって山奥の村をつないでいる道がある
87 三連の水車が回る川岸に木切れ集めて焚き火する人
88 このようにして六月の蟹遊ぶ 死者と生者を分かつ水際に
89 カクレミノ、隠れ隠れて枯れるまで その葉の蔭に瑠璃色の蝶
90 シュノーケル青蛙という全身が黄色い蛙や梟の話題
91 寒気団、心に入りくる六月の鬱々として楽しまぬ日の
92 説明の代りに流れる音楽があればいいのに何もないのだ
93 左手を息子の肩に置き歩く 木村栄文氏のドキュメント
94 藁屋根に灯ともる遠景に楡の枯れ枝、早春の雪
95 愛媛県の小さな町の座敷雛 初節句の子の雛を町中で
96 初生りの苺一粒ようやくに 延命地蔵の前垂れの赤
97 レンゲツツジ、ドウダンツツジ、山ツツジ 蜜蜂、蜜をあつめるツツジ
98 花がらを摘めば花がら山となり水盤になお数日生きる
99 塩山に大菩薩あり高原も三窪高原近くの躑躅
100 人工の花で覆った祭壇に虚ろなものの満ちる夕暮れ
101 やっぱりとみんなが思うその人が事情聴取を受けるその朝
102 復讐を遂げたる者のありやなし第七の封印解かれる朝
103 トリュフォーの「隣の女」グルノーブル郊外に住むひとりの女
104 木曽路には奈良井宿あり清水湧く中仙道の馬つなぐ石
105 その町は郡上八幡、湧き水の水の音聴く水の音楽
106 白鳥の雛が生まれる水無月の湖の岸、岸辺の家族
107 燭光が見えるようなら十字星 離れて光るあの遠い星
108 そろそろかまだか諸株は崩落し明日の行方はまだ霧の中
109 無理矢理の分離が起こり血が流れ分離不能なもののゆくさき
110 世界には破壊願望あるらしく世界とは神であるかもしれず
111 世界同時株安再び 再建の途上にあって危うき足元
112 天上に吊り上げられてゆく船があり再び落下する船があり
113 失速をしている日本経済のこの先にまだ何があるのか
114 希臘には希臘の青があるようにヒマラヤの空映す青い芥子
115 気まぐれで生きているとは思わない 夏咲く花は夏に逝くばかり
116 西空に夕日が沈むその後は小曾根真のボレロで終わる
117 いま雪が降ってほしいな見てみたいな 冷たい雪の切片などを
118 今月ももうお終いということにまたもどこかで傷ついている
119 眠くって眠くて半分死んでいる 十五時を打つユンハンスの時計
120 雲仙の峠道には桃色のミヤマキリシマ咲いて朧に
121 六甲は滴る緑、初夏の海の光りの中に兆す死
122 あのひとも今さまよっている死線 海の光りを見る白い部屋
123 切ないねみんな誰かに育てられみんな誰かに見守られて逝く
124 沖合いに浮かんだ大きな貨物船 係留されてだるま船もゆく
125 はしけが曳く本船であるだるま船 万世橋のたもとに舫う
126 夢みれば夢のまにまに立つ影の小さくゆれて傾いだ影の
127 切なさを今見ています牡蠣舟と水辺の葦と降る雨の川
128 折からの雨に濡れていた泥の道 右と左に分かれていった
129 希望もなく目標もなく生きてきた 何かが私を助けてくれた
130 第四章「きのうの雨」が好きだった 菜月さんの歌集『空は卑怯だ』
131 大切な時間が過ぎているはずの今をどうしていいかわからない
132 「吾輩は文豪であって悪霊ではない。」と、主婦みどりなる漱石居士は
133 欲しいです雷蔵映画のDVD 「炎上」「ぼんち」「ある殺し屋」など
134 狂四郎シリーズなど観たいもの 円月殺法、月光の青
135 メイショウサムスン勝ってダービーも終わりいよいよ六月、水無月に向かう
136 木はのぼり木は広がって密生す ジャスミンの木の香る三叉路
137 降るような降らないようなとある日に 三叉路の家のジャスミン香る
138 雨上がる 烏がそれを告げている 等間隔に啼いて晴れると
139 パリの空の下セーヌは流れ♪フイッツジェラルド夫妻の背景に流れ
140 500円のDVDで見ています『グランド・ホテル』『雨の朝パリに死す』
141 太陽を孕んで産んで殺したと神話の女なげく雨降り
142 雨降って雨降って雨降って 降って私の心も濡れる
143 「恐ろしいのはお前の心」鶴屋南北の見た人の闇
144 その手紙見せよと迫る鬼女がいて 脚曳き歩く歌舞伎の女
145 さて歌も書かずはなりて候ほどに『一体二つの命ならずや』
146 退屈とたたかうために人生があるわけじゃなく木漏れ日の土曜日
147 少年の童心もちて夕茜 空と水とのあわいに染まる  
148 もう遠い昔のことだ過ぎ去った水の流れと時間の記憶
149 遠浅の海へ流れる川がある 昔遊んだ海と砂浜
150 その町の白い教会、異人館 蔦が覆っていた空き屋敷
151 教会にあった小さな尖塔が夕日を浴びて輝いていた
152 山があり川と林と海があり 酒造会社に湧き水があり
153 遠くからでも見えた赤い屋根 鳥が運んだ実が育つ家
154 その町の砂を含んだ感触は松林まで続く感触
155 その日から現在までを俯瞰する望楼などはどこにもなくて
156 暖炉には火が燃えていて冬だった あなたが生まれたその年の冬
157 また無理をしている せっかくの気分をそして台無しにする
158 風吹けば風の歌書き雨降れば雨の歌書く今宵雨の歌
159 今年もまた同じ日の朝咲いている梅花うつぎの白い花房
160 復讐の雨降ることもあるような 川の流れの濃く深き淵
161 命無き乾いた花の異様さとさびしさがあり五月闇あり
162 警察に復讐するということもあるのだろうか事件の背景
163 復讐的犯行として犯人と特定されるその家のX
164 人間という名の修羅の鬼子母神 <子盗ろ子盗ろあの子が欲しい>
165 特別に哀しい結果生むような花の明かりもない五月闇
166 たゆたって生きて虚しい日暮れどき逢魔が刻に華やぐものが
167 体調の不調なんかも言い訳に 午前が終わり午後過ぎてゆく
168 物事の処理能力に欠けている 読むべき本も積んで久しく
169 夏に病む母であったと今思う 夏の別れは短かかったと
170 水濁り水は流れる浮橋を叩いて夏の川は流れる
171 その知らせはいつか来るはず その日を恐れその日を思う
172 蓮池から今垂れている一本の糸に縋って救われたくて
173 カンダタの蜘蛛の糸です銀色のか細い糸が垂れて蓮池
174 人間の中にも深い洞窟や砂漠があって翡翠の泉
175 「欲望」のヴィヴィアン・リーもM・ブランドも銀河の彼方だれもいなくて
176 桜の湯、桃の湯、そして茉莉花の湯 日暮れになれば淋しきものを
177 人間てさびしい存在なんですねいつか必ず死ぬ私たち
178 巧妙に隠されている思いでも伝えてしまう波動粒子が
179 フラミンゴと言えばブランチの『欲望という名の電車』のホテル・フラミンゴ
180 フラミンゴ色にやさしい花びらの数葉を巻き起きあがる朝
181 燭台に赤い蝋燭立つように紅花橡の木、落葉高木
182 画面では霧の中厳かにレクイエム流れラクリモサ流れ
183 ヒトツバタゴ、なんじゃもんじゃの木の花の白く地上を染めて夏の日
184 失敗に人は懲りないものであり懲りたところで失敗はする
185 傍らを通りすぎてゆく人生に その大袈裟な帷子を脱げ
186 懐かしい思いは常に一定の容量を持ちあなたへ向かう
187 午後からは病院にゆく 曇るもよしいっそ止まない雨もまたよし
188 浅草を歩いた荷風山人の日々の天気と日々の足跡
189 先行きは吹雪であるかもしれぬゆえ 非情な時代の美しき危うさ
190 東証の株価指数も崩落し冷気漂う 夏になるのに
191 無患子(むくろじ)の実で羽子板の羽根を作る 今朝のTV の荻窪散歩
192 夜だから霧が湧くから雨だから理由は何でも風の扉開く
193 風が奔り月の仔馬が走り出す 翼を持てばペガサスとなる
194 幸福は第一楽章ではなくて第三楽章あたりに芽生える
195 私の今一番の友だちは小曽根真のピアノ きっとね
196 音楽と時間と怠惰 それだけですでに半分癒されている
197 私には一人の時間があるけれどもし無かったら・・・恐怖ではある
198 私に色があったら色を描き音があったら音を書くのに
199 歌などというもおこがましい徒然の日記に過ぎない気の葉言の葉
200 半分は私の心も病んでいて そのため書いている歌かもしれない
201 恋に狂い花に狂っているような 二人椀久、保名のような
202 木陰から木陰へ移動してゆけば蜜蜂が来て薔薇に触って
203 えごの木はちしゃのき、野茉莉、Japanese snow bellとも呼ばれサポニンを含み有毒という
204 誘拐を怖れることもないらしき 唯懼れつつ見ているばかり
205 第二楽章弦の音から始まってピアノへ 祈りのように移りゆく過程
206 『題名のない音楽会』で聴いたのはフジコさんの弾く繊細な《皇帝》
207 とても長い歳月が流れ 音を視る力を失ってゆく歳月が流れ
208 えごの花また咲く季節 木の枝に地に水面に二度三度咲く
209 雨ののち黄色く咲いて棕櫚の花 むっくり起き出した亜熱帯
210 雨の日の川の岸辺にエゴの花 稚魚も成魚も消えた水辺に
211 雨の中うすむらさきのシャガの花 白山藤の樹の下に咲く
212 疎水には風も流れて飛び石の庭につづいてゆく小径あり
213 錦鯉たくさんいたが今はいない雪解け水が流れていた町
214 生成の秘密、偏見あると知る 幾千年の時が流れる
215 雑草の伸び放題の逞しく 地を這うものは滅びを知らず
216 清浄無垢 私たちにはそれがない 絵巻の中に雪月花あり
217 この花は知ってるだろうか私たち人間がどんなに沢山人を殺したか
218 何をするでもなくて日が暮れて ぼんやり浮かぶ白い満月
219 雨雲の動きをヤフーで確かめる 伊豆上空を通過している
220 遅生まれ低気圧ゆえ迷走し力弱くして洋上に去る
221 五月闇 雲が覆って月もなく花の明りを見ることもなく
222 五月半ば薄曇る空暮れかかり 花の明りも木の下に消え
223 牛、豚、鶏、鳥獣の命を喰べて地球を荒らして
224 例えばヒロシマ・ナガサキ、例えばアウシュヴィッツ、数限りなく
225 どれほどの人を殺してきたのだろう21世紀までに人類
226 橡の木の花は似ているルピナスに 樹の中に灯る白い蝋燭
227 悲しいくらい明るい陽が落ちて海はまもまく金色となる
228 アレクセイと命名された犬でさえ 狩の時間も眠ってしまう
229 それぞれの時間の中で生きてゆく 午睡の時間過ぎて翳る陽
230 モスクワとぺテルブルクを行き来する 孔雀時計は兄を示す
231 この世にはとても幸福な人がいて祝福された人たちがいて
232 いつまでか此処に彼処に飛び散らう魂の幾つか 青蛍となむ
233 時折は紙片のような蝶が来て 遥かな時を伝えてくれる
234 骨董の値打ちはひとつ今を生き今を感じる器であること
235 空木咲く季節にいつかなっていた 花明かりする上水の道
236 霧雨が上がれば夏の上水か 夏の扉が開く雨の朝
237 双頭の鷲の国から流れ出て薔薇の刻印背にさまよって
238 雪の降るぺテルブルクの片隅で1907年と刻印されて
239 クレムリン宮殿のあの葱坊主 騎馬連隊の青い制服
240 死の方はできれば御免蒙りたく されど我儘通り申さず
241 私は多分望んでいるのでしょう 夢の中なる一生午睡
242 選べば選べるかもしれない 「生涯連休」望まれますか
243 まだ蕾、蕾ばかりの紫陽花と 蝸牛這う櫟の若葉
244 六月はまだ紫陽花の片陰に眠り 漠然と不安のみ白く
245 新しい地平が現れても黄昏はここに 紫に空を染めて
246 退屈な午後ひとときの軽やかさ小曽根真の<ジュノム>カデンツァ
247 何か一つ突き抜けてゆくその時に手応えがある硬質の触感
248 『日曜日の朝』という絵の六匹の猫と出会った秋の日の画廊
249 踏み潰す相手がだんだんなくなって巨象の大足置き場所に困る
250 次期総理に安倍氏がなれば明らかに危険が増すと思うしかなく
251 ちゅんちゅんと雀が鳴いて薔薇咲いて良い雨が降る五月の朝
252 そのように過ぎてゆく日のありやなし 武蔵野の果ての逃げ水
253 あれは夢?そう夢だった何もかも全ては夢の出来事だった
254 福音書の一節に言う忘れがたく <怒りのために罪を犯すな>
255 重なって重なってゆく音韻のさやかに平安京の名残りの
256 琴弾浜その白砂の白よりも白き馬立つ八朔の馬
257 海辺には海辺の町の風習が 端午の節句と馬の節句と
258 馬節句、白馬の節句 八朔の団子の飾り馬の懐かし
259 帯止めになった私のお祖母さん 箪笥の一番右の抽斗
260 白珊瑚 珊瑚の海の薔薇の精 小さなピアスになってしまった
261 海蛍、いいえ私は蛍烏賊 青く光って漂う生体
262 ウニ、ヒトデ棘皮動物荒金の針千本に似ぬ柔らかさ
263 烏が鳴きまた現実が戻ってくる カクレクマノミ隠れ家は無し
264 足跡のほかには何も残さない その足跡も波が消し去る
265 そこもまた一つの故郷 黒アゲハ樹間に消える大菩薩の道
266 白樺とツツジと高く飛ぶ雲と 甲州市とは塩山、勝沼
267 行き暮れて見上げる空の太陽の白く翳りて墜ちる幻
268 春紫苑咲いて陽あたる道端に信号待ちをしている犬よ
269 なんとなく疲れきったという顔の老犬がいて黄金週間
270 鈴蘭の白、空白の時間あり 「鈴蘭の日」という五月一日
271 夏草の茂る廃屋 太陽が今薔薇色に染めてゆく海
272 雪が降り不協和音が奏でられ舞台にはまた時間が巡る
273 何かしら嘘の気配が濃厚で 夏の雲湧く螺旋階段
274 つくづくと薄情者で非人間 それが私と雨を見ている
275 はつなつのひかり放って今日の川 小鷺も鴨も消えた用水
276 具体性なき歌を書く私の具体性なき日常である
277 夢があり夢の色した街があり薔薇色の海を見ていた昨日があった
278 いかがわしい明日であればみんな纏めて引っ括られる覚悟はよいか
279 出獄の許可あり出獄する人あり 「共謀罪」論議なくして成立の運び
280 白樫の間に黄薔薇、蜆蝶 こわれた船の部品の木椅子
281 残されて一人の川を越えゆけば都大路の桜かがやく
282 母の手が取ったであろう黒電話 二十年前その部屋にいて
283 常夜灯一つ残して幕は下り舞台の上の光りも消える
284 金色の鳥籠に似た天蓋の線と鎖と光りの渦と
285 半眼の河馬の一日 終日を水に浸かって何を想って
286 手紙を書く 手紙嫌いの私が 今タンポポの綿毛が飛んだ
287 愕然としている 何もかもなんと迂闊に過ぎたことだろう
288 『炎を孕む』蔵本さんの歌集が来た 白い孔雀が炎となって
289 花終わる季節であれば花疲れ 四月最後の木曜の午後
290 蟹味噌と洗濯物もお土産に新入社員研修終わる
291 歌いたくなくなったのなら歌をやめればいい牛蛙来て牛蛙啼く
292 ヤマボウシ、ミズキいずれか上水に 胡蝶のように 落下流水
293 遅れ咲く紫木蓮にも陽があたり 遠い記憶の中の歌声
294 誰かが語り始めると夜が明けるという 聞き逃しているかもしれない私  
295 まだ少し眠り足りない猫柳 橡の若葉が生まれる朝
296 寒暖の二つの季節摩擦する 空がこんなに悲鳴を上げる
297 落ち込んでいます地蜂の溺死体 水溜りには今日も青空
298 中村屋! まだ暮れ残る春の空 舞台には猶舞う紙吹雪
299 明らかにここ過ぎてゆく落ちてゆく卯月の雁を眺めておりぬ
300 ヤコブ病、認知症との境界の曖昧にして不明の構図
301 人間を殺してしまうためにある 全世界的儲けの機構
302 古山の楮、三椏、漆の木 千年和紙の里に星降る
303 まだ何も変わっていない地球にはシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星近づく
304 権力が仕掛けた罠と生贄と 堀江貴文まだ塀の中
305 移動性高気圧が呼ぶ花や鳥 人の動きも忙しくなる
306 水色の空に光りの泉あり 空の楽譜を奏でていたり
307 透明な天使クリオネ別の名をハダカカメガイ肉食の貝
308 残された時間もなくて成し遂げたい夢もないから日常である
309 生きてゆく手立て一つも持たないで この世に生を受けて飛び立つ
310 純粋といえば純粋プリシラは 極楽鳥のように純粋
311 一日の終わりは早い 散り急ぐ花であったと時間を思う
312 何事もなくて幸福 それぞれの虚しささえも幸福の徴
313 火山性微動、空には地震雲 そのようなことになりませんように
314 じわじわと感染してゆく牛がいて ホモ・サピエンス春の朦朧
315 本日は休日なりの看板を掲げて花のかたえに休む
316 何一つ変わっていないつまらなさ敵と味方を取り違えても
317 天空に大いなる虹または塩 葉っぱに乗った水滴の虹
318 天上の銀の塩降る砂時計 蛞蝓を消すゲームだという
319 曇り日の空の下には上水の花を集めてゆく花筏
320 この辛夷今年は花を咲かせない 去年伐られた兄妹の樹よ
321 橡の木の目覚めはとても明瞭な目覚めであるから天を突く芯
322 動物は多分死にたいと言わない そのせいだろう綺麗な瞳
323 どこまでも遠くゆらいでゆく火影 失ってゆく時間の記憶
324 密林の奥に潜んでいた虎が火に追われている カンボジアの赤い土 もちろんこれは映画の話
325 孤児になった迷子の虎がいて まだ乳をのむベンガル虎で
326 今危機を脱出したというように逃がしてやりたい森の奥へと
327 幸福の記憶鮮やかに甦る 青空の下咲く花水木
328 眠り病かもしれないと思います 身体の中に眠る春です
329 生きていることも生きていないことももしかしたら同じ月の裏表
330 忘れたいことや忘れるべきことに足をとられて躓いている
331 前世を占う人の多くして末世があらば末世であろう
332 花びらが吹き寄せられる汽水域 海と川とが相会うところ
333 胸騒ぎする夜があり朝がある 禽獣を抱く森に風立つ
334 ジャングルに残っているのはナマケモノ 水没ジャングル泳いで渡る
335 立ったまま眠る大木 森の木々 水没ジャングルアロワナの森
336 好きなのは水没ジャングル いえ水が何より好きなだけかもしれない
337 大陸がそこにあるからこの空に黄砂が舞って春の日本
338 現実と少し違って繊細な虚数微妙に配合されて
339 木々の間に光を追ってゆくように 声追うばかり鶯はどこ 
340 深夜にポール・マッカートニーLiveを視る ブラームス2番に続く放送
341 華麗なる春がゆくとき一斉に芽吹きはじめる夏の草木
342 繊毛は何を探してそよぐのかミカドウミウシ裸鰓目
343 寄りかかるところ失くしてヤドカリのヤドカリとして終える一生
344 学校の兎は死んだらしいという 兎のいない校庭の小屋
345 いつのまにか飼われていたよ その兎 誰にも望まれないのにいつか
346 落ち着かず眠れない日がありまして不安のようなものがよぎって
347 木の枝に木の枝が触れて告げるでしょう 季節が変わる四月の朝
348 十重二十重取り囲まれて藪の中 現実というしがらみの中
349 実存を鷲づかみする方法を知っているって言ってましたが
350 爛漫の春の光の青空に 紙飛行機の一つが消える
351 誰も最後は知らなくてただひとときの夢の波照間
352 花散らす雨が降るから湖に小舟もなくて春のみずうみ
353 いつまでの桜吹雪か生きて逢うこれが最後と四月の吹雪
354 金色の浄土とも見る大乗寺、開け放つ時、応挙の伽藍
355 春の日が窓越しに射す館内の小さな白い動物の骨
356 雨の日に晴れの日に咲く花があり 花をゆらしてすぎる風あり
357 昨年の秋、叔母が死にわが家の私までの血脈終る
358 長く長く生きてみるのもよいものと百歳の翁笑みつつ語る
359 しかしまた泥の中にも咲く蓮があると春の日その曙に
360 格差あり格差の下のその下の下に溜ってヘドロとなって
361 世の中は弱肉強食 食されて砕けて消えた命だろうか
362 埃及の王墓の壁のレリーフに猫の手らしき肉球の跡
363 あの世から見ているような写真があり生前、死後を渡る精霊
364 生きるともいえない生活ともいえない鵺のようなる生の実体
365 わが内の鳥獣戯画を完成し涅槃の釈迦のそばにやすらう
366 死んでいた あなたの大事なあの人は 墓地には小雨が 映画の話
367 一週間前まで元気だった人 敬礼をして去るように逝く(追悼・久世光彦)
368 どくどくと血潮見せれば怯えよう 桜咲く日も散る日も淡く
369 (桜の樹の下には死体が埋まっているというが)
370 だらだらと過ごしていれば日は移り花咲き散って日も暮れかかる
371 白色の鶏走る庭にして 生々流転、死の側に入る
372 そういえば他には思いようもなく束の間の生、束の間楽しむ
373 リアリスト牛くんの教え現実を受容すること幸福の掟
374 ビッグママ、羊が連れられて行ったのは七面鳥が炙られる朝
375 一言を聞き逃したらその後は百万年後の夜になるはず
376 賢明な人なら解る偽善でも愚かな私たちには嬉しい
377 虹色の毛糸玉であるそのわけは鼠の合唱隊のご所望
378 転がった毛糸玉にも行き先があって運命みたいに
379 演説が上手なアヒル 「助けてほしいんだよブタくん」
380 犯罪を企む家鴨の共犯者 お馴染みのベイブの出番
381 何という悲しい朝が来ているの 遠い水面に落ちてゆく雨
382 だんまりのような春来て薄闇を動く人影、散るさくら花
383 小忌衣(おみごろも)得体知れない衣装なれど義経が着れば貴人の衣
384 地震来てゆれているのを感じながら遠野の雪の画面見ている
385 花に嵐 さすがに風も吹いてきて夜には雨も降り出すという
386 鹿の絵の郵便切手10円の切手の中の草炎える春
387 「ふるさと切手・近畿の花」  枝垂桜の白き憂鬱
388 九州で地震があった。震度5弱 春の列島ゆらぎはじめる
389 あの頃は見知らぬ町の見知らぬ川 その川の今ほとりに住んで
390 南天荘書店ってあの頃ありました 震災後の駅をまだ知りません
391 六甲の八幡神社のその社殿囲む緑の中の鳩たち
392 架橋駅、阪急六甲 急行とバスの背中が・・・ 遠くに海も
393 死に上手 白木蓮の咲く頃のとある日暮れの落花のように
394 桜咲く 春の心は朧にて衆院懲罰委員会の質疑は続く
395 感情を剥き出しにして磨かれてその牙高値で売られておりぬ
396 コヨーテは橋を通ってやってきた 風は深夜に駆け抜けていた
397 柳田さん吉増さん本当の学者や本当の詩人 瞳を見ればそこにあるもの
398 言葉にも日溜りがある 日溜りに土筆んぼうが顔を出している
399 まんさくの花が咲いたよ花言葉は「呪文・霊感」春の先駆け
400 原爆と等価交換されていた天皇制の存続が今
401 生死には関わりもなき病にて無病にあらぬ 人の世疲れ
402 危うくて危うくなくて時は春 やさしい風となる沈丁花
403 何事もないように来る春があり 蕗の薹出る陽だまりがあり
404 紫の花大根や菜の花の咲く春が来て春がまた来て
405 当然のように季節はめぐるのに 桜大樹は伐り倒されて
406 wbn Ra m pt太陽神ラーが昇って天空へ ヒエログラフの鮮やかな鳥 
407 双頭の鷲が統べていた帝国の地方貴族のオブローモフは
408 羽の無い白鳥に似て野鴨にも劣る存在 オブローモフよ
409 寝台に埋もれたままの一生が穏やかに過ぎ 逝きて春の日
410 白漆喰、千本格子、虫篭窓 光があれば影も生まれる
411 憂鬱になるきっかけはどこにでも ふっと嫌いな名前を見たり
412 野火止の土手に桜が咲いていて鶯の初鳴きも聴く三月半ば
413 母の樹の樹皮から生まれ育つ苗 千年の時湛えブナの樹
414 古書店に「氷の宮殿」の原稿が流れていると村上春樹
415 どうしようもなく気分が悪いこんな日はどうすればいい 低気圧のせい?
416 新田次郎、藤原てい氏のご子息と伺いましたが不思議な言辞
417 精神のヤコブ病かもしれないね藤原正彦氏の説く日本の伝統
418 いいですとまた断っている声が聞こえて今日の春日は暮れぬ
419 押し倒し蹴倒し前へ前へ進む集団があり身を引く自転車
420 或いはそのひしゃげたブーツの中にでも 小人を隠した森の中にも
421 しかしその世界がどこにあるかしら向日葵畑の向日葵の種
422 本当は世界を一つ創造し世界を一つ葬ることだ
423 墓地近き蜜柑畑やオリーブの畑にも降る春日照り雨
424 耕して天に至るという村の蜜柑畑にも雨降りやまず
425 雨降っていますね雨が花びらがどこかでひらきはじめていますね
426 花びらを散らして春の疾風吹き九道の辻を巻くつむじ風
427 花びらは去年の花を漬けたもの塩漬け桜の花びらである
428 縞々のPさんちの猫がいて桜の花を食べたいという
429 おそらくは世界は背中で裂けている 一筋の血が流れ始める
430 フィジー諸島、イロイロ大統領を選ぶ3月8日ネットニュースに
431 憂鬱がそこまで来ていて立ち止まり窺っている黄昏の垣根
432 疲れ疲れ疲れ疲れて足跡も残さず去って夢の負い紐
433 半分は崩れたままに身をさらす 西の館の分れと呼ばれ
434 樫の木の樽の中にはの葡萄酒ねむる冬の地下室
435 みなすべて普通のことと思いたい 変わらぬことも変わったことも
436 結局のところ財力なのであり高きところにハイデルベルク
437 渦巻いているのは汚れ塵芥 春の川面に泡立つ濁り
438 何がこう悲しいのかもわからないだけど悲しい時があるよね
439 それらの全てが夢であったと解ったのはずっと後 醒めてからしばらく後の
440 それがリアルであるために幾つの山川抜けて春来ぬ桃色の
441 川霧の中に白鷺立っている 三月五日、雛の日も過ぎ
442 花歌会、冬には冬の花が咲き春には春の花が咲くこと
443 白鳥の大量死する映像や「へたり牛」なる牛の映像
444 鳥類の悲惨は続く 白鳥が今朝十万羽焼却された
445 軽蔑の心が生まれてくることをとどめようなく嘴太烏
446 違和感の塊となる気がしている微分細分したる大鋸屑
447 インフレの足音だって聞こえてくるこの先の道が怖いね
448 姫神が担当していたふるさとの伝承シリーズその音源に関わる
449 真実の深い心で話せたら 消えてしまった砂の風紋
450 生きてゆく場所が違って青空の飛行機雲の線も崩れて
451 残された記憶のような一本のほつれ始めた機のより糸
452 紡いだり縄をなったりするように荒れた大地を耕して春
453 歌声は深く優しく響くとも諸行無常と鳴る鐘の声
454 哀しみについては既に語れない 檸檬の苗木育つ裏庭
455 湖に花びら流れ岸近く渦巻くものも見えて春の日
456 何事か変わった気がする二人にも長い時間がいつか流れて
457 明日また楽しい夢を見られたら 半年という試練の後に
458 それにしてもこの羊たちはどうやって演技をしたのでしょう それから豚も
459 人間が考えることは唯一つ 働かなければ食べてしまうこと
460 生きている間は豚で死んじゃえば豚肉になると 猫が教える
461 ポークとかベーコンになると教えている 性格の悪い猫だと名指された猫が
462 「おやすみママ」 ベイブはフライを母さんと思っているのか信頼している
463 狼は羊を殺した 青草は倒れた羊の血で汚された
464 敷藁に臥せっているのはママ犬のフライ 友だちの羊がまた襲われた
465 犬が追い羊が逃げる牧羊豚ベイブがお話ししている間
466 狼の一族だった犬などとはそこが違うと諭されている
467 羊には羊のやり方がありまして 素直に優しくそして丁寧に
468 ボス犬は同居している牧羊犬 黒毛のフライそしてレックス
469 ベイブ君今日は大活躍なのです羊泥棒から羊を守る
470 ベイブにはしっかり者のボス犬が見守っているから大丈夫だね
471 教育が絡めばまたも怒りだす人がいるのさ弥生の春に
472 無関心な人々がいて湖の透明な水が映す青空
473 今夜には雨が降りだす模様ゆえ白鳥はもう姿を見せず
474 天皇という矛盾あり存在に絶対矛盾があって統合を欠く
475 海近い道ゆえ砂を含む道 芦屋、魚崎 今は昔の
476 光る風 浜に吹く風 きさらぎの終りとなればボートもあらず
477 「夏頃に孫が生まれる予定なの」 放射線科に入院の報
478 生きる希望 死ぬ覚悟をも越えるから 豌豆の芽が今育つから
479 塔があり教会があり川がある 海へつづいてゆく松並木
480 エストニア生まれの果実 エストニア土産の絵皿ならここに在り
481 あの川のほとりに建っている教会 白い小さな教会の塔
482 舞台にはロシアの雪が降っていて 架空の雪といえどロシアの
483 何事にも既に動かされなくなっている 連翹の一枝に咲く花
484 面接は終りましたか新卒の求人広告すでにしてゴミ
485 どんよりと緞帳下りるそのように雪の匂いをさせて曇り日
486 空白の時が待ちうけ空虚より他には風も通らない道
487 ここよりさき何も無いっていうときに 海か山かへ分け入ってゆく
488 前へ前へ進んでゆけばいつかしら進めまない時に直面もする
489 金色のあるいは青い透明な海に向かって桟橋に立つ
490 共感はできないまでも理解ならできると言って理解の限界
491 「希望、血潮、トゥーランドット」 カラフ王子の答えた言葉
492 治郎氏が次郎氏、となる一行に春の斑の雪の足跡
493 潮満ちてくるらし春の魚のぼる汽水域あり春の河あり
494 水仙の花が咲いたら春だよと尾浦へ抜ける崖で老人
495 午後からは雨降るというその通り春らしくもない冷たい雨が
496 鳥籠にあなたは眠り鳥籠にあなたは目覚め 鳥籠の時間
497 天空を羽ばたくような双頭の鷲が統べていたロシアの大地
498 ニコライの治世の終わる頃出でて帰ることなき懐中時計
499 ヒロインのアンナの胸に吹く吹雪 『欲望という名の電車』へとつながる
500 シンプルな舞台美術の真髄を僅かな素材だけで見せている
501 松井るみ その人の描く色彩と線の繊細さと大胆さ
502 最後には光の中へ消えてゆく光りとは闇の終点
503 原作を読んでみたいと思います 家出老人レフ・トルストイ
504 冒頭に、ラストに雪が、人工の雪降りづづく『アンナ・カレーニナ』
505 精神を病む人多い春真昼 異形の鬼の立つ交叉点
506 母親が捕らえられたという続報 以前にもあったね園児の母が
507 小さな子がまた刺されたというニュース 午前九時過ぎの滋賀県の事件
508 十分な捜索をされることもなく海底に 多分そのまま海の藻屑に
509 紅海に沈んだ船のそののちの数百人の行方不明者
510 この世のこと何事も思うようにはなりませぬ バオバブの種に水遣り
511 永遠の不死を願ったエジプトの眠るミイラの華奢な左手
512 クローンで復活することさえもある三千、四千年前の死を超え
513 国民のために開いてもらいたい天皇陵という古代への扉
514 皇室はおそれ多くもかしこくも触れてならない神聖家族?
515 許されることがあるなら唯一人、徳仁天皇の時代だろうか
516 「箸墓のもとに戦う」壬申の乱があり 卑弥呼の墓とも言われる箸墓のもとに
517 レプリカの剣を祀るそれもよし三種の神器というただ徴ゆえ
518 ラムセスやクフ王の墓、発掘し天皇陵はなぜ開かれない
519 不確かな歴史の闇にさす光 御陵に眠る古代史がある
520 古代史の解明のため国民の総意のもとに御陵を開く
521 天皇陵、とりわけ仁徳・応神陵 御陵を開ける時が来ている
522 午過ぎの懈怠だろうか春ゆえのだるさだろうか理由なく頭痛して
523 春の鬱 微熱とともにくるだるさ しばらく身体を休めましょうか
524 四字熟語「天真爛漫」「支離滅裂」「臥薪嘗胆」←最後の、それが運命
525 奪われぬためには奪うこともある宮廷女官チャングムの世界
526 「大奥」と「チャングムの誓い」の共通項 厨房から世界を覗く
527 追放も毒殺もある 政変とリンクしている宮廷のたたかい
528 そしてなお続く政争、新王朝 阻止し奪取し擁立もする
529 昔読んだ『貴族の階段』 舞台裏の駆け引き、策謀、政略、陰謀
530 宮内庁、官邸、東宮、弟宮邸、皇居もまじえてドラマがあった
531 故に血をもって尊しとなす考えをそろそろ考え直しませんか
532 万世一系と言っても、薄まった一系でありさらに薄まる一系である
533 素盞雄が出雲に至り出雲を支配して 追われた神は隠れ棲むなり
534 男神月読でもなく素盞雄でもなく女神天照大神であった理由は如何に
535 宇佐、隼人、菊池一族 神やどる青き洞窟、満ちて黄昏
536 天を分け地を分け争う原因の一つとしての血の哀しみよ
537 燭台を盗んだ男に声かける神父の歌の心しむ優しさ
538 それよりも明日の危険は年金の給付見直しだったりもする
539 使用済み核燃料や肉骨粉 身辺危険材料ばかり
540 御懐妊一色となる日本のマスコミであり国民であり
541 積雪のある日のニュース その雪のように寂しく聞く人もあれ
542 東京に今年二度目の雪が降り 多摩には少し積雪もあり
543 そしてまたマスコミ狂奏曲起こり これに乗じて忘却を願う人あり
544 望まれ願われ企まれて粛々と終わった一つの完全犯罪
545 超音波診断結果の発表は その日を迎えるまでないのでしょう
546 争乱の火種は尽きぬことといえ再び起こる壬申の乱
547 輪をかけて男系、女系、姦しく内閣、世論二分してゆく
548 秋篠の宮に男子が生まれたら 皇位継承のことは如何にと
549 演奏の途中で弦が切れるより悲惨なるものではないのでしょうか
550 この雪がしんしん積もりどこまでも町を埋めて降りつぐでしょう
551 ヒルズ族は額に汗することなく、と コメンテーターと称する人が
552 「誤解を怖れずに言えば」という前置きはどういうわけか省略されて
553 「何だってお金で買える、金が全てと思うホリエモン」と要約されている
554 エジプトの人たちでなくアメリカやヨーロッパの国の人でもしあったなら
555 人間の命に軽重はないという 言葉だけならそれは言えるね
556 死者、行方不明者数百人に及ぶという BS7のみの放送
557 「アル・サラーム98号」紅海に燃えて沈んで多数の行方不明者
558 今夜には雪降るという東京の和光の時計が指す11時
559 肉球の跡点々と雪の中 ドン氏と呼ばれる猫の足跡
560 階層が固定してゆく社会から弾き出された泥球一つ
561 九月には辞めると言った総理はその時から炉心溶解始まる高炉
562 死に体はともかくレイムダックって差別用語にならないのかしら
563 粛清の嵐が吹くのでございましょう 峡谷に水凍えるように
564 遥かなるミトコンドリアDNA 春は優しく光りをつなぐ
565 終焉は薔薇の垣根の向こうにも春の朧のような空にも
566 急がなければならない時が来ています既に終りが始まっている
567 日本にとって貴方が何なのか時に考えてみたい時がある
568 純粋な培養液の中に棲む諸行無常を培う因子
569 複雑な縫合線が美しいアモンの神の鹿の角笛
570 始まりは雌雄同体 七千年前にっぽんは海の水底
571 男系の場合父方を辿ってゆけば天皇に至るという。アンモナイトよ
572 血に頼り血を尊いとしてつなぐ十六花弁の菊の紋章
573 国体に関わると言い国体の護持と言い国体とは単にただ唯一の
574 ここにまた「国体」の二文字現れて 終戦を遅らせた時に似て
575 少子化の悩み等しく覆うから断絶の危機そこにあるから
576 女系を選んだとしてそれでいったい何代続かせられる
577 男系を選んでみたとしてそれでいったい何代続くのだろう
578 何ゆえになぜ尊いかの議論なく尊いゆえに尊きとして
579 その真偽 詳しく問えば何かしら整合性を欠くこともあれ
580 万世が一系というそのことの何が尊く またはそうでなく
581 南北朝時代は知らずそののちもその前にもある空白の時
582 天皇のルーツ辿って辿り過ぎ 分岐地点でうやむやとなり
583 旧宮家の皇籍復帰をするべきと 宮家経費の膨張私案
584 血の系譜 どの血の系譜 男系の女系の 天皇とは何
585 明日の日の約束の無い偶然に頼って生きてのちの千年
586 その他にいったい何が そのことを皇祖の御霊告げているかに
587 危機感がそうさせたのかもしれなくて この後のこと次の世のこと
588 この国の安らけきこととこしえにと代る人なく祈りを捧げ
589 三殿の祭りに最も熱心な天皇であり皇后であり
590 古稀すぎてハードな日々を送られる天皇、皇后の長い歳月
591 天皇と皇后陛下のおつとめの宮中三殿参拝のこと
592 天皇といえば昭和であったころ生まれて美空ひばりも聴いて
593 天皇の即位を御大典と呼ぶ記念の百年ほど前の古冊子
594 東禅寺山門に降る春の雪 「立春大吉」降る雪の寺
595 突然に曇る空から降るみぞれ 霙のなかの連翹の花
596 春鹿が水を飲みに来る行者川 その川沿いの山葵田の春
597 樅の木の森があったね山梨のおじいさんが育てた西の平に
598 約束の時間はすでに過ぎたのに森はめざめの時を忘れて
599 水流れ林に雪が降り積もり 落葉の上に新雪積もり
600 分身の術かもしれない正体は 等圧線がぎっしり埋めて
601 ゆったりとちゃらんぽらんにたゆたって地獄極楽どちらへとなりと
602 運命に後ろ髪なしチャンスより後退するべき道の崖っぷち
603 蛸足が広がるように殖えてゆく 弛緩し飽和しもう無関心
604 怒るべき事件も事故も多すぎて矛先すでに曲がり始める
605 飽き性の日本人ゆえどのような事件も事故も忘れてしまう
606 現実のあなたがそこにいないから聞けば聞こえる脈打つ鼓動
607 青草のグラスホッパー飛んでゆけ しゅわしゅわと鳴る尾にも飛び乗り
608 幽閉の青山半蔵にも似たり 乗馬しているシシィにも似て
609 一度目は悲劇、二度目は喜劇だと言いますけれど 乖離する病い
610 身動きもならないようになるのです ほんの少しの油断のために
611 過去、伝説の二千六百数十年 百二十数代を継ぐ身となれば
612 象徴という抽象であり具体 生身の人間でもある不思議さに
613 如何ともなしがたきかな血をもってつなぎゆくこと 千年の闇
614 天皇が男系であれ女系であれ存続のこと危うからずや
615 春の日は黄の菜の花や紫の花だいこんを用意している
616 木に花が咲くとき遠い空の下 蜃気楼見る氷見の海岸
617 その寺も港も町も寂れては 今は昔の物語となむ
618 萬屋の嘉左衛門さんが造ったといわれる港の寺の猫塚
619 萬屋の船でも猫を飼っていた ロシアをおろしゃと言っていた頃
620 昔はね船には猫を飼っていた 北前船の時代日本でも
621 有名なワインを守る猫の話 酒造会社の正社員猫
622 その毛並 というよりは粗々と反り返る素材それが可愛く
623 ピーターとジェニーの旅が始まって 白猫ピーターと虎猫ジェニー
624 グラスゴー行きの船から見えるのは空に瞬く北斗七星
625 人間の船に乗ったら仕事をする 猫の仕事は鼠を捕ること
626 船倉にもぐり込んだよ猫たちは グラスゴーへ行く船に飛び乗り
627 これはねぇポール・ギャリコの原作でただ今お気に入りの人形劇
628 貧しくても気楽に気まま暮らそうよって誘われる 貧しいおじいさんは良い人?
629 ピーターは教えられている「ミルクは舌を使って飲むのよ」
630 ほんとうは人間だっていう猫が一人前の猫になるよと
631 銭湯のタイルに描かれた絵のような富士など見えて西方の空
632 雪煙上げる富士山その映像、公魚釣りも解禁という
633 富士を見る南斜面に桃、杏、ブルーベリーの花く畑
634 だんだんと溶けてゆくのがたまきわるいのちあるいは雪の運命
635 ここに来て保守本流の揺り戻し 女系天皇論も揺り戻し
636 改革の最後は何気なく天皇制解体だったらある意味凄い
637 屋台曳き歩くおばあさんの映像が一月最後の日曜日の映像
638 筑紫の君「磐井」の墓があるという 密やかにして叛乱の系譜
639 「八女」という地名は松本清張の『砂の器』でいうなら「亀嵩」
640 簡単に自殺と断定されたゆえ耳に残って鳴る非常ベル
641 本当に自殺だったかも知れないが もう少し慎重さがと誰でも
642 思惑がただあるだけで実態は何も無くて見事に空洞
643 官憲の取り締りという言葉がありルールを守れと諭されている
644 地検とは軍部に似ていて粛清の嵐も吹いて来るようですね
645 不安から不安へ針が動くとき 最大級の雪崩が襲う
646 ライブドア関係者野口英昭氏 何を知りえて命を落とす
647 すみやかに遺体は灰になったゆえ灰に尋ねよ死亡の理由
648 古典的殺人事件であるならば古畑さんに復活願う
649 この国に闇の世界があるという「刺客」と言っても現実のお話
650 事件とか疑獄と呼ばれる何らかに集約されるその国の性質
651 質問中落ちつかなげに何回も安倍氏の口に運ばれた水
652 安全な場所かもしれない塀の中 万里の長城ほどに築けば
653 烏羽玉のblack moneyに手を出せば闇に烏が啼くと言います
654 朝焼けの海は薔薇色 禍々しい噂も出でて日本の早春
655 送信は失敗しました蝶々は韃靼海峡越えられません
656 春風が通って行ったようでした 木橋を渡る蝶がいました
657 「生協の白石さん」のような優しいお答えを待っております春待つ蛙
658 草原に雪降りつもり雪上がり 野兎が今目覚めたところ
659 叡山を焼き討ち髑髏を酒盃とす 水無月二日明け方の死者
660 信長の望遠鏡に地球儀に 春の陽炎ゆれていたこと
661 「人間の屑」と誰かが呼んでいて 屑と呼ばれるまで落ちた人
662 風穴は再びめでたく塞がれて安泰である無風空間
663 このような方法がまだあると次回からは教えられる外資に
664 粉飾は確かにいけませんけれど日本国に比べればまだ
665 老人や金持ちばかりに占有を許さない方法の一つが消える
666 国債という名の不良債権も積もると聞きます罪は問われず
667 厖大な赤字を黒字に見せかけて虫喰いだらけの葉っぱも替えて
668 虚偽にして涙ぐましく時価総額上げる方法 あなたの場合は?
669 クリフォード・バクスター氏と野口氏と双方一人自殺していて
670 雪国に猶まだ雪の降り続く ポーランドでは死者150人という
671 情報はタダでも要らない時代だと要約されてタイトルを読む
672 このように一罰百戒あるゆえに 磔獄門、さらし首など
673 一人消えまた一人消えこの国の地下を流れてゆく黒い水
674 あるいはまた急ぐ理由のもう一つ誰もこれ以上死なないために
675 そのために消えた噂もありましてほっとしている政治家もいて
676 こんなにも地検特捜部が動くのは それも絶妙のタイミングにして
677 風説の流布なり偽計取引なり どのような兇悪犯罪なのでございましょうか
678 風説を流布した罪も深いという 他ならぬマスコミがそう伝えています  
679 「容疑者の声」を放送されている 推定無罪の原則はどこに
680 その身柄確保しなければ殺されるとでもいうように急ぎましたね
681 「切ないって言葉わかるかい?」天井の軋む音と降る雪
682 新潟県津南町にも雪積もり 秋田県上小阿仁村にもまた雪積もり
683 昨日見たテレビの中のおばあさん 新潟県津南町の独り住まいの
684 明日は晴れ されど寒さはいや増すと 北北西の風と落葉が
685 凍結に注意と呼びかけられている 水道道路と呼ぶ遊歩道 
686 キラキラと光る塔です六本木ヒルズに雪が降っていました
687 木の橋や鉄の小さな橋架かる 小川に雪が降って流れて
688 そういえばもうすぐ雛の祭りです 桃の節句にも雪降るかしら
689 横浜の海には雪が降っていたと 海に降る雪を初めて見たと
690 おぞましいニュースが続く今週の日本列島 雪国に春はいつ
691 雪豹もレッサーパンダも喜ぶと寒気団来る6時のニュース
692 積雪は13cm綿帽子被った垣根の山茶花の赤
693 氷点下1.1度に冷え込んで北風も吹く東京という
694 県警が自殺と断定した上に焼いてしまえばそれまでですね
695 巨悪あり極悪ありの世の中に ホリエモンとは如何なる悪か
696 一日で雪は降り止み川岸に身を寄せあった水鳥がいる
697 黄金の門は閉ざされ黄金のドームが見える丘からのエルサレム
698 日は昇り日はまた沈む 有為転変、諸行無常の一期の空を
699 花束が微かにゆれて陽がさして その陽のようなゆらめきの中
700 過ぎ去った日々は短く成し遂げたことは何もないなんてこと
701 いつか死ぬ人と私と冬日中、湖に来る白鳥の多さを
702 何ものも変わらぬまでも時に雪、時に氷雨と濡れて歩けり
703 もう過去のものと葬り去るようなこの書き方だって問題ではある
704 青空に風車が回る映像の白い風車の三本の翼
705 世の中は結局何も変わらずに絶好調の社会でしょうか
706 延々とのびてゆきます中国の万里の長城 夕日果てるまで
707 砲火台、シルクロードを見下ろしてポプラのそよぐ畑の中に
708 それならばわざわざ断ることもなく自分の道を行けばよいだけ
709 雨を呼ぶ霧であろうか 慈雨とよぶべき雨降るや降れ
710 そしてまた生まれたばかりの蝶々が吹雪のように飛び立つだろう
711 処理能力限界値をも越えゆきて売買停止に陥る東証
712 今回のドラマのクライマックスは何と言っても東証の暴落
713 乱高下しながら上げるトレンドもチャートも全て焼き払う勢い
714 いつだってその息の根を止められる 生殺与奪の権限誇示す
715 主流なす力を持つのは相変わらず私達と霞ヶ関が
716 銀杏を一つ一つ剥いて焼き食べております翡翠銀杏
717 額に汗し体を労することのない人に災い降ることもあれ
718 摩天楼知らずに育った世代ゆえ低層階に落ち着く暮らし
719 ゆくりなく落ちてゆくのも致し方なしと思えて自然に落ちる
720 愚鈍なる多くのものと俊敏な少数者がいてヒルズの栄え?
721 笑えますがまた一方で真実の側面もある要約の方法
722 親の子の子の子の孫のその子まで意欲低きは下流の徴と
723 その上に二度と復活できないと孫子の代まで烙印を捺され
724 低層というより既に最下層 奴隷に近い昨今である
725 要するに上と下とは分けられてその一方の低層にいる
726 下流とは下層と違うと言うけれど言っている意味はほぼ同じ意味
727 自分らしく生きてやがては蔑まれ落ちてゆくのは意欲なきゆえと
728 かにかくに敗者復活なきものと『下流社会』は教えていたり
729 集落が集落をなす限界を自然が奪う冬が来ている
730 地震が襲い、水害が襲い雪が襲い 雪崩が襲う村の棚田か
731 青年を待つ両親は心臓を病んで仮設の住宅にいた
732 道を作りブルドーザーを動かして一人こつこつ作っていた池
733 願わくは積もる雪にも潰れずに春待つ池と親鯉であれ
734 暖かい町の養殖池などにもう引越しているかな鯉は
735 青年が精魂こめて作っていたあの池は今どうなったのだろう
736 気になるものの一つに 山古志の鯉を養殖していた棚田  
737 木蓮の固い蕾が膨らんで紫色の光りを放つ
738 川岸の氷が溶けてさらさらと水が流れてクロッカス咲く
739 黄の色の蝶が来ていて陽だまりに小さな花が咲く雨あがり
740 錦郡槐の根方に埋める符 乾、巽は鬼門にて候
741 透明なネットに包む夜の闇 インターネットの水の痕跡
742 忘却は一部のことと思いたり その蕁麻に火を放たれて
743 ミネルバの梟鳴いて夜が来て 魑魅魍魎の支配する夜
744 透明な水晶、砂金に似た光り 野生のけもの湯治する川
745 上尾根に日本トナカイ見たという ただ一頭で見下ろしていたと
746 木小屋にも畦にも雪は降り積もり 露天の水桶、筧も凍る
747 街にいて山奥に降る雪のこと思ってみても仕方がないが
748 人は何故どうして生きる孤立する集落がある新雪が降る
749 間違いがまたもう一つ増えただけ 淵がだんだん深くなるだけ
750 みごもった真珠の虹を見つけたら貝は自身を溶かしたものと
751 暗い暗い暗い人生の虹がどこかに立つと暗渠の蜆
752 三十数か所とも言われ切り刻まれて蘭奢待香る
753 香木の蘭奢待さえ切り取られ権力の座にあるものの傍へと
754 人生の苦難を負って生まれてきたヤドカリに似た貝の文様
755 そのような思いは一度もなくて死ぬ 黄昏の中沈む日輪
756 そののちを一人生きれば用水に流れた芥かもしれぬ生
757 桜散るドラマの中ではらはらと花びらが散る若き死がある
758 問題は終わってしまってから生きるその生き方のことではあるが
759 桃畑少なくなって一葉の道の桃源境もいつまで
760 お隣の木小屋に薪はうずたかく積まれて越冬準備は万全?
761 遠く遠く視界は広く富士山に南アルプス連山に雪
762 二本木の道を登れば上萩原、大久保平、白樺の道
763 養蚕の町でもあった甲州市、甘草屋敷のある旧塩山市
764 和紙の里、市川大門 桑の葉の饅頭を作り饂飩を作り
765 夢を見る獏の人生なんてもうとうに終わってしまったんだねきっと
766 結局のところ他人の生であり夢喰う獏とは関係がない
767 山村を漁村を時代は呑みこんで何事もないかのような風雪
768 私たちの田舎の家もいつか消えただ生い茂る藪となるべし
769 山村では人は住めない 過疎の村今年度幾つ消失するか
770 私をうちのめしているものが何なのかもちろん私は知っております
771 脱力し発熱したり寝込んだり 雪も降らない東京にいて
772 「敗北の太鼓」が鳴って迎えに来る遠い未来が挿入される
773 熱の出る前兆、人それぞれに違い 何か酸っぱい心臓の痛み
774 このようにスタートしている新年は芹の芳香、すずしろの白
775 誤発注基金も創設されるという 気安く間違い気安く補填し
776 今回は大和証券SMBC 膨れ上がった出来高の陰に
777 温かい雨降るという東京の液晶画面を吹く磁気嵐
778 その海の浅瀬でそよぐ海苔、若布 しばらくぶりにお台場に雨
779 ノリヒビに網掛けられて海苔の芽は海の浅瀬で育つというが
780 私が海苔であったら海苔巻きにされるのは多分いやであろうな
781 あるいは死もまた一つの生であり 生の欠片であるやもしれず
782 白い空、白い心をもてあます 白雪冴えて涼しかるらむ
783 そう言って死んだ作家がいましたが 雪の季節の三鷹を歩く
784 無理でした 生きる力に欠けていて生まれて来たのは間違いでした
785 ぎりぎりと最終局面が迫り しんしんとなを降り積もる雪
786 楯無鎧、風林火山の旗、南蛮具足の二匹の蜻蛉
787 人は城、人は石垣とは言えど黄金費えて武田氏滅ぶ
788 国宝も分散されてそれぞれの神社にありて眠る四百年
789 「城崩し」なる異名もつ築城のプロでもあって金山奉行
790 人口に比べて常に多すぎる寺の理由か甲州金山
791 金山と温泉の湧く道筋に寺社仏閣の堂宇の数多
792 黄金を掘っていたその鉱山に沿って流れていた黄金沢
793 冬なれば桃も葡萄の木も眠り枯れ草色の高原に雪
794 眼下には桃源境が広がって葡萄の丘がそれに続いて
795 生きてゆくことの重さに似ています 積雪4メートルを記す新聞
796 春の夜の夢の浮橋とだえたり 途絶えしのちも逆しまに顕ち
797 新しい悲劇は生まれ前代のそれより速く巻き込んでゆく
798 もう既にその足音は聞こえていて時代は確実に変化していて
799 団塊の世代が去って夜が明けて2007年日本は変わる
800 抒情して春の雪さえ消えるゆえ命ながらうべきにもあらず
801 許されて楽しく軽やかだった日の昔日となる須臾の間にして
802 こののちに生きてあること衰えて貧しく老いて 雪の重みに
803 最低限、生きていかなければならない 欠片、切片、木っ端に砕け
804 青空の向こうの向こうまで一人 一番好きな時間の形
805 自衛隊、軍隊、郷土防衛隊 どんな名前にしても兵隊
806 空母があり零戦があり嬉々として見入る男の掌のプラモデル
807 雪鬼の降らせる雪の身の丈を越えたころから春までの燦
808 加賀山中、白山山中、能登金剛 寒気団来て白い氷壁
809 結局のところ「大和」が誇らしく「大和」を愛しむ人たちがいて
810 背後の人、命令下す人のこと 何処にもなくて『戦艦大和』
811 ある時は核攻撃もやむなしと ある時そこに風が生まれて
812 死者と死者、他者と他者とを交換する 殺しているのは敵だけという
813 たとえそれがどんな人たちなのであれ置き換えられる立場にはなく
814 命令を下されるため私たちは生まれて来ているわけではなくて
815 守れずに死んでゆくもの戦争は 殺し合うこと殺されること
816 再びの水漬く屍や再びの死屍累々の戦艦大和
817 末端はそうして働かされて死に 血で染められた《日の丸》残る
818 戦禍なを心にいたるこの国が 未だ醒めない夢を見ている
819 そのように男は召され女たちはそして子どもは殺されていった
820 自分よりかよわいものを守るという (そんな戦争なんてなかった)
821 自分よりかよわいものを守るという (そして戦禍は拡大してゆく)
822 自分よりかよわいものを守るという (そんな論理にすりかえられる)
823 そのことについては語らないことにするしかなくて虚無よりも虚無
824 そう言ってさらに罪のない人たちを虐殺もする 集団となり
825 玉藻よし讃岐の国の玉垣の八幡宮の鯨捕る絵馬
826 養殖に活路見い出す人もあり活魚に販路を開拓する人あり
827 天然の海を回遊する魚 稚魚のたぐいも獲りつくされて
828 それが今は海の扉が閉められて酸素不足になったかのよう
829 その海の鯛、海老、平目、蟹やシャコ 海はゆたかに耀めいていた
830 昔々瀬戸内海にも天然の鯛がたくさんいました「魚島」の季節
831 蓄養という名の漁業 養殖のマグロの餌になる天然魚
832 養殖の海老に蓄積する薬害 過密、腐乱と抗生物質
833 マングローブの森の薬草、海老や蟹 失い失われていった楽園
834 蜘蛛の巣の糸が震えて雨の中 幾何学模様の牢獄がある
835 海に雪、町に雪降る寒の入り サンパウロは気温30度という
836 最終のランナーが来て大手町ゴールに多くの戦い終わる
837 山を登り海辺を走り倒れこみバトンを渡し続けてここに
838 10秒差 この10秒が来年を決定的に分ける10秒
839 ギリギリで入りましたね日体大、東洋大学、シード権をとる
840 亜細亜大が初優勝になるかしら駒沢大の五連覇はなく
841 そのタスキ渡して倒れることだろう 難波祐樹の走る姿が
842 蛇行してセンターラインをゆれながら難波祐樹がゆれて走って
843 監督がボトルを持って給水に 強い陽射しとアクシデントと
844 給水のポイント過ぎて先頭の難波祐樹の脱水症状
845 2位争い激しく競ってあと6km 順天堂大、難波祐樹を追う
846 芦ノ湖のゴール地点に雨は降り 往路1位の今井が入る
847 雲はいま峰を下ってゆくからに往路のクライマックスも来る
848 山道も悪路も関係ないという 今井正人が5人抜き去る
849 順天堂、今井正人が抜いてゆく後6kmを残してトップに
850 次々とスーパールーキーなるものが現れ出でて入れ替わる1位
851 氷雨降るゆえに痙攣起こるらし 残り9.2kmが苦しくなるらし
852 霙降る箱根駅伝、宮ノ下の急坂登る 霧も出ていて
853 浮橋の途絶えてのちも中空にたなびく雲の思い橋一つ
854 切断をしました今後の予定なら北斗十字の柄杓に汲んで
855 新年の挨拶なども出来ませんが 波が描いた文字を見ました
856 活動を停止しているあなたです 雨、雪、霰、氷雨が続く
857 店晒しされているこの一冊の本にもあったはずの春の日
858 やがてもう死もなく生もない世界 時が洗っていった砂浜
859 姫神の曲も終わってふるさとの潮騒すでに聴こえなくなる
860 時を隔て波を隔てて語りあう 幾千の闇越えて見たもの
861 浜辺には連歌の人の庵跡 遠浅なれば波青の漣
862 弟の、その子の、養子先のなど烏帽子・直垂の絵を分かつ如
863 そのように自害した人幾人も連枝連雀、炎の蒔絵
864 城は火を放って落ちる 自害してその人の子も夢も炎に
865 一切の敵に離れて春の城 連歌に遊ぶ 滅びてあらむ
866 一滴の血のつながりのありやなし 四季花鳥図のかささぎほどの
867 その人が愛した茶碗と掛け軸と歌に連なる一筆の書と
868 「いつも口髭のあたりに春風が遊んでいるような男」と司馬遼太郎の書くその人
869 キリスト教布教を許した戦国の武将は微風を纏うその人
870 信長が開く以前に開かれて許す以前に許されていた
871 その町は活気に溢れ賑わった自由交易都市の始まり
872 修羅の人信長以前、キリスト教布教を許し茶人利休を友としていた
873 大徳寺襖絵に見る花鳥図のエネルギッシュな中世の力
874 長袴、烏帽子の射手が放つ矢と墨で書かれた隠れ字の鬼
875 百手という弓矢の神事 本年の的を射抜いた射子、徹君
876 神楽舞う男ありけり昼の舞、夜の舞、なお続く炎の舞
877 聚光院殿、歌に連なり歌を書き利休の墓に並び眠れる
878 掛け軸も襖も常に変わらずにそこにあるかのように鈍色
879 八百年続いた井戸の透明さ 神の社につながった水
880 懸けのいおと発音している智恵さんはウオではなくてイオと懸けの魚を
881 田畑を失くし山林を失くしあらゆる一切を失くし 儀式行事だけを伝える
882 灰を持ち清めているのは智恵さんで支店から来た本家のお嫁さん
883 正月が終って家屋敷清める魔除けの灰も一周
884 神棚に飾る注連縄を作るのは男の仕事とオモのおじさん
885 民俗の伝統辿るシリーズの一巻として《ふるさとの伝承》
886 白砂に波打ち寄せてふるさとはNHKの画面の中に
887 新年と言っても昨日の今日である 何も変わらぬ日常である
888 新月のおおつごもりの夜にして 静かに溢れているだろう宙の井戸
889 救われぬ一人であれば満身創痍 三日月がまた昇り始める
890 この国の悲惨極まる年の暮れ 救われぬもの救われぬまま
891 mixiもそろそろ入って半年くらいになるかしら流星のように過ぎてゆく人影
892 かと思えば《uni》という人もやって来てこちらは母校つながりらしくて
893 白黒の模様は何の貝合わせだったか思い出の中の時間割
894 《su》という人の浅蜊の写真が可愛くて見てしまうプロフィール写真
895 四分儀座流星群が現れる一月四日 戌年の初め
896 安心して溶けてゆけるよ消えられる何にもなかった頃の無心に
897 何もする必要が無いということが解り非常に安心する雪だるま
898 その声を聞いてみたくて書いてみる おそらくさらばさにあらばあれ
899 却下する この案件は無きものと 無条件降伏を受諾したその日
900 「若干の損害を蒙った模様」という 当日の新聞の中の広島
901 そんな時代など一度でもあるわけはないと闇の声
902 この国にかつて安寧あったという貪り殺しあう少し前
903 人生は運だし格差は必然と勝ち組経営陣の大笑
904 北海道、九州地区の悲惨など知らないこととあかねさす街
905 抑制をされている側 労働者側に立ってみれば 悪質な回復
906 それゆえに非常に質の良い回復 ゆるやかに今、川遡る
907 労働者コストが下がって景気は回復し金利の上昇はまだ抑えられ
908 明日死ぬ行路病者に保険なく家なく家族なく国は無い
909 行き倒れそのまま死んでゆく人がいるというのに景気は上々
910 麗々しいパックの中にあるものはイワシ かよわき鰯の消えゆく漁場
911 本鮪一匹競値1111万円也 景気は順調に回復という
912 満天の星空の下ひっそりと息をひきとる冬の鳥獣
913 車道には轢かれて死んだ猫の死体 九道の辻に舞うつむじ風
914 スピードは思いであると誰かが言う 思いがあれば出来るのだろうか
915 結局は横着なだけなんだわと知る 私には気持ちが無いのだと
916 地吹雪の救出現場を中継するニュースで終る2005年か
917 羽越線事故の現場を通るもの 遮るもののない海だった
918 行く年の最後に虹を見るように 五ヶ瀬川産鮎の昆布巻
919 五ヶ瀬川、きらめく鮎の集めたる日の温かさ昆布巻にして
920 宮崎の五ヶ瀬川なる川の鮎、慶びの魚、若鮎を食む
921 風光る五月の鮎の香りして 凍てつく冬の食卓和む
922 宮崎の五ヶ瀬川なる川ありて透明の魚(いお)生まれるという
923 病巣は木の洞に根に土にあり 冬青空は透明に澄み
924 水鳥の羽毛につつむうつしみのそらみつやまと日も暮れにけり
925 誰一人訪ねる人のない家に似ている 風が過ぎた青空
926 丘の上、雑木林と五軒の家 その丘に建つ一棟の屋根
927 残骸を曝すだけなら美しい国立駅は消えるべきかも
928 国立の駅は解体されるという移転費用もない国立市
929 歴史ある東京駅は残された春の朧の帝都であれば
930 夕焼けと同じ色の柿色の三角屋根の駅舎があった
931 赤松の林も雑木林さえ伐られとうとう街は駅舎を伐った
932 北口が開発されてマンションが三角屋根の背にそそり立ち
933 スカラ座が壊され駐車場になり大学通りに次々にビル建ち並び
934 夕日が見え富士山が見え街が見え遠く丹沢が耀いていた
935 あの駅が好きで選んだ街だった 国立駅が美しい頃
936 犯罪に近い開発競争に三角屋根の駅舎は追われ
937 それももう今は昔の物語 そそり立つマンション群の下の蟻んこ
938 オレンジの瓦の三角屋根が見え 林が見えて崖(はけ)のあの家
939 赤松の林と駅舎、一橋大学のあった国立は遠い
940 国立の駅舎保存は否決され跡形もなく消えるというが
941 悲しみはフラッシュバック 『幾度目かの最期』を書いて久坂葉子は
942 海沿いの散歩道など変貌を遂げたといえどまだ紫の雨煙り
943 横転をしている列車、雪原に飛び散る椿、山茶花の赤
944 雪国に雪降り積もり関東に空っ風吹く 西方のやわらかな青
945 抑揚が決定してゆくすべてのこと内容よりも如実に明らかに
946 刺々しいっていう場合の棘って文字通り刺すと痛くて触るとさらに
947 ふるさとの涅槃の仏微笑んで樹木のように眠る千年 
948 朝焼けの海に帆船浮かばせて 風が運んでくる森の声
949 家鴨、鴨、猫も数匹 街路でも庭でも女たちが織る布
950 荷駄のように運ばれてゆく 河舟で むかし都と呼ばれた町へ
951 楼門に草を生やして石窟の毘盧遮那仏の崩壊進む
952 平原を列車が走る 平行し蛇行し河は水は流れる
953 システムの欠陥、強度不足など雪降る冬の日本海溝
954 新しい畑に百合を植え替える 病原菌を絶つためという
955 真剣で真摯であればあるほどに闇の深さも増しゆくばかり
956 「男たちの大和」なんていう映画その製作意図のいかがわしさ
957 雪が降る森の川岸 巣の中の生後三日の雛の灰色
958 縄張りを主張している徴という赤い鶏冠の際立つ一羽
959 和歌にある姉歯の松のみちのくの枕詞の悲しくもあるか
960 四ヶ所、阿○○、姉歯という今週のニュースの中の珍しい名前
961 犯意ある契約ならば無効では? 契約以前の姿に戻せば?
962 一ヶ月何も食べずに息絶える蛸の母親、蛸の産卵
963 吉兆という農鳥を見る富士の 麓の町の御師の宿坊
964 鵜祭りの鵜様が台の上にのぼり来る年は豊年約束される
965 湖に一艘の舟浮かんでいて 薄紫の朝靄の中
966 猫の目が深い碧に耀いて温度差のある冬の一日
967 <性格が運命を決める>とコンスタン 怠け者には怠け者の運命
968 深海の底にも森も丘もあり光りを放つ洞窟もある
969 完結に向かって歩き始めたらもう引き返すことはできない
970 《ここでメッセージを送信しますか はい いいえ》 下弦の月に別れを告げる
971 WEBの果てを旅して遠ざかる薄紫に光る物体
972 温かい声で再会約束し遠い旅へと旅立った人
973 氷山を眠らせながら漂って 遠い夢から醒めて砕けて
974 夢色の帽子を被った道化師が手招きをする 三角鬼か
975 落葉には夕日の色や風の色 氷雨の匂い 虫喰いの痕
976 その椅子は花梨の椅子か枇杷の木を植えた海見る小さな家の
977 システムに異常ありという冬の日に半月昇る 水際の月
978 どこかから歌が 遠くから歌が 近づいて消える どこかから歌が
979 寒がりのパンダはいない? 鶯が呼ぶまで岩穴暮らしのパンダ
980 パンダななぜ竹を食べるの 竹だけを食べて何年生きたのでしょう
981 明日また病院 三つ先の駅の駅前の病院 それでも寒い
982 プログラム作成したのは誰なのか迷宮の闇深まる夕べ
983 「プログラムに問題あり」と藤田東吾氏が語ってすべて当て嵌まる謂い
984 枸杞の実は愛の妙薬ではなくて不老不死なる薬膳の友
985 鶏ガラのスープで煮込む老酒で五彩の変化愉しみながら
986 薔薇色の人生のため薔薇は散り薔薇は薔薇の実、残して行った
987 私はもう壊れている潰れている それでも多分生きてはゆくよ
988 幸福を追求すれば幸福は遠ざかってゆく 雲が崩れる
989 原作は野坂昭如だったらしい 道理で鋭い映画であった
990 ナレーションその一勤める渥美清 時代を風刺する田阪具隆
991 渥美清、小沢昭一、三木のり平 黄金期喜劇人の出演
992 「スクラップ集団」という映画らしい不思議な映画を作っていたね
993 象牙など取り出している業者いて昔の松竹映画であった
994 つまりまぁやっぱり死んでいるんですね なんと解体されてゆく象
995 この象はただ寝ているの死んでるの 巨石のように動かない象
996 水色のコンチェルト弾く韓流のピアニストいてBS5
997 傷ついてしまったんだねあの人は 日暮れの空の白い月影
998 雪降れば雪の精霊 風吹けば風の精霊 祝祭の夜
999 手紙には童話の挿絵が描かれていて赤い蝋燭、金の燭台
1000 折り紙で作ったベルやキャンドルやトナカイなどもあって休日
祥  * 『倉庫・混:白鳥座』 * 02:40 * - * -

白鳥座 2786首版3ー2

1001 日なたには真っ赤な辛子、唐辛子 クリスマスには飾りになって
1002 つつましく暮らす他なしつつましく暮らす幸せなどもあるらむ
1003 小春日和の今日は何して暮らそうか 明日から寒くなるという今日
1004 「三丁目の夕日」の世界にあったもの マンションはなく長屋があった
1005 空洞に風が吹き込む 空洞の闇は膨らむ 膨らんだ影
1006 私という名の絶望が書いている 落葉のマントに隠れる蝦蟇
1007 退屈な第二楽章、曇り日の窓の向こうに落ちた太陽
1008 貧すれば鈍するという然り然り 私の上にある冬の空
1009 青狐、子連れの狐、絶海の孤島に棲んで万世一系
1010 猫だって夢を見るからフクロウも夢見るだろう真昼の森で
1011 夢を見る猫がいるってぽっぽさんの日記で読んで猫を見ている
1012 最悪の体調、明日からの不安 生きてどこまで無事でいられる
1013 美しくやさしく年をかさねゆく冬夕ぐれの中の廃村
1014 山に雪、水辺に薔薇の咲くからに冬を愛する黒鶫あり
1015 風でした海を渡っていったのは 主従八十余騎の武者絵の
1016 見えていたのは小島です木々の向こうの海の向こうの
1017 五階建てみたいな楽譜亡くなった菅野さんちで見かけた楽譜
1018 どの歌もつまらないなと思うとき私の中の愛は空っぽ
1019 人間はこうも年とるものなのかポール・マッカートニーが微笑む写真
1020 少しずつブログを畳んでゆきましょうパタリパタリと屏風を畳む
1021 夜は雪 冬晴れののち曇る空 日本上空に寒気団来て
1022 緊張とドキドキのなか冬の日は白い魔物も引き連れてくる
1023 明後日手術日 嗚呼嗚呼嗚呼 烏が啼いてその日が来ます
1024 「誰か代わりに生きてくれ私がうたた寝をしている間」贋作オブローモフ
1025 そう言って連れて行かれたんだよ戦争に〈我より大事な我ら〉のために
1026 かつてそう言って死んでいった人たちがいたよね《お国のために》
1027 危険には二種類あって一方の危険性には硝煙匂う
1028 われよりも大切なわれらあるという 六十年を過ぎて巡る日
1029 純粋な思いゆえなお為政者に利用もされて死なしめし学徒
1030 美しい言葉は酔わす遠つ国の賢き御世の賢き人よ
1031 街に降り人に降る雨 鳥ゆきてゆきて悲しむ空の果てより
1032 蕭条と雨降り雨の日の川を流れる桜、櫟の落葉
1033 弟を喪くし子どもを喪くし中也が歌う空の悲しみ
1034 幼い日 瞳に映る青空を曇らせる雲 誰に罪ありて
1035 人知れず自分も知らずに侵す罪 「私の罪」と言って人逝く
1036 夜明け前、黎明の時過ぎてゆく 2007年世界が変わる
1037 一本の線はよれよれ捩じられて捩じり切られてゆくのであろう
1038 生きてゆくことが不得手で不得意で亀の甲羅は乾くばかりで
1039 人生の奴隷になっていないかしら この頃雨の音を聴かない
1040 あの時も真っ暗だったそういえば明日の夢も何も無かった
1041 日々は明け日々は暮れゆく大公孫樹2005年の銀杏零す
1042 新月の一日前の月かかる 薄紫の夜明けの空に
1043 桜咲く 小春日和のかえり花 大きな猫の眠る日だまり
1044 炭筏、あれはいいねぇ、炭並べ湖水浄化を図る計画
1045 睡蓮もいいけど睡蓮を浮かべた池の水や水の中の雲
1046 煮付けって言えば鰈の煮付けかなエンガワのあの膠質の美味
1047 公演の最後は島根、出雲の国 阿国の国のギエムのボレロ
1048 幽明の境彷徨うかのように明かりに浮かび暗きに沈み
1049 ちょっとした手術 で死んだりもする そんなこともある 冬の朝ですね
1050 「座頭の木」・・・第何回目なんだろう市原悦子と常田富士男と
1051 貧しくても生きられる方法はない?権兵衛の昔話が始まっていた
1052 《広大なサハラ砂漠の端ニジェールでは数万人の瀕死の子供達が救援の・・・・・》
1053 中空に炎となって舞うギエム 速水御舟の〈炎舞〉にも似て
1054 人間が人間を超えることがある その一瞬を視ることもある
1055 歳月は無残なるかな 歳月を味方に為してシルヴィ・ギエム
1056 北風と太陽ならば太陽のような昨日の優勝コメント
1057 明日からはBプログラム秋燦々 シルヴィ・ギエム最後の〈ボレロ〉
1058 水色の万年筆の筆跡の高瀬一誌と記した太さ
1059 火達磨になって狂って病んで書く 春のうつつに見ざりしものを
1060 悲しいがまだコトノハは忘れないテニヲハ少し怪しくなるも
1061 また聴くよ1986年のマリリン、ミス・サイゴンのキム 本田美奈子さんにさよなら
1062 その他に紙で作った人形も  雛人形に似た人型の
1063 お土産を郵送されておりました夢のまにまに木彫りの熊を
1064 鬱蒼と樹木は茂り雨粒が羊歯の葉陰に溜まっていった
1065 埋めなければ危険だからとも思っていたせめて子供が落ちないようにと
1066 深い井戸、洞窟がある夢を見た 水を湛えた洞窟の森
1067 せめてあと10年せめてあと5年命をあげたい欲しい命が
1068 11.11の丸の内 冬が来たのね帽子を被り
1069 岩棚に枯れ木枯れ枝、草の束 遠く巣立って帰らざる巣の
1070 鷹と鷹たたかう画像 草原に降る雨と霧 霧の草原
1071 死の序章奏でて冬の雲流れ冷たい雨が降り出す予告   
1072  虚しさはかぎりなきかな冬空に取り残された鳥の巣一つ
1073 烏羽玉のドン・ヴィト・コルレオーネ眠りける <老女の夏>と呼ばれる小春
1074 栗、胡桃、渋柿、百目、酸漿の色に染まった夕日の里の
1075 「あしたに死し、ゆふべに生るるならひ〜」などと語るも無常を言うも
1076 「あだし野の露消ゆるときなく鳥部山の煙〜」などと言っても詮なきを ただひたすらの
1077 黄色くて斑点のある物体は 秋の轍に轢かれた蛙
1078 生きている虚しさよりも貝よりも静かに波に触れる儚さ
1079 少し前まで誰かを愛していたような真っ赤に炎えている七竈
1080 早く早く死にたい私であるのかもこの後の生を思えば思えば桜
1081 超人の孫か曾孫のようなその小さな脳に宿れる嗜虐
1082 抑えるということがどんなに大事かと『シービスケット』を観ていて思う
1083 増税と九条廃棄決まる日の黄昏どきの赤い惑星
1084 銅版の腐食をいつか愉しんで 紙片に写す頭蓋の形
1085 この身体一つ失くせば新しい世界が視える夜明け前にも
1086 私は破綻している何一つ出来ないままで終わってしまう
1087 いつとなく綻びは来てやがて知る縫い目に沿って裂ける傷口
1088 狙撃兵一人立ちゐて 嗚呼とうとうゐなんて書かせて死亡宣告
1089 それは風、それは雨音 夕焼けが綺麗であったことなども夢
1090 地震あり僅かに揺れている気配 獣の通り道が見えてくる
1091 秋の声が聞こえるような気がします 透き通る青 晩秋の空
1092 終末に向かって歩む 終末はあっけなく来てあなたは終わる
1093 あれは鷺 白い烏じゃありません 六羽の鷺が止まる電柱
1094 絶望はどこからやってくると思う 今朝見た鷺は烏に似ていた
1095 どこかでは何かが動いているのかしら例えばKの新人賞など
1096 精神の<禁治産者>があるならば100%私のこと
1097 慎ましい祈りのような暮らしには殆ど適さぬことも思われ
1098 深く深く深く絶望して終わる そういう時が来ているのかも
1099 「いつどこで何が起きてもおかしくない」 そう言いながら信じていない
1100 一年が経っても何も変らない 忘れ去られていたその時間
1101 山あいの無人の駅に下り立って芒、萱原ざわめくを聞く
1102 この先はどこへ行くかもわからない列車に乗って見るような月
1103 田沢湖は龍伝説の湖で湖の岸には一匹の雉猫がいた
1104 環状遺跡の意味を思うまもなくブナの輝く広葉樹林へ
1105 特急と言っても二両だったりする 能代、大館、十和田南へ
1106 と、これはその前。放牧の馬がゆっくり近づいて関口さんの鼻を舐めていた
1107 八戸から野辺地へローカル線の旅 放牧された馬の歩く道
1108 NHKの番組に付いていってみる。→まずは東北地方から。青森発特急電車
1109 日ごと死は近づいていて一心に後生の大事せよと古典は
1110 人は去り人は私の中に入る 私の悲に変わる人の悲
1111 真言の経のみ聞いていたけれど浄土信ずる経もまた良き
1112 蓮如の悲、人を癒さん 空海の一人即身成仏したるその後
1113 音楽のように一音ずつのばし僧が経よむとき起こる風
1114 一陣の風吹き入りて黒蜻蛉二つ連なりともに来たれり
1115 遍き苦その身を離れ浄らかな鏡のような世界に入るか
1116 白骨の書に言う「後生の一大事」徒然草にもあったと思う
1117 この世にはこの世の鬱があるようにあの世の鬱もあるのだろうか
1118 私には不思議に何の悲しみも湧いてこなくてそれがわからない
1119 柩には入れてもらった?大切に大切に生き守った何か
1120 もうこれで○家の戦前を知る者がみんな途絶えてしまいましたね
1121 言いようのないさびしさが襲うのも普通のことで今日のさびしさ
1122 根っからの薄情者であるといえいったいどうしたのだろうか私は
1123 満月の夜にあなたもあなたの妹もこの世を離れてゆく神無月
1124 林檎には林檎の果汁 熟れ乾き熟れ滴って一つの林檎
1125 雨雨雨雨雨雨雨 大地に海に降りしきり 流されてゆく昨日の世界
1126 遠い死が私を呼び 明日さえも知らない夜の蟋蟀がいる
1127 貧困を直撃したという嵐 貧しさという低湿地帯
1128 鰐を見た幌馬車を見た 災害時、大地は元の姿に帰る
1129 完璧に打ちのめされてゆくことも まだこの後の私の生
1130 暖炉には薪がくべられ丸ごとの鶏こんがり狐の色に
1131 窓辺には陽を好む花ゼラニウム 今が一番幸せという
1132 脱皮する蛇の営み待ちながらターシャの庭の歳月めぐる
1133 働かず寄生しているヤドカリが宿を失くせば浮遊する雲
1134 ニートと言いヒッピーと言う明治には高等遊民などとも言って
1135 七転び八起きの八が来ないからショーソン作曲「詩曲」の中へ
1136 火の一族と土の一族の隔たりか 燃え上がる火よ木を焼き尽せ
1137 白い蛾と瑠璃色の蝶ゆっくりとピンで刺されて標本となる
1138 心臓が破れるほどに痛かった 小狡さに似た針に刺される
1139 白い蛾が浮かんでいたよ水盤に 睡蓮鉢の隅っこに寄り
1140 白鳥が視界をよぎっていったという皇居のお堀を見る窓の中
1141 どことなくいつとなく暗い顔 生きる力を問われているか
1142 緩慢な自殺を遂げているように春夏が過ぎ秋冬が逝く
1143 お終いは突然に来てレクイエム奏でるように蜩も鳴く
1144 限りなく膨れ上がった政権党 破裂するまで膨らんでゆけ
1145 いっぱいに儚い夢を詰め込んで膨らみ続ける蛙のお腹
1146 邪魔っけな尻尾を切っただけのこと火蜥蜴ならば再生もする
1147 その視線遮るための遮蔽幕 絽か紗くらいに透けてはいるが
1148 血を吐いて死んだらしくて泥のなか黒い部分が少し残って
1149 日本にも吹いたらしいねハリケーン 水浸しだし泥まみれだよ
1150 生きてゆくべき場所がない生きられる空間がない覇王の日本
1151 アナーキーとは如何なるものか 2005年の秋の夕映え
1152 終わる前は燃え盛るもの 蝋燭の炎が燃えて終わった宴
1153 半地下に水が入って水浸し 隠れ家としての役目が終る
1154 ここでもうお終いですというように春の日向の夢見るように
1155 特別のことは何もなく終わる命をまた見てしまう
1156 こうなったのはあっという間の出来事だったと青いテントの男
1157 降水は心に及び雫して行方不明の安穏がある
1158 何もかも良くはならないような気がして絶望してしまう
1159 虹よりも虹に似ている水溜り一杯に今広がる油膜
1160 常夜灯一つともして幕は下り舞台に残る一枚の羽根
1161 悲しみを忘れるという花言葉 薮甘草の朱に埋もれる
1162 小平の中島町の薬草園 桔梗、甘草、花咲く明かり
1163 休止するジャングル化した野草園 秋の七草月に供えて
1164 『浮雲』の森雅之の魅力とは黙って愚痴を聞いている男
1165 その壁を覆うタペストリーの絵の貝殻で描く海底の青
1166 汚されたような気がして嫌になる 死が開くという季節の初め
1167 一つ終り一つ始まる 禿鷹が狙い定めるサバンナがある
1168 『砂の器』菅野光亮作曲の「宿命」のテーマと加藤嘉と
1169 うっすらと薄日も射してみたりする「断続的な雨」の合間に
1170 多摩南部大雨洪水注意報、警報に変わるころ終演か
1171 殆どもう直撃コース 白鳥は多分ずぶ濡れの白鳥である
1172 誰が悪かったっていうよりもつまりはみんなで歩いた道だ
1173 竹杭や石など積んで堰きとめて簗を作って捕る山の魚
1174 死ぬことを考えるのはまだ早い 驟雨が過ぎて会う夏燕
1175 栗よりも大きな栗に似た木の実 西洋とちの木マロニエの道
1176 右目だけ開けて見ている世界にも虹の飛瀑は溢れて消えて
1177 夏のすべての日曜日 花火を見るよ 今宵満月
1178 しんしんと寿命が尽きてゆくようなそんな気がして見る夜の月
1179 打ち寄せる水の青さに染まりゆく小さな村は浦島の村
1180 水のない讃岐の国の水のない村であったか花崗岩の台地
1181 鉄筋の庁舎、橋げた、墓地の跡 ここに暮らした人々の気配
1182 貯水率0になったという高知県早明浦ダムのひび割れた湖底
1183 四国路を遍路の道を海沿いの町をたどって会う夕茜
1184 素九鬼子という作家がいたが『旅の重さ』は変わらないかも
1185 アルルには円形闘技場がありゴッホも見たかもしれない羅馬
1186 『鞄を持った女』の中の長い発車ベル、雨音、汽車が去って行く音
1187 ジャック・ぺランも出ていたねニュー・シネマ・パラダイスのあの人が
1188 モノトーンの画面の中に青空が一瞬見えた気がする波も
1189 その向こうに海が見えているカルディナーレの笑う向こうに
1190 何もかもと言って誤魔化す他はなくこの憂鬱のほんとうの理由
1191 不安というのに顔があるのならムンクじゃなくてそのどんな顔?
1192 硝煙の匂いはしない1970年代戦争は海の彼方で広がっていた
1193 「朝日の当たる家」という歌があり星条旗に包まれた大統領がいた
1194 蝙蝠は豚に似ている何となく薄桃色の貌をしている
1195 草食の象、バッファロー、雌ライオン 画面の中の水の紋章
1196 早起きのキリンに続いて縞馬が水場の水にこうべをつける
1197 後ろ肢、前肢、忙しく蹴って川底近く逃げてゆく河馬
1198 半眼をひらいて河馬が眠ってる 小さな耳の河馬の母と子
1199 行くべきは悲しむべきはひともとの花もよるべもなき夏の道
1200 呼びかけたい夏の白雲、白い鳥 過ぎ去ってゆく短い時間
1201 真桑瓜、蔓を離れて独り立ち 瓜の奈良漬け食べたい盛夏
1202 なんとなく窒息しそうなその感じ解らなくもなく解りすぎるかも
1203 まだ未定 何にも入力していない 機銃掃射もされてはいない
1204 今朝は雨 小雨降る朝 尾道の造船所跡のセットが煙る
1205 枇杷の木の根方に蝉の屍骸埋め 海見る海は薔薇色の海
1206 草も木も眠り眠れず鳥獣も眠り眠れず銀河の真砂 
1207 海の見える家 その描線の青と白 水平線に消える帆船
1208 校門は遥か遠くて高くって 地獄坂って呼ばれた坂道
1209 みんみんが猶鳴き交わし鳴き尽くし 海に降る雨見る夏の駅
1210 春蝉の骸うずめて枇杷の木は 坂道に立つ海の見える家
1211 怒りって多くの場合どこに向けていいかわからない怒り
1212 ほんとうはいったい何がしたかった 南瓜くりぬき蝋燭燈す
1213 理不尽と何かを思う理不尽の震源地にして流刑地の杉
1214 月光の川を流れて笹舟のきららきらきら光りを弾く 
1215 人さまの言葉を借りて書く日記 天気予報では今日は大雨 
1216 隻眼の猫の名前は六郎太 黒猫、黒田六郎太と聞く
1217 春の夜の夢はまぼろし隻眼の豹のまなざし遥か遥かの
1218 このままで死んでしまえはむなしいねカランコロンと夏の坂道
1219 1516年レオナルド・ダヴィンチが来るフランソワの部屋
1220 エアコンの効いた涼しい部屋で思う想像だけのヒロシマの夏
1221 などと書いている私がいるのは2005年夏の東京
1222 去ってゆく投下飛行機 その下に焼け爛れ燃え尽くす市街地
1223 エノラゲイ空に現れ一瞬ののちの広島 焼きついた影
1224 日常はそんなときにも日常であったであろう投下直前
1225 燕来て燕去る夏 原爆が投下された日の広島の空
1226 船に影、白壁に影、道に影 杉玉吊るす酒造家の軒
1227 豊漁のニュース漁協の建物に夕日さす頃夕日の入り江
1228 家良漁港 海を見るとき海に虹 背黒鰯の跳ねる突堤
1229 局地的豪雨が降ると言っている炎暑さなかの日本列島
1230 耳下腺がまた腫れている 夏空の下に蝉の死屍累々
1231 その前に日本人は。。世界の人に先だって忘れるヒロシマ
1232 まだ生きていますけれども生きてないそんな気がするかなかなが啼く
1233 時に霧、時に野分の立つところ東京の果て日の入るところ
1234 暗い暗い暗い私がここにいて 午前零時の川が流れて
1235 ここにだけまだ少しだけ夏椿 別の名を沙羅 沙羅の片枝
1236 お終いになるかもしれないもうここで絶滅危惧種絶滅に至り
1237 鯨骨を棲家とする老婆 指なき海の神よセドナよ
1238 惑星の名前はセドナ 極寒の凍れる星の海の女王
1239 憂鬱は深くしずかに潜行し木に咲く花のように身を裂く
1240 雷は時速40キロで移動する 浮き輪が浮かんでいる夏の海
1241 人体を伝って落ちて張り裂けて右から左へ抜けた魂
1242 エリートは弱いものだと言われている 一日にして終わる一生
1243 遠く聞く 夏の祭りの笛太鼓  子ども神輿も笹括り付け
1244 また眩暈 地震が多いとき起こる眩暈であれば私は鯰
1245 さくさくと茄子を刻んで瓜切って夕日沈めば厨の灯り
1246 開かれてあるこそよけれ開かれて川に流して水に晒して
1247 結局のところ東大、東工大 院卒だったりして長谷川君
1248 太陽系十番目の星発見のニュースに並ぶシャトルの傷痕
1249 謎めいた言の葉、落穂、露の色 生きていることだけ確かめる
1250 魂にもかき氷など欲しい夏 よしず、風鈴、夕顔の白
1251 わけもなく悲しい気分になるという旅立つ人の行き先は遠野
1252 青空に雲一つないさみしさを 液晶画面に消えた鳥影
1253 擁壁を崩す猪 猪は百合の根っこを食べに来ている
1254 その年もとりわけ暑い夏と聞く芥川龍之介のいた昭和二年の夏
1255 河童忌も過ぎて東京下町の本所の水は夕暮れの水
1256 これがもう最後の宴だったならワルキュール・ワルロー真夏の祭り
1257 人間はみんな血みどろ 朝焼けの海に浮かんで漂うカモメ
1258 薔薇色の波紋がゆっくりひろがって湖を満たせば湖は薔薇色
1259 宿命のように絡んだ糸と糸 蜘蛛は解析しながら描く
1260 這い登り這い上がりくる蔦蔓、滅びるものは滅びに任せよ
1261 蟻地獄というならこれも蟻地獄 擁壁工事必要という
1262 東尾根、古屋敷、海斗、八幡平 小塚様には狐の曾孫
1263 我が家にも大型地震が発生しこの問題は相談も出来ず
1264 台風も日本に向けて北上中 梅雨明け以来波乱の様相
1265 エジプトの死者もだんだん増えてゆくカイロの薔薇は血に染まる薔薇
1266 向日葵は向日葵畑に自生して音楽の波広がるように
1267 「だめでした」「治りません」「思うようになりません」銀河に続く深夜のmail
1268 燃える火のようなカンナと消火栓 夏が烈しくそこに来ている
1269 揺れました震度5弱の地震です 黄色い望の月を見ました
1270 もう誰とも何とも関係したくない そういうわけにも参りませぬと
1271 満月が南の空に中天に 燕の雛の眠る軒の巣
1272 幽かなる光りの糸を吐きながら蜘蛛が紡いでゆくいのちあり
1273 曇り空 葦の陰から見守れば雨が降るよと遠田の蛙
1274 偶然の積み重ねにしか過ぎなくて秋咲く花のまだ固き種
1275 ほんとうにしなければならないことを置き忘れ たまさか今日をやり過ごす ただ
1276 「あぁ悲しい何だか悲しいとてもとてもとても」 鵯よりもお喋りな伯母
1277 厄除けの団扇を買ってきておくれ 烏小天狗、魔除けの団扇
1278 杏咲き桜が咲いて日本の農村地帯に似る村の墓地
1279 カジャールという小さな村に眠る人 サガンの白いただ白い墓
1280 許されたとは思わずに思えずに再び夏の光のさ中
1281 生きている甲斐なく生きて砂浜に打ち上げられたきらめく鰯
1282 水揚げをされたホッケの開いた口 渚に上がるカタクチイワシ
1283 知床の自然をカメラが写していて海の底から伝えるいのち
1284 移動する海老や蟹にも手足あり 手足なければ泳げたものを
1285 疲れきって頭の中が空っぽだ 鳥が羽ばたく 空の濁音
1286 封印を解いてあなたは何思う 何一つない明日のために
1287 どことなく不機嫌そうな猫の場合最後の最後まで牢名主っぽく
1288 緋縅の鎧冑に金色の太刀持つ人の漆黒の船
1289 黒塗りのただ一艘の盲船 竜神祀り天翔ける船
1290 暁の村上水軍、八幡船 霧の中より黒塗りの船
1291 海賊と言っても海賊大名の九鬼様もいた中世の海
1292 擬態する 空中静止する葉っぱ 楡の若葉にさみどりの葉に
1293 熊野沖、船が炎上しています 九鬼水軍の海だった海
1294 一ミリもなくて生まれる団子虫 枯葉の寝床に雨待ちながら
1295 「なせばなるなるようになるケセラセラ」百歳の人笑って言えり
1296 永遠がただ一本の樹となって吹雪く花びら散らす夕ぐれ
1297 古典と言い伝統という様式の劇性露わにしてほとばしる
1298 それゆえに今日のひと日の明るさと陽の耀きとひとときの燦
1299 命炎え心炎やしてやがて死ぬ 例外もなく消えゆくあかり
1300 この後の悲喜にどうして堪えてゆく靄と霞と霧の差ほどの
1301 近づいてみれば空洞だったから ただびゅうびゅうと風の音して
1302 この場合夢をあきらめたわけでもなく夢すらなぜか胡散臭くて
1303 夕日には夕日の事情ありまして 雲に隠れる日もありまして
1304 さらになお闘う人の眼も視える かつて歌いし「地球(てら)を蹴る」歌
1305 来週の二十四日は河童忌で芥川龍之介が命絶った日
1306 何事も変わらぬままに変わりゆく日々に疲れて散る沙羅の花
1307 夏の花、沙羅のみずえに花咲けば 自死を果たした人の眼も見ゆ
1308 消防士そのものに似た消火栓 黄色いカンナが囲む工場
1309 退屈という名の至福あるように弛緩している七月の蝶
1310 幾度目の夏がめぐって乱れ雲 あとどれくらい生きていられる
1311 雪降れば雪、風吹けば風 最後の日にも雲雀は揚がる
1312 また今日もすすき、刈萱、萩、桔梗 音韻として生まれる生は
1313 幕開きの桜吹雪と鏡面のほかには船の率い出される
1314 なんという長い退屈 絢爛な退屈として「十二夜」がある
1315 その穴子背びれ胸びれ削ぎゆけば 身をくうるりと反らせる稚さ
1316 船端に潮満ちくれば牡蠣舟の牡蠣の生簀にめざめる小海老
1317 母さんに抱きついている小猿にもやがて生存競争の刻
1318 その人の瞳の中を落ちてゆく夏降る雪に似てえごの花
1319 えごの木の花降りやまぬ夕つ方 彼岸の風もここ過ぎながら
1320 山の辺のなんじゃもんじゃの花降れば木下闇の夕べの明かり
1321 雨降れば雨の三鷹の禅林寺 あの頃はまだ小堀杏奴も
1322 今日七月九日三鷹禅林寺 森林太郎の墓に雨降る
1323 雪の朝、隣家があるということに気づいた 1年が過ぎていた
1324 王国の王の選任補佐官の支配被支配拡大の域
1325 死の淵をさまよっている魂が 月みれば月に花みれば花に
1326 微笑みを湛えた画家のキャンバスに雨の朝に生まれた蕾
1327 今朝の雨 夜通し降ると言っていたあの雨だろう 文月の雨
1328 swingをしながら歌うその人の声が掠れてきたのを知った
1329 雨の日に蝸牛這い枝を這い 黒鍵の音弄るらしき
1330 「天邪鬼」それは私だ 炎え上がる不動の像の下の石塊
1331 蜂蜜のようにとろりと金色の夢を蒐めて海馬は眠る
1332 ドラゴンの口から水が溢れ出る龍頭の滝と呼ばれる蛇口
1333 明日は雨 傘のマークが並んでる龍伝説の池に雨降る
1334 出航の銅鑼鳴り鎮む船体の傷に明日も降り注ぐ雨
1335 紫陽花の小径を通り涼しげな蹲に浮く睡蓮二つ
1336 隠れ家のような小さなパン屋さん 学園通りの裏道に入る
1337 1500万ヒットだそうだ勝谷誠彦氏「イラク3馬鹿」等とまだ書き
1338 さびしさの理由は☆がいないこと雨が巣立ちを促している
1339 ほんとうは今日は私は何をしたく何をしたくなかったのか懼れる
1340 一本の木になったとき一本の木は汲み上げる水の百年
1341 ただ踊る踊るに任せ褒めもせず叱りもせずに育てるという
1342 黒翁の面を被った子供舞 神楽を舞えば神楽の心
1343 旋回し眩暈している中枢の薔薇星雲の無限混濁
1344 梔子の色鮮やかに純白に やがて汚れる花ゆえの白
1345 採取され攪拌された血液は夏の真昼を眠っているか
1346 限りなく胃を傷めながら胃はこのままでもいいのかと問う
1347 目の錯覚かと思ったら向こうで扇風機が回っていた
1348 破竹茹で蕗茹で雨の日の無聊 雨には雨の光りあること
1349 六月も今日で終りという朝 花も蝸牛も聴く雨の音
1350 サングリア ジュリエッタにはこの酒を フェデリコ・フェリーニ注ぐ旨酒
1351 お終いになるまで少しある時間 木は空洞に音を楽しむ
1352 苦しくてならぬと傾(かし)いでゆく身体 大王松の一生終わる
1353 絶望に傾いてゆくこの町の送電線にカラスがとまる
1354 碾き臼を引くとき驢馬は何思う 窓を持たない小屋と碾き臼
1355 身を窶し心を隠す夜叉鬼が夜の神楽の男となりぬ
1356 その中に現人神であった人 万歳三唱されていた人
1357 歴史という一つの言葉に括られて大方の人、罪免れて
1358 何ゆえに沖縄であり何ゆえに本土ならざる上陸だったか
1359 水無月の「傾く」歌会・「褻」の歌会 言霊というものの怖さよ
1360 映像に映る飛行機、人骨をよぎって泳ぐ綺麗な魚
1361 帰りゆく時の流れのその果てにバンザイ・クリフという奇妙な名
1362 万歳と天皇陛下万歳と身を投げた海 バンザイクリフ
1363 ただ青くただ美しく見えるだけサイパン島の今日の映像
1364 赤ひげのような先生いる町の診療室の二十四時間
1365 金色の海に浮かんだ島影が遠くなるまで夢になるまで
1366 石段の上にも下にも湯煙が 滾る地底の水底の青
1367 やがてこの夕闇の中に消え或いは溶けてしまう群青
1368 紫陽花に雨、茗荷に雨、暑さが嫌いな私にも雨 でも昼頃には上がるらしい
1369 山の実が熟れてあなたを迎えます もう夏の日の風をまとって
1370 瑠璃色の帽子の中の木苺のオリーブ色の光りの泉 
1371 木苺の熟れた粒々太陽と山の恵みの甘さ酸っぱさ 
1372 永住を放棄したわけじゃない 蜜蜂が移動を開始しはじめだけ
1373 最悪の結果を招いた経過ならその過去ログが保存している
1374 こんにちは おはよう おはよう こんにちは 鸚鵡のように交わす挨拶
1375 悲しみが木苺色に染まるとき もう夕焼けは始まっている 
1376 木苺が風に揺られていたという 夏の陣馬に吹く青い風
1377 たらの芽は用心深い 山菜の王と呼ばれるたらの芽なれば
1378 夏なれば守宮もガラス這うらしき感情という棲家に入りて
1379 漂流は始まっている 一艘の小舟も隠す海の朝霧
1380 陽のあたる石の隙間に見えていた 蜥蜴の尻尾が生えてくる
1381 たらの芽は頂芽の他に脇芽、胴芽あり 予備の芽多く持った山菜
1382 一切は流れ流れて空の果て 彩雲生れて老残を見ず
1383 傾(かぶ)くこと好きだったのか江戸末期、水色袴の日記の断片
1384 確実に何かが終わったと感じている歌人の多さが塚本さんの死
1385 靖国にこだわっている(小泉さんの)日本の 孤立してゆく思想の行方
1386 六月の朝さかれた魂が再び出逢う天国の門
1387 大切なものも次々消えてゆきもうおしまいかな十薬匂う
1388 死の螺旋めぐりめぐりて夏の朝 再び生れむ湖(うみ)の巻貝   
1389 退屈で死にそうなのと青虫を産みつけに来た揚羽がひらり
1390 サボテンは水がなくても生きるのか駱駝は水を湛えているか
1391 変わったこと何もなくても死にそうな気分が残る烏も鳴くし
1392 戦争の責任ならば全員に なかんずく天皇の名で始められ
1393 行き暮れて心乞食はさすらってこの世の水を甘露と飲んだ
1394 アドルフと言えば私にはコンスタンのアドルフ。 ヒトラーじゃなく
1395 赤裸々に生な自分を描けと言う 『アドルフの画集』の画商の言葉
1396 「傾いた道しるべ」という歌があり その歌が好きな私がいた
1397 あの街を襲う雨粒、窓叩く ただ真っ白な驟雨 六月
1398 もう一度海への手紙書いてみる 梅花空木がまた咲きました
1399 重なってゆくとき理由は消えてゆきただ憂愁の兆す夏の日
1400 藤の木に白い藤咲き藤散れば夏が始まる水無月の川
1401 野火止に残った鴨も旅立って ただエゴの木の白い花散る
1402 流されて流れて育つ水鳥の姿見かけず夏とはなりぬ
1403 ST波下がる理由はともかくも暑い季節に散歩は無理です
1404 さざめきが聴こえるでしょうどこからか平原綾香の声に向かって
1405 染五郎、松緑、海老蔵、菊之助、獅堂、勘太郎 七之助も加わって公演終る
1406 シルエットから始まって絢爛の豪奢にいたる次第、夜の部
1407 はなやかなその色彩は一転しモノクロームの雪降る世界
1408 雪になり紅葉になって映える死の 嗜虐美という繚乱の華
1409 欠点といえば面白すぎること 鷺娘ほどの静謐がよく
1410 野田秀樹の頭の中の広さそのまま舞台の広さ
1411 野次馬の残酷さには変わりなく 取り巻き、囃し、殺しを好む
1412 日本版瀕死の白鳥「鷺娘」 玉三郎の鷺の凄絶
1413 野田秀樹、勘三郎の共通項煮含めて出す『研辰の討たれ』
1414 魚屋も飛脚も手代も虚無僧も 遊女も瓦版売りも通って行った
1415 舞台には時空をこえる橋が架かり 江戸のすべてが通って行った
1416 生きていてよかった助かった そう思った時、討たれて死んだ
1417 仇と言い敵と呼ばれ逃げ惑う俄侍、辰次の最期
1418 大勢の町人どもが囃し立て追いつめられて辰次は死んだ
1419 「研辰の討たれ」討たれ紅葉のように血は散って命大事の辰次は死んだ
1420 黄金色の鶏がいて薔薇咲いて絵本の 中の噴水の青
1421 花を食べ木の実を食べて育つから綺麗な声で鳴くのだろうか
1422 雨期の森 蝶、蝉、飛蝗 ヤマセミの運ぶ餌にも流れる時間
1423 勾玉も鯨の骨も埋めている海辺の村の火祭りの夜
1424 彼岸への旅に似ている巡礼は 夕暮れ時に飛ぶしろばんば
1425 神さまと仰いでいたのか白い山 霧の向こうに滝の向こうに
1426 恐竜も鯨も虹を見たかしら 嵐が置いてゆくという虹
1427 仲間を持ち家族をもって恐竜は群れて集って滅びて行った
1428 板状の骨は飾りじゃないという防御、調温機能もないと
1429 新説は仲間を見分けるためというステゴザウルス背中の秘密
1430 コククジラ背筋から痩せ肉落ちて東京湾に溺れ死ぬという
1431 ボルボラ島 エアーメールの写真にはその「絶海の孤島」が浮かぶ
1432 一日中南の風が吹いていた 虹は嵐の後に立つもの
1433 特になし何にもなしという理由 理由に非ずと退けられる
1434 必要もないのに撮っているような レントゲンには映らない翳
1435 透明の意味を思っておりましたレントゲンには透ける心臓
1436 かなしみの極まりゆけば他愛ない指人形や影絵の劇が
1437 雹が降る嵐のような雷雨あり ゴッホ展を待つ長い行列にも
1438 えごの花うつむいて咲き仰向いて落ちる 着地するとき翻る花
1439 ゆっくりと築いてさっと突き崩す 終わりはいつも突然の雨
1440 本を捨てる多分三百冊くらい 資源ゴミの日まで二週間
1441 二年余り花を見花の枯れるを見 淡い時間が流れて消えて
1442 完全に削除するのは簡単なさるさる日記web日記
1443 旧街道脇本陣の菖蒲園、紫陽花寺につづく石畳
1444 この後の驟雨の季節蘇る旧い街道沿いの庭園
1445 「具体的に進まなければ前へ前へ」そうね行きなさい
1446 倦怠は秘かに兆す夏の日の陽炎ゆれる道に水辺に
1447 後ずさりしている蝦蟇の背後にはヤマカガシ棲む雑木の林
1448 清浄な骸は光る 透明な雨の雫のような音楽
1449 話せない死者の代りに語るべき車両も次々片付けられる
1450 運転士死亡のために甦る 古い諺、死人に口無し
1451 事故車両、関連現場の保存なく 撤去、解体、切断される
1452 整備不良、欠陥車両のこともあり ブレーキ痕のない理由など
1453 コククジラ、虹を作るという鯨 東京湾は今日花曇り
1454 コククジラ東京湾に現れて 灰色鯨は藤壺を乗せ
1455 違うんじゃないのと思ういつもながら その意味を取り違えること再三再四
1456 山中というわけでなく住宅街 二十分は長くはないか
1457 救急車、消防車の到着は遅いからいつでも現場住民が頼り
1458 墜落し炎上しやがて爆発し警視、警部、警部補焼き尽くす
1459 警察のヘリが墜落してからの救急、消防、警察が来るまでの遅さも
1460 点は点、線は線でしかないことに 集合体に脳がないこと
1461 あるとしても全く機能していないことに更に驚く
1462 危機管理情報室らしきもののない交通機関があるということ
1463 報道が報道としての役割を果たすためには何が必要だろう
1464 うんざりだなんていったらもしかして非国民とか言われるのかしら
1465 いつのまにか沈む夕日の中にあり石見の人、森林太郎とのみ刻む
1466 まっすぐに稲田を渡り海に出て風はひとりであることを知る
1467 そのように時間は過ぎて機能麻痺、運動麻痺が近づいて来る
1468 白夜でもないのだろうに黄昏も過ぎただろうに妙に明るい
1469 構造と捉えてみれば明らかに 平井弘の仕事の意味も
1470 震災のあった工場の多い町 尼崎という町で起きたこと
1471 音楽も色彩もまた上昇する 風は砂漠の形を変える
1472 初夏の川、橋の袂のせせらぎの音聞く音の中の魚
1473 密集と過密の悲劇 空間、時間、生命奪う
1474 私たち日本人の生き方が背景としていつでもあって
1475 秒単位で生きる日本人だから無言の重圧かけているから
1476 設計のミスもあるかもしれないねレールと車体、カーブの曲線
1477 羽根ペンのマークの記事を書いている 半月が覗く硝子窓の中
1478 算盤の珠を弾いて計り売り そういう時間が昔はあった
1479 魔の時間ふっと来る人だったのか 瞬間的な記憶喪失
1480 きっかけは何であっても暴走し加速し制御不能となっていたもの
1481 むごたらしいまでに晴れている朝 大型連休初日の金曜日
1482 106人目の遺体を収容し襤褸襤褸になった車体を引き出す
1483 マンションの外へ引っ張り出されてきた運転士のいた先頭車両
1484 「ありえない」ことがありえて浮き上がり転覆脱線した事故車両
1485 「プレッシャーのない教育はない」というJR西日本会長の言
1486 脱線時自ら巻き上げ巻き込んだ砂礫痕ゆえ軽微な痕跡 
1487 出来るなら置き石であれと願うようなJR発表「粉砕痕」
1488 JR西日本の会見は沈黙するに等しい会見
1489 岩井俊二『花とアリス』の一場面 沙羅の花弁が開いたような
1490 春四月、地獄の季節 すごいねと風が囁く春の跳躍
1491 川底の石に似ている何かがいて動き出します 山椒魚です
1492 春雷が通り雨にも伴って 執拗にまだ糸を張る蜘蛛
1493 どの鶴がリーダーだろう海を見て河を見て越えてゆく
1494 燦々と降る月光の川があり 筏となって流れるさくら
1495 いつしかに逸脱すれば逸脱の果てに青空流れゆく雲
1496 温度差はただ我儘と解されて伝わざりしか皇太子の思い
1497 レプリカの剣神器となるもよし更なる軽さ求めてやまず
1498 天皇の選択としての「国体護持」 雨師でありしか稲穂の国の
1499 遅らせたその数日のために死んだ広島の人長崎の人
1500 八咫鏡、草薙の剣、八尺瓊勾玉  「国体護持」と原爆投下
1501 遥かなる雲の上にも人はいて砂噛むような日常もあれ
1502 病気ではなくて気質であるならば気質を矯正させることもまた罪
1503 その事については自由で民法の適用事例の一つに過ぎず
1504 病気なら治せるはずだし環境を変えて出直すことも出来るし
1505 大正天皇の場合は何という病気であったか心身を病む
1506 雅子さんの統合失調症という病気については情報がない
1507 存亡の危機にある時発揮される蓄積された情報の力
1508 足利家15代、徳川家15代 天皇家125代 際立って高いノーハウを持つ
1509 岐阜蝶のその営みは静かにして葉裏に卵産みて休めり
1510 巣作りを始めてコゲラ  女帝には禁忌も少し多くなるという
1511 稲を植え、蚕を飼って祀りして 長く続きし尊卑の文脈
1512 天皇というより主に祭祀長 雪のごとくに降り積む言の葉
1513 最悪のこともありうる最悪の事起こりうる漂流家族
1514 原武史、小熊英二氏1962年、島田雅彦氏1961年の生まれ
1515 何となく引くタイトルではあるけれど島田雅彦ならやさしいサヨク
1516 紀伊國屋書店へ行った 島田雅彦と二人の学者の「いま天皇・皇室を語る」
1517 巣穴からジャッカルの子が顔を出す 海辺の砂漠に生きるジャッカル
1518 見えませんここには梟はいないから 唯青空に伸びてゆく杉
1519 フクロウの子の三つ四つ止まる枝 NHKの深夜放送
1520 花に鳥 何の憂き世と思うまで 花喰い鳥の憩う時の間
1521 辛夷散り山桜散る野火止の黄の菜の花や大根の花
1522 「私は葡萄畑の葡萄摘み」法王庁の空飛ぶ鶫
1523 香櫨園、芦屋、魚崎、石屋川 生まれ育った街の水際
1524 紫の花だいこんに陽はさしてしずかに時は流れてゆけり
1525 病院と海水浴場だけがあった 海と砂浜だけが見えていた
1526 遠い昔 遥かに遠い昔のこと 埋め立て以前の風の砂浜
1527 潮風と海の匂いのする駅は阪神電鉄香櫨園駅
1528 紫の雨が降るらむ 六甲に硝子を伝う雨があるらむ
1529 四月尽 見知らぬ駅で降りてみる花降る銀河鉄道の夜
1530 ちょっとした偶然、それで人生は決まる 霧が谷底から湧いて来る
1531 優しさが残酷さでもあるような晩春の風身にまといゆく
1532 見放され見棄てられたと感じている 強制収容所を想像している
1533 真実を告げることこそ良心であるから残酷さとは優しさ
1534 思いやり深い神さま最後までせめて一緒に戦う医者を
1535 「私にはもうしてあげられることがない」 医師である人の言葉を思う
1536 そして今も初めて会った日のように無防備なまま生きている人
1537 15年前のあの日を忘れない 無防備だった心が出会い
1538 唐突にサイトを閉じる日が来たら ある日の風がページを捲る
1539 氷雨にも耐えた桜が微風にも散ってゆきます春暮れる頃
1540 六甲の緑芽吹く日 Kさんが四度目になる入院をする
1541 その国は阿片の毒に酔ったように日本の下にも苦しんだこと
1542 中国をわざわざ「支那」と勝谷誠彦氏 1000万アクセス誇るというが
1543 カンボジア・ベトナム・ラオス・インドネシア・タイの場合も同じく思う
1544 ある時は奪われながらも抵抗し抵抗しながら生んだ文化か
1545 私は何も知らないことを知る この隣国の通史でさえも
1546 日本の周りにはあった海もなく護りの盾となる山もなく
1547 大いなるあの中国の支配から逃れ続けた国の不思議さ
1548 私がとっても不思議に思うのは半島にあった国の千年
1549 隣国の歴史を知れば軽蔑や憎悪は起こりようもなく消え
1550 元々は誰のものでもない島や海が分割、領有される
1551 争えば果てしもあらぬ境界は山にあり海にあり 入り合う
1552 入り合いという制度あり 入り合って分け合っていた天地の恵み
1553 「自虐史観」 あの人たちはよくそう言う 他虐よりよいかと思う
1554 フリージァが咲いていることにも気づかずに 桜ばかりに気を取られていて
1555 次々に書き換えられて空白に 従軍慰安婦、侵略戦争。
1556 水曜の午後もまだ降る春の雨 シャガ、花大根、連翹に降る
1557 誤解される方もいるので念のため申し添えれば獏は私
1558 永遠の命を持った木のように静かに雨を聴く雨蛙
1559 耳垂らすポチの看板、中国では。 「リチャード・ギア似の」小泉首相
1560 原爆を日本が忘れないように日本の侵略も歴史の事実
1561 九条を改悪したり常任理事国入りをしたりそれは嫌です春の獏でも
1562 本当はこれが現実なのでしょう 日本人は嫌われている
1563 「熱狂をしやすい人たち」とも言うが (日本が)理性を失くし起こした戦争
1564 「好戦的な国」とあなたは言うけれど 自覚症状ない日本も
1565 居なかった無かったことに教科書が 歴史はいつか書き換えられて
1566 反日の感情激しくかの国に、また別の国に現実にある
1567 これほどの憎しみの対象として私たち 憎悪のシチュー煮詰まって今
1568 花言葉、検索されている文字のどんな言葉も分身の花
1569 隠し廊下、座敷の間の壁一つどんでん返しを遊んだ姉弟
1570 茗荷沢、滝の逃げ道 鉱泉に続く迷路のような裏道
1571 鬱蒼と山は覆って黄金沢 鉱泉近きただ細き沢
1572 金山を秘かに護り伝え来て千諏訪公の古屋敷の址
1573 静脈も指紋も認証されなくて透明人間だとわかるまで
1574 掌で認証させるそのためにあなたは誘拐されるかもしれない
1575 その麻は雪に晒され藍鼠色の小千谷縮みの涼しさとなる
1576 題詠の「背中」まで来てさらす背の 尾羽ふうわりと雪の白さに
1577 未確認飛行物体現われて桜吹雪の空のまぼろし
1578 見上げれば唯一点の切片の核弾頭の幻の見ゆ
1579 爛漫の春の最中に人はいて 黒点一つ無き青空を
1580 日本に桜が咲いて陽が照って 恙無ければ恙無き如
1581 国連の常任理事国入りを果たし憲法を変える 望んでもいないのに
1582 反日のデモが起きても興味なく 日本政府と日本国民
1583 春の夜は眠れ眠れよ夢ふかく 泡浮く水の中に病む魚
1584 さみどりの欅若葉や花水木 季節は移る ふりむけば夏
1585 爛漫の春の吐息の中にいる 鬱陶しさの極まる卯月
1586 岩を抱き天に向かって伸びてゆく巨木の腕に擁かれていた
1587 鳳凰が羽を休めるその閑に歴史は動く動かされてゆく
1588 知ることを教えなかった双方の歴史があって小さき島や
1589 江戸時代竹を刈るとも竹島はさらに遡ること何世紀もあり
1590 我が国の歴史を共に主張して知らざりしかな隣国の歴史
1591 そもそもが歴史のどこに現われてどこから消えてどこへ行くという
1592 双方が主張している島のこと 中国人は「岩」と言ってた
1593 昨日より暖かくなる季節の中 陽炎もえるようなさびしさ
1594 大切な一人の不在 鳥はもう海峡を越えただろうか
1595 淋しさの中心にいる火のように沈む小石のようにひとりで
1596 火を煽る風があるなら火を鎮め心労わる風もあること
1597 和楽器と競演しているヴァイオリン 許されなかった罪を歌って
1598 木管が恋の炎のクレッセンド 哀しみ誘うハープの調べ
1599 半鐘と共演しているヴァィオリン 八百屋お七を弾くヴァィオリン
1600 ただ眠り眠り続ける春の日の三寒四温身を過ぎてゆく
1601 私はこの頃空を見ていない 花の向こうに空はあるのに
1602 地震雲を見たって親子の乗客が バスの窓から富士が見える日
1603 菜の花のような四月の日暮れ時 あなたは元気にお過ごしですか
1604 だからってキリンのようにうなだれて遠い眼差しするだけなんて
1605 いいのかな言われっ放しでそのままで理路整然と片づけられて
1606 宮崎県産シラス、しらす干し 未だ幼く海を忘れず
1607 「冬将軍」眉を動かすばかりなり さよなら春はもう半ば過ぎ
1608 正直のレベルを上げよと山田ズーニー氏 春三月の花の明るさ
1609 正直の練度のことを言っている 司馬遼太郎の言葉だという
1610 破線にて縫い取る世界があるならば縫い取られない私も生まれる
1611 変らない日々の中にも終楽章もう近いことを告げて花咲く
1612 落ち着けば?あんまり水を跳ねないで 金魚に言っても仕方ないけれど
1613 サンミシェル私の時は流れゆきすべての先に死があることを
1614 まだこんな時間に起きている私 いったい何をしているのだろう
1615 動かせない最終期限をケツカッチンとは知らなかったよ嗚呼今日だよ
1616 柿のへた、柿のたねではありません。枇杷のへたってないようですね。
1617 人は人、私は私 春の日の気球が浮かぶ空の水色
1618 アライグマ捕獲作戦 迂闊にも捕獲されたと「不機嫌なアライグマ」
1619 ギロチンのようにガラスが落下する夢を見ました夢でよかった
1620 ビル街の高層界からギロチンが、ガラスの雨が降る未来形
1621 北前船船主寄贈の随身門 金襴、緞子、祭礼の絵馬 
1622 丸亀藩婆沙羅の系譜、宇和島藩伊達の系譜の綺羅好む血よ
1623 三月の二十七日観音寺琴弾公園にて勢揃い
1624 一本は四国へ一本は鞆へ七卿落ちの道にも分かれる
1625 太鼓台伝播のルート辿る時、見えて来るもの街道が囲む
1626 戦国の支配領域に重なって伝播したらしい太鼓台文化圏
1627 ちょうさという祭りがあって太鼓台文化の祭り祇園山鉾
1628 LA CHAMADE 敗北の太鼓にならないよう 遠い太鼓は空耳だろう
1629 春の日は静かに暮れてゆくばかり 遠く聴こえる祭りの太鼓
1630 効き過ぎる薬は効かない薬より怖いものだと年寄りも言う
1631 タミフルという名の薬の副作用いまさらながら怖いと思う
1632 路地裏の焼肉屋さんの室外機どういうわけか猫のお気に入り
1633 一匹はその夜、次の朝ほかの子が 春というのに凍えて死んだ
1634 物置で白い野良猫は子を産んだロミオのようなハンサムな子を
1635 この猫は随分人気があるらしい手を折り曲げて眠っている猫
1636 三月の乳白色の空の下 白木蓮の花に降る雨
1637 今日の雨 白木蓮は七分咲き 静かに降っている雨がある
1638 茗荷沢 タラの芽、蕨、ふきのとう 苦味ほろほろ今年の春の
1639 お彼岸は毎年寒いと子規の母 この山里は日向の匂い
1640 浮き島にユリカモメ来て鳴く夕べ サティのチョコの溶けゆく甘さ 
1641 香水になぜか兎が付いて来て大きな耳を垂れております
1642 この日射しつよくあかるくのどかにて上水に呼ぶオナガ、鶯
1643 華麗なる変奏曲を聴くように春の逃げ水走る野火止
1644 心臓に硝子の破片突き刺さる 硝子は虹のように輝く
1645 何だったあれは風ではなかったか ただ裏山の夜の梟
1646 野火止の鴬が鳴く彼岸です諏訪湖の水もぬるむ頃です
1647 フランソワ一世、黒い毛のプードル 引っ越してゆく人の飼い犬
1648 夢の中夢から覚めても騒ぐのは赤い和金の金魚注意報
1649 昨夏の嵐に崩れ流木が溜まったままになった北浦
1650 信じたい思いの先に何がある あの人ならば出来るかもしれない
1651 劇的なことは何も起こらない  そういうことに馴れ過ぎていた
1652 道のりの一歩一歩を確かめるようにゆっくりゆっくり歩くこの旅
1653 『腐れ外道』と誰かが」言っていた 腐れ外道ゆえ書けることもある
1654 完全に死んだかどうか確かめる 何を 私のブログの行方
1655 夜毎聴く魑魅魍魎や鵺の声 異形の鬼を垣間見る春
1656 あの人の登場こそが期待され今日も見にゆく「題詠マラソン」
1657 海賊が今でも出没するというマラッカ海峡 船の名は「韋駄天」
1658 そして死が森を覆った 秘かに爛れてゆく記憶です
1659 この人の心に傷をつけたこと多分一生忘れない思い
1660 風はただそこに吹くだけ木はそこにただ眠るだけ 水よ流れよ
1661 不器用に生きて滅んだ一族の何を伝えて火祭り残る
1662 水辺には淡いピンクの睡蓮とウオーター・レタス数匹の稚魚
1663 合戦の記憶いずれか遺伝子に残るともなく百手、流鏑馬
1664 横町の猫の集会、豆腐屋のタマは近頃なかなかの威勢
1665 金絲猴、ロクセラーヌの鼻のサル 金色の夢、金色の風
1666 半分は眠って暮しておりまして花粉降るころ私は眠る
1667 一刹那一瞬の青奔り去る 風が光りを光りが風を 
1668 前線を突破してゆくホリエモン 今コーナーを回ったところ
1669 剥離して浮遊してくる何ものか微熱のように憂鬱な春
1670 集会を仕切るボス猫 閉店を決めた丹後屋酒店の猫
1671 春の日の猫の集会、妊娠をしているらしい白い雌猫
1672 あの人がもういないのに私が歌を書いたって何になろうか
1673 三月の雪降る降れば降るならば黄の菜の花や紫すみれ..
1674 亜熱帯日本になったと思ったが豪雪地帯でもあって日本
1675 暖かくなって花粉も飛ぶという憂きこと多き春浅き空
1676 クリスタルビーズのような耀きを知らずに今朝の泥に汚れて
1677 川岸の鴨が寒さに蹲る 鴛鴦模様の彩色の鴨
1678 或いはそれは自信の問題かも知れず水仙の咲く水辺水際
1679 春なれば蛙も土竜も顔を出し記念撮影するらしかしこ
1680 大小の足跡つけて雪の道 三月四日歩くほかなく
1681 さらさらと細雪降る雛の夜 明日東京は白い街になる
1682 曖昧な距離感覚の朝靄の中に小鷺か鴨か見分け難くいる
1683 千年を遥かに越えて生きている大きな樹ならわかってくれる
1684 三月は優しい雲と逃げ水と 玉川上水沿いの蝋梅
1685 濁流にのまれていった人、車 深夜再び見ている『津波』
1686 三月には祖母と舅の命日があって陽射しもやわらかくなる
1687 急坂をのぼれば台地、八幡と隣りあうのが主(おも)と西新屋
1688 清薫院真蓮妙観大姉なる位牌の祖母に故郷の水仙
1689 降る降らぬ決して降っていない雪 春の心を吹く紙吹雪
1690 明日から弥生三月 こぶし咲き木蓮が咲き名残り雪降る
1691 まるで一人の人が語ったように世界は語られる 複数の私によって
1692 金箔と漆がつくる空間に珊瑚の粒子のような残照
1693 魂に低温火傷あるらしくまだひりひりと 小雪降る夜
1694 牡丹雪降れば降るゆえ降るからに明日の雪道、早朝の道
1695 肩が凝って肩が凝ってと言いながら冷たい骨になっていたらどうする
1696 日干しする煉瓦に命奪われて石窟寺院の壁画の剥れ
1697 今日は普通明日も普通 水辺には揺れる水草、黄金色の鯉
1698 お隣りの日記は誰が書いている 日々変りゆく「お隣り日記」
1699 過去ログは時間を生きる 悠久の言葉、言の葉、言霊の森
1700 地獄変屏風の炎、人々の頬を照らして焼けゆく牛車
1701 土色の遺跡の中の壁画には極彩色の釈迦とその弟子
1702 リコ・グルダ、パウル・グルダに父グルダが愛していると伝える楽譜
1703 フリードリヒ・グルダのためのコンサート 弦とピアノと一つの記憶
1704 エストニア土産のカップ 可愛いね どうぞ増田さんによろしく
1705 円柱は静かに光浴びており甲府湯村のエンタシスの寺
1706 戦国の時代に生まれ露草の命を武器に戦って殺されていた前世の鷹
1707 楡の木が育てる水の豊かさを確かめている春の雌鹿
1708 ここにおいでここにあなたの枝がある不格好だが座ってごらん
1709 私ならきっと話してしまうだろう 枇杷の木に吹く風のことなど
1710 解ってます解ってます解ってます解ってますが悲しいのです
1711 トネリコの大樹は空を覆うかと思うまで高しトネリコの空
1712 外は雨、氷雨降る朝 関東の直下の鯰身をうねらせる
1713 存在が威圧そのもの 当然のように無言の石臼の稗
1714 とりわけて最長老の雀右衛門 枝折戸に置く手の美しさ
1715 雀右衛門、芝翫、鴈治郎、富十郎 四人ながらの手の美しさ
1716 保名より保名のように妖艶にあはれに舞って「二人椀久」
1717 鴎外の小品原作「ぢいさんばあさん」は伊織とるんのあかるさがいい
1718 久松の籠かき二退三進し花道を去る 籠かきにも花道
1719 去ってゆく上手下手の花道に 久松は籠、お染は舟に
1720 全部嘘、たとえそれでもいいじゃない 舞台には降る太鼓の雪が
1721 あの日からずっとひとりで生きている あなたのいない時間が過ぎる
1722 何回も書き直した線が綺麗であるわけがない推敲を認めない
1723 カンガルーの赤ちゃん2,5cm体重 1g! 私の猫が目を瞠る画面
1724 変換が利かないキーで打っている 羅馬字入力事始哉
1725 島民が帰った村は神が待ち墓が位牌が待つ埜古呂島
1726 「北海道が舞台になってる本ない?」文庫一冊旅行鞄に
1727 ヘラヤガラ、黄色い竜の胤し子(に似たもの)が珊瑚の林泳いでいます
1728 いろいろなことどうしたらいいかわからない軒先に降る雨の雫よ
1729 瀕死なのは海か私か まやかしでさえありえない今日
1730 黄金の油凪ではありえない 瀕死の海の穏やかな顔
1731 完璧に停止している何もかも この苛々はそのせいなのだ
1732 タイタン 雨を降らせる海があり風を起こして飛ぶ宙がある 
1733 ホイヘンス降下してゆく風の音 地球に届く風の産声
1734 退屈な木曜日です午後三時 孔雀時計は宮廷で鳴る
1735 蜃気楼はるかに見えて春の海 海の真青を求めていたり
1736 明らかになればなるほど実体は淋しいばかりの夕暮である
1737 ネットにはネットの歌人がいるという 街の烏とお山の烏
1738 牡蠣舟の残骸のこす財田川 三架橋から見る冬の川
1739 しんとして雪降るような曇り空 薄柔らかな衛星タイタン
1740 北限の猿は追われていたりけり 青森、下北半島脇野沢村の猿
1741 野火止の朝靄のなか泳ぐ鴨 鴨が川面をたたく水音
1742 見知らない人の歌垣、篝火の火影が照らす歌垣の森
1743 湧水も小径もすでに消え絶えて蝶の行方もまた霧の中
1744 村人は何処の森の 銀色の茸も普通の茸も消える
1745 銀色の茸のありて愉しめど洞窟すでに彼を生やさず
1746 荒廃はなお魂に及ぶから タイタン画像の水の痕跡
1747 再びは帰らぬ海の丸木舟 月の小舟は雲の間に消ゆ
1748 原人はどこへ行ったか洞窟に描かれているのは唯未知の鳥
1749 意味もない不安なのかも漣がひたひたと今砂地を洗う
1750 水惑星僅かに歪みなお僅か自転の速度早まるという
1751 石積みの隙間を水と草が被いやがては水と草だけになる
1752 大いなる樹があり樹には魂が春の日向を流れるように
1753 「始まりは鳥が運んだ一粒の種」であったとナレーションに言う
1754 人混みの人をカウントする人の手に集って統計その2
1755 駅前の舗道に置かれたポックスにアンケート用紙が回収される
1756 GODZILLAなお地球のどこか海底の火口湖にその卵を産みつけ
1757 怪獣の足が通って行きました富士五湖でしょうかあの湖は
1758 従兄弟がねゴジラ映画の助監督をしておりました何本かですが
1759 「唯一人のみを除いたどなたでも」 さよならゴジラさらば怪獣
1760 TVではカサゴが大きな口を開け石野彩子さんの手で捌かれる
1761 魂に晩年は来て明日から柔軟体操はじめるという
1762 人生に幾つの闇があるのだろう たった一つの闇にも消える
1763 人間としての心が傷ついて傷つけられてゆく過程です
1764 何という言葉もなくて明ける年 被災している脳の中枢
1765 ナイアガラの滝が襲ってくるように高波が来る津波の映像
1766 沢山の高提灯が先導し三社祭の神輿が帰る
1767 浄瑠璃の三味は太棹 「守・破・離」というは芸の真髄
1768 人形といえども人形使いの太夫ほどある身丈心の丈も
1769 人形の手足幾つもぶら下がる古典芸能文楽の楽屋
1770 三色の幕が上がれば登場する世阿弥の語る花継ぐ面
1771 「千里が外も雲晴れて」能の本を書くこと世阿弥命也
1772 高貴なるという幾人か高みにあり群集は振る小さな旗を
1773 宮城に向かう人々掲げ持つ「天皇陛下萬歳」の旗
1774 一万人あまりの人が宮城に向かって歩き日の丸を振る
1775 晴れの日も雨の日もなく薄氷張る一月の水甕の水
1776 冬らしくなってストーブ赤々と大晦日まで後2日です
1777 スペインに大雪スリランカに津波 滾り始める冬の環礁
1778 微笑みの国にも津波襲うという 押し上げられて来る水位線
1779 疎外感満ちて夕日の校舍裏 校内マラソン大会終る
1780 否定する人の多さが変わらない喫水線を越えることなく
1781 半島と孤島の間に隠岐の島、西ノ島ありて櫂流れつく
1782 空海の命日ゆえに京都では東寺に師走の市が立ちます
1783 何もない多分何も無い毎日 でもその中に私がいる
1784 川岸に茶色い馬の数頭が水を飲むらし雲湧く村に
1785 野生馬もやがて捕われ牧畜や農耕の具として生きる一生
1786 草原は穏やかに暮れ穏やかに夜の帳にすべてをつつむ
1787 草原を流れる水の一筋が仔馬養い人の子養う
1788 連れ帰る馬の一頭まだ乳を飲みたがってる子馬であれば
1789 野生馬を追う青年の手の長い紐つきの棒 犬獲りを思い出す
1790 草原に白い羊が群れていてそこがモンゴルだろうと思う
1791 「悲しい人生」と誰かが呟いて始まる映画 米国の映画
1792 退屈といえば退屈日曜の午後も見ているwowowの映画
1793 幸福の白い梟 北国の森の泉を囲む樹の洞
1794 絞り込み検索をして犯人を唯一点に追い詰めてゆく
1795 日々何もないのに書く日記何もないから書けるのだろう
1796 ささやかな暮らしはさらにささやかに 定率減税廃止の方向
1797 初めから無かったものは失ったとは言わないわけであって産土の
1798 失った一つの心思うとき遠い地震の二ュースが終る
1799 流星群見ることもなく眠れば 朝焼けの空を二つに切りゆくジェット機
1800 震度5強 北海道でまた地震 飛行機雲が空を分けた日
1801 新月で10日後はもうChristmas 2005年の陽もまた昇る
1802 氷雨でもない雨が降り木蓮の蕾が開く不思議な師走
1803 片隅に投げ出されている<私>の命名欄の無限空白
1804 永遠に書かない人か永遠に書けない人か私の場合
1805 大切に大切に大切に御身大切に 過ぎてゆ日の夢になるまで
1806 恐ろしい夢だけでなくでも幸福な夢でも明日は警告される
1807 暖かい日々が続いて幸福な日々も続いて忘れてしまう
1808 どんな奇病かとモザイク病の葉かと 失えば時間は大事
1809 元はと言えばあの悪夢 起きた時は蛻の殻
1810 気がつけぱのっぺらぼうの今日の冬景色 いつのまにか
1811 鰐だったらどうだろう鰐皮の無い鰐になったら
1812 一枚ずつそしてふわっと剥がれて 肉体が散逸した
1813 あの感じは忘れられない ホラー映画よりも怖かった
1814 はらはらとばさばさと剥がれて落ちる そんな怖い夢を見た
1815 昨日がなく明日がなくて今もない耀く冬の空のオリオン
1816 絵葉書を買って来ました「炎舞」です上村松篁の「白い孔雀」も
1817 シチュエーションは十分暗いせめて心は明るく なるほど
1818 素裸の木々に電飾施して夜には灯る冬の街路樹 
1819 野火止はまだ秋の色 黄金色の秋 素裸の木と黄金纏う木と
1820 赤手蟹なるほど確かに手が赤い 満月なれば子を産む儀式
1821 別人の可能性ではなく別人 見知らぬ二人分の骨と判明
1822 開戦の日でレノンの命日でそしてどちらも忘れ去られて
1823 水曜日午後零時半睡魔あり 小春日和のカノンとジーグ
1824 書くこともないのに書いている日記 苺の莟ふくらむ小春
1825 曇り日の土曜の午後の天気図にコサックダンスする冬将軍
1826 ガラの言う宝石よりも美しい麺麭一欠けら春の晩餐
1827 究極のシュールは写実であるというダリの直感的なパンの絵
1828 しんしんと雪降り積もる雪の夜 赤穂浪士の討ち入りの夜
1829 過去ログが速く流れてゆけばよい速(と)く速く流れゆけよ過去ログ
1830 目前の死が急がせて1200点の作品群が生まれる
1831 鉛筆の素朴な、いえ巧緻な一筆描きのクレーの天使
1832 逃げるしかない人生があることを酸漿色の冬の夕暮れ
1833 閂(かんぬき)のかかった門の中に降る落葉の中にひきこもる蝦蟇
1834 最近見たニュースの中であの人の言葉がそのまま語られていた
1835 熱っぽくだるい終日 団栗も気づかぬうちに落ちてこの秋
1836 「冬将軍」突然消えてつまらない 「冬将軍」の助命嘆願
1837 壊れたら壊れたままでそのままで 過ぎゆくものは過ぎゆくままに
1838 NHKの天気予報に「冬将軍」来たりて準備体操をする
1839 「冬将軍」まだまだ馬に跨れず 準備体操している画面
1840 深まった秋の徴のような雲 黄昏なればこの国の空
1841 ほろ苦きこの蕗、佃煮にしてもどうにも煮詰めきれない短歌
1842 「両親を殺した」  ミステリー終了次第ニュース始まる
1843 退屈な午後は古畑任三郎 再放送であればなおよく
1844 明確に似ている点を追うならば動機に至る致死痕がある
1845 犯人は確かに特定されたがり発信されてゆく点と線
1846 ライブラリー探ってみれば明らかに殺意の動機、受信履歴に
1847 犯人は必ず何かをミスるもの 再現される事件の経過
1848 切り口がいよいよ鋭利になってゆく立派な喜劇から悲劇まで
1849 古畑が演ってみせるよ切っ先も鋭き刃の真剣白羽取り
1850 甲羅干し甲羅を洗う石亀も 勤労感謝の日の亀の池
1851 混沌と地底にマグマある時も湖の色考えている
1852 レイアウト崩れていって神さまも悪魔も今は眺めるだけで
1853 残虐も非道も全て許される 許されるものとニュースが語る
1854 戦争のニュースが世界を駆け巡る ドラマを映画を封じてみても
1855 アメリカの猟奇映画のような事件 その足元を濡らす滴り
1856 竜巻が三百棟を壊すのも日本のことと思われなかった
1857 アザラシも鯨も日本の川泳ぎ 越前水母が黒潮に入り
1858 そういえば異常発生していたね蝉の脱がら舗道に屋根に
1859 春頃は私たちにも災難が襲っていたよと鶏も来て
1860 牡丹も茄子も兎も猫も豆の花も御舟が描けば御舟の心
1861 こんなにも晴れ上がる空  酷いまでではなく普通に綺麗に
1862 東京はまだ暖かい日曜の午後で冬薔薇小さく咲いて
1863 三匹の猫は二匹となり残る木枯らし2号が吹き降ろす朝
1864 一年の後に逢おうと約束し一年後の風の結界
1865 遠い遠い星座の絵本に光る星 等間隔に瞬くツリー
1866 すり抜けてゆく風だったこともある何時より生えし木の根、草の根
1867 もう一歩さらに一歩を踏み込めば引き返すことあたわざる闇
1868 とある日の風であったか春の日の夢であったかすれ違う影
1869 一歩歩けばガチャリガチャリ頸木の音か足枷の音か
1870 もし私が麒麟でも鳩ても梟でもなければ 私は自由であっただろうか
1871 さてさよならをしよう暫く この世のことを埋めに行こう
1872 秋の陽がためらうように翳る空 白鳥がいま海峡越える
1873 華やかな宴の後のシンプルなさびしさにも似て音楽終る
1874 永遠の憧れとして存在する 白い孔雀であった火の鳥
1875 立錐の余地無く配置されているドミノ倒しのドミノの不安
1876 鮮やかに紅葉していた花水木まばらとなって冬の散歩道
1877 芙蓉から山茶花までの推移みる白く仄かに香る垣根に
1878 クーデター起これば蔦の絡む窓 蔦絡むまま朽ち果てるがよく
1879 六文字のメールに写真添付するナビ機能付きケータイの惨
1880 つむじ風お前が這った草原の何を攫って舞い上がる風
1881 襲われてしまえば終り竜巻に 「上から襲ってくるのが竜巻」 
1882 虚しさの理由が解れば虚しさの半分くらいは消えるだろうか
1883 雨の日の車道の水を跳ねる音 今日また一人子供が死んだ..
1884 死者多き年なり春を待たずまた雪の津軽へ二人で行こう
1885 備長炭入ても跳ねるトルマリン入れても跳ねる金魚警報
1886 「良心」は消えて兵器が登場する最終兵器ライス長官
1887 ある時はただそれだけであることが虚しく思えた日もあったのに
1888 私の私による私のためだけの歌、笹の葉の舟
1889 星月のさししろしめす空の下 黄金の葉の散り敷く季節
1890 さみどりにひかりあふれていつのひかうたのわかれを
1891 後鳥羽院御製に続き 横雲の空の景色を 良経の詞書にも見るを
1892 昨日知る歌の秘密を 藤原定家の横雲の空の歌 先だって家隆の歌
1893 星々が見棄てた空に ただ満ちる雲の絢爛
1894 夜空にはもうシリウスもオリオンさえも姿を見せない 冬が来たのに
1895 夜明けには啄ばむ雀たちの声 今ではそれも聴こえなくなり
1896 山際を明るく染めていた夕陽も見えなくなり月の光りも見えなくなった
1897 音楽が聴こえない音楽が聴こえない いつからか
1898 死の町になってしまったファルージャを最後に 去ってゆくパウエル氏
1899 私の歌は日記でしかなくてそれ以上でもそれ以下でもなく
1900 本当のことも書けないでも嘘は書きたくないWEB日記の曖昧の靄
1901 もっこりとふくらむ鴨が水を掻く 冬が来ている野火止用水
1902 オレンジの飛行機雲と星と月 午前六時の東京の空
1903 ファルージャの総攻撃も支持すると小泉純一郎氏は語る
1904 笛を吹く男に貌がないことも見えない 後ろ姿を追えば
1905 私たちがんじがらめにされながら抗う力も奪われながら
1906 胎動も微動もなくて滾る熱 空白域の直下に溜まる
1907 白い月、白い金星、白い心 2004年の日本の秋
1908 日本を戦場にする首相でも或いはだからか支持率上がる
1909 作中の二重構造 作者とか作中主体の着ぐるみの熊
1910 美しい三日月の舟浮かぶ空 木立の影の透ける朝の
1911 変わり果てた姿になって 少しずつ土嚢積まれて水の引く村
1912 逆説と皮肉に満ちた一章を読んでいました「アメリカ日和」
1913 ひりひりと誰かが告発するのだろう飛蝗が地球を覆う夏の日
1914 そしてその理由はどんなわけがあり或いはなくて切断の首
1915 やがて死はその足元に這うだろう貴方や私のこの足元に
1916 子犬の生よりも軽いという生の相対死観の真実の位置
1917 そうではなくもしも自分の嗤いならその嘲笑に地球は乾く
1918 自分ではなくて他者を詠っているんだね他者の傍観、軽視の中の死
1919 馬鹿笑いされながら死ぬ気分とは嵯峨直樹氏の詩を読みながら
1920 試練につぐ試練につぐ試練につぐ試練 永久被災のパンドラの函
1921 残酷な性剥き出しにして過ぎる 一本の川そこを過ぎゆく
1922 されど川は水嵩を増し抜けゆけりその本来の姿のままに
1923 タイミング悪く語れば非難あれ 土砂災害の土砂の言い分
1924 濁流と呼ばれる水が突き刺さる濁れる川の水底の村
1925 すぐそこに今手が届くそのそこにあなたの影が角を曲がった
1926 一揺れで覆すのが天然の自然の性質で本来の姿
1927 見過ごしているはずがないから見逃してあげているのねあの人らしく
1928 日本ではまず同胞に殺される 愚か者よと切り捨てられる
1929 生きていることが淋しく辛い日は賀茂茄子の味噌田楽でも如何
1930 ブッシュ氏の再選決る夜の月 東の空の黄なる半月
1931 ブッシュ氏の勝利宣言も真近くて生暖かい晩秋である
1932 恐ろしい時代が来るという気がする罅割れている時代の背中
1933 心地よく街を吹く風天国はこの世にあると風に吹かれて
1934 楽天の夢は叶って平泉黄金郷の夢をまた見る
1935 顎鬚に白さ目だってビンラーディン 誰に向かってか話し始める
1936 「証生」は生の証と青年の母の語る日晒された首
1937 言の葉に言霊こもると猶思う身をもって証かす明らかにする
1938 空を飛ぶ鯨を見ない編隊を組んだ雁金部隊も見ない
1939 母さんに似てるねそんな器用さも纏ってゆく髪の流れも
1940 アジア系男性の遺体発見と 未明の空を過ぎる遠雷
1941 映すのはやめて下さい被災者の一人は疲れた明日の私
1942 ふらふらと歩いていたら何故悪い 無防備は悪といつからなりぬ
1943 「待っててね、待っててね」強い強い強い男たちの優しい言葉
1944 諦めてしまえば終わり二歳児が教えた無垢のしなやかな力
1945 情報は二転三転しているが香田証生、生命証して
1946 蜜蜂の目覚めはいつも静かだが時々死んでいることもある
1947 穏やかで何もない日の何もなさ 今朝、山茶花が零れ始めた
1948 憂うつなのは世界中の時計が止まったせいじゃない
1949 海を見る覚城院の一隅に在りし都の花零れ咲く
1950 鞆の浦、福山、鷲羽、仙酔島 流され公卿七人の戯歌
1951 廻船の航路はとだえ常夜燈、港に遺る 三国に鞆に
1952 海上を西に東に往来し 北前船は夢運ぶ船でありしか
1953 殺されて投げ出されている満月の夜選ばれた生贄として
1954 いつだって笑い飛ばしてしまえたら だからって何も変わらず
1955 明日というのはどこにあるのだろう どこにもあるはずもなくて秋です
1956 奇跡の終わりを告げて光りが消えてゆく
1957 執拗に狙って向ける銃口の先にいったい何があるのか
1958 包む毛布、担架、青いシート、照明灯 生と死がせめぎ合う
1959 人間はこんなこともできるのか暗闇の中光り在る所
1960 生きていた!!落石と土砂の重なる岩の真下で
1961 日本の過疎を襲った大地震 過密を襲う日もカラス啼く
1962 病いの時は病いに任せ死の時は死に任せ 出来たらねそれは
1963 終わりなき旅の始まり良寛の手紙の中の一節思う
1964 教室に人集っている何の集りかと見れば短歌の集り
1965 新幹線車両トキ325号 ニッポニア・ニッポン乗客ヲマモリシス
1966 全身でその衝撃を受け止めて新幹線「とき」横たわる
1967 心身ニ血ガメグラナイソンナヒハ心筋虚血ノ禽デノミアル
1968 震度6強 地震が襲う天心が断層を切る月の引力
1969 幼い日見た映像の大地震 道の亀裂に落ちた人たち
1970 快晴の空の下にも泥土とか裂け目があって見る鰯雲
1971 不確かな月の引力、半月は地球を切断する磁気送る
1972 (遠くまで飛べないだろうか)海深くある日思った<天使の翼> 
1973 半月は置き去りになる不確かな記憶のように置き去りになる
1974 何もせず何もできない一生がまだもう少し続くのだろう
1975 モノクロの画面と静かなナレーション「突然炎のごとく」死は来る
1976 画面ではジャンヌ・モローが微笑んで車と共に沼に沈んだ
1977 濁流にのまれていった家のことあのあたりと指す人を見ている
1978 神様に語りかけても神様はきっとお留守でこざいませうね
1979 その声に拒否されていることもありダウンロードは叶わざりしよ
1980 アクセスが集中する時アクセスの中心にある一つの言葉
1981 雨傘はもう要りません私の心を隠す傘はないから
1982 最終の戦いの日に雨降れば傘の花咲く雨の球場
1983 傘さして見ている川の泪橋 落葉病葉渦巻き流れ
1984 安曇野の月にかかった暈だとか富士の傘雲を愛した人に
1985 流星のような驟雨の洗礼を受けて降り立つ折笠千秋
1986 大雨か濡れてならない雨なのか傘をさそうよ尾鷲の傘を
1987 吊り革がゆっくり揺れて吊り革の先に透明傘が一本
1988 台風は蜥蜴という名と知りました昨日伊波さんの日記で
1989 枇杷の木にケサランバサラン晴れた日の富士に笠雲 優しさは嘘
1990 暗闇に燈るランプと月の暈 水晶宮に降る秋の雨
1991 落葉あり おまえが散って明かるくなる 木々の根方にただ降りしずめ
1992 いっそもう蛙にでもなっておしまい いっそもうこの世の果てへ行っておしまい
1993 どこでもないどこか誰もいないどこか 魂だけで生きられたなら
1994 白孔雀の子育てこそは忙しい尾羽の端にも気を遣わねば
1995 レミングを追って飛びます白ふくろう雛は洞で餌を待ってます
1996 目も開かない郭公の子が駒鳥の卵を落とす駒鳥の巣で
1997 白鳥は嘴汚し胸汚し大飛行する旅に備える
1998 群れをなす白鳥がいて湖は月光に濡れ狭霧に濡れる
1999 湖では泳ぐばかりではありません速さを合わせ滑走もする
2000 浮き巣には子どもが餌を待っているカイツブリには暇も非ず
祥  * 『倉庫・混:白鳥座』 * 02:36 * - * -

白鳥座 2786首版 3-3

2001 子育てをするには派手では危険だと雌の野雁は薄い茶羽色
2002 正常で普通であってそれゆえに悪と思えり悪であらんと
2003 されどまた狂気などにも興味はない 綺麗な玩具、夢の白鳥
2004 美しいもの以外には興味がない ノイシュバンシュタイン、冬の白鳥
2005 貝殻の中には夢と後悔と潮騒に似た夜の音楽
2006 千年の血のつながりを疎んじた私の何が反応している
2007 瀬戸大橋渡ってゆけば私の何かが疼く 紫紺の島影
2008 今すごくゆっくりゆっくり揺れている遠い地震があったのだろう
2009 「一期は夢よただ狂え」狂いて死せる宅間守か
2010 悲しみを悲しみとして生きてゆく素直に生きて縊られる鶏
2011 ゆっくりと俯瞰してゆく鳥の眼の視野の外なる彼岸の桜
2012 虚しさもいかがわしさも同義語に思えて来たり動悸する如
2013 目に映ることのいろいろ目にしたままこの絶望の世界の外へ
2014 知ってます?おけらの花が咲いてます万葉植物園の陽だまり
2015 草炎える不知火炎える野分来て神無月の真輝く赤
2016 空中にプールを描く親子にも雨降り続く トタン屋根にも
2017 ワールドカップ、オマーン戦は延々と続いて最前線の
2018 日暮れはもうそこに来ているミッキーとプルートの時間始まる
2019 さよならを練習すればさよならは永遠となるモニターの零
2020 偶然の一つであれば私たち羅列されたる数字2・4
2021 踏切を渡れば海で階段を上れば駅でその下が川、架橋駅
2022 恐竜の痕跡こそが大切と毟り取られる鳥族の羽根
2023 静岡県石廊崎では67,7m、生温かい風渦巻く東京
2024 いつもは平手で今回は拳で殴る台風22号 
2025 どうしても≪続きを読む≫が消えませんいったいどうしたらよいのでしょう
2026 おそらくはそこにはいないあの人に 二度と逢えない胡弓の楽に
2027 今日までの晴天となる空にして下弦の月のかかる中空
2028 失ったものは言葉や物じゃない燃えていたのは火鼠の皮衣
2029 何事もなく過ぎたわけじゃない何事もない毎日を望んだ狐
2030 細心の注意を払って生きない昨日生まれた月の繊さで
2031 曇り空また台風が発生し南洋上蛇行しながら
2032 雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨 甍に軒に私に降る
2033 あの人の心がどこかへ行った日の遠い火の色の曼殊沙華
2034 飢餓線上這ってゆく虫一列になって冬へと向かって歩く
2035 ゆっくりとレールは別れ海に入る 船は入り江に生簀を運ぶ
2036 気がつけばもう十月で閉じられた頁のように私がいる
2037 人は死ぬ必ず死ぬと教えられ 姫神、森の中にて死せり
2038 透明な青の世界に秋の月 星も瞬く夜明けであった  
2039 台風が縦断してゆく列島の無月の空によしなしごとを
2040 私の歌ならいつでもどこにでも自由に転載してくださいな
2041 「転載を禁じます」って紹介をしたいと思ったページの隅に
2042 朱の回廊、水の回廊 海に浮き水鳥のごと羽を広げて
2043 琵琶法師哀れを語る厳島 社殿冠水して神無月
2044 雨でした雨のさなかの夕ぐれを赤いバイクが角を曲がって
2045 時々は青空もみえた曇り空 次第に雲が厚くなってゆく
2046 火の山河、水の山河を渡りつつ ニッポニア・ニッポン滅びてゆくも
2047 ありがちな脚本だけど伝説の曲が流れて涼しいラスト
2048 存在という不可思議の芒野を流れる川の岸辺の家族
2049 幾度目の拒否を経験するマウス悲しみらしき青の点滅
2050 いつだって置き去りになる石ならばいっそ知らせよ石塊の重さ
2051 回廊を御柱を打つ波があり寄せくるときも青き潮騒
2052 秋は好き秋に生まれた人といる彼岸の風のように儚く
2053 鬱熱が潜熱となり気化熱となりゆくまでに滴る通草(あけび)
2054 アクチュアリティとリアリティは違うと養老孟司氏がTV画面の中にて語る
2055 黙示録の頁を捲る風があり今ほろほろと崩れゆく塔
2056 海(かい)という名前の猫の本を読む海と子猫の海辺の日記
2057 小紫、紫式部の園芸種  野火止の水ゆるやかな秋
2058 沈黙に似つかわしくない夜だから昔話をしてみたばかり
2059 砂を吐く浅蜊のように砂を吐く もっと美味しく食べてください
2060 彼岸花咲く野火止の土手にして子猫の生まれた秋の日である
2061 棚田には棚田の景色見えながら遠い夕やけ雲も映すよ
2062 川底に無数の卵産み落とし黄金の鯉流れてゆけり
2063 少しずつ時間を錯覚してゆくよ 五分遅れの時計のように
2064 主語の無い世界に生きていますから雲と霞と消える煙硝
2065 大阪と福岡拘置所に於いて死刑執行同日二人
2066 花は葉を葉は花を恋う彼岸花 泥色の稚魚泳ぐ野火止
2067 十五歳少年の行く遍路道 雨の宇和島を過ぎて讃岐へ
2068 「思川」という川の橋 その橋が投下地点と特定される
2069 追いつめて追いつめられて草の原 放り出された二つの心
2070 火柱となった心が炎えるから 鎮め給えな海を這う龍
2071 荒れた野の向こうに木立 木立の向こうに青空がある
2072 曼珠沙華夕べの道に灯るのは 赤々と咲き赤々と死す
2073 さよならと手を振っていた母だった永遠の別れになると知ってた
2074 丸亀に多度津に京極、宇和島に伊達 都に遠き流離の心
2075 いずれわれら婆裟羅の裔の萩、桔梗 吹く風に萎え降る雨に散れ
2076 海沿いの町が故郷 萩、すすき、彼岸花咲く丹尾の城跡
2077 亡くなった人の日記にハーブと本 花と大きな猫とオレンジ
2078 列島に猛烈な風吹き付けて増幅された何かも襲う
2079 津波来るという警報に醒まされる逆流をする川を見た人
2080 偶蹄目、牛科ミミナガヤギのこと母の命日だったあの日の
2081 堪えかねて噴く火の色の美しさ千年神の水を湛えて
2082 満ち潮は高潮となり風孕み月が引きゆく海の高鳴り
2083 栗に似て栗より大きい滑らかな殻と木の実が落ちていました
2084 マラトンの丘駆け抜ける選手団 希臘の青の澄みゆく時間
2085 発酵を待つ詩やパン種や葡萄樽  驟雨の後に光る雨粒
2086 失って滅びていつか消えてゆくそれでも人は夢見るさくら
2087 始まりも終わりも知らず生きていた知らないことが強さであった
2088 火祭りの写真をどうもありがとう篝火はまだ燃えていますか
2089 せせらぎの音聴きながら歩く道 木下闇をゆく水の音
2090 紫蘇、茗荷、山葵、シシトウ、生姜など夏の終りの薄闇の胃腑
2091 やがて死がそこにひっそり掛けるから古い木椅子は木洩れ日の中
2092 みんみんがつくつくぼうしが鳴き交わす晩夏になれば晩夏の心
2093 九月になったら私は何をするだろう九月になればチェホフを読むよ
2094 曇り日が好きな黄金色の鯉 橋のたもとの澱みの中の
2095 向日葵の種と蜜蜂 太陽に背いて墜ちたイカルスの裔
2096 立秋も過ぎて八月十三日 残暑お見舞い申し上げます
2097 まどろんでめざめる朝の白い蜜 季節はずれの鶯の声
2098 頼るものないとき頼る言の葉と今宵生まれた繊い三日月
2099 キスツス=私は明日死ぬだろう 8月8日の花言葉です
2100 雨の日は飴細工師の小父さんも兎も犬も鳩もお休み
2101 炎える樹は炎える火柱、火柱の尖端にして炎の骸
2102 光る魚一網打尽にする網が見つからなくて月光遊魚
2103 戦争は間違いだった間違いで滅んだ国の亡霊の夏
2104 空白の時が流れて七月の海に浮かんだ島影一つ
2105 アボカドもキウイも伸びて七月の朝は紫紺の花も開いて
2106 ネアンデル渓谷 遺伝子のネアンデルタール人の故郷
2107 限りなくレイアウト崩れゆき私の歌は消えてしまった
2108 鶏の頸締め付けているあの声だ高音で歌うのは疲れるだろう
2109 夏空の乳白色の雲の舟ローラースケートしているピエロ
2110 どれ程の取引をして日本はこの決定を得たのでしょうか
2111 雷雲は遠くへ去って行きました あの大雨は嘘のようです
2112 天邪鬼踏み据えられても逆らって逆らう程に怒りに触れる
2113 WEBページ消えて半身不随に似て 水栽培のアボカド林
2114 極端と極端会えば一点に還元されるヤコブの原理
2115 富士に雪、新潟三条には豪雨そして梅雨明け今日の東京
2116 七月の金魚が水に眠る午後 水はさゆらぐ光りの窓辺
2117 天からは一瞬止んだだけの雨 日本の行方まだ雨の中
2118 約束の海の歌です遠い日の記憶のように光る海です
2119 ペテン師のペテンの語源は知らないが逃げ水という夏の陽炎
2120 無理解は悪。 『沖縄ノ骨』の作者がそう語る 珊瑚の白い骨と混じって
2121 大切な一日のため雨よ降れ しずかにひらいてゆく雨の薔薇
2122 晴れの日も傘の用意は忘れずに梅雨は終ってからが本番
2123 アリゲーターブルーアリゲーター深夜に奔る風を見つけた
2124 生き残る人ゆえ覚悟の足りなさを責められている鬱熱の森
2125 愚かしいことと思えてやめました二足歩行に戻る人鳥類
2126 戦闘色消えたらしくて野を奔る王蟲の赤も一夜にて消ゆ
2127 少しずつ気道を確保するようにゆっくり と夜の帳は下りぬ
2128 約束の虹がどこかに立つという 探査衛星カッシーニの旅
2129 眠くなる 最後は眠くなって死ぬのだろうか 鳥たちも
2130 仰ぎ見る文月の空の流れ星 戦場に人は撃たれていたり
2131 雷雲にまけてはいない入道雲 青い薔薇咲く2004年夏
2132 少しずつ眠るためまた生きるため真夏の夢の浅瀬を渡る
2133 川底にいても蛍は光るという 弟の手から姉へと蛍
2134 拒否よりも手をさしのべてみる勇気 蔓性植物であろう何かも
2135 ライラック苦しきことを忘れんと買い求めくる水無月の花
2136 天空を走る列車に名づけよう 薔薇星雲を横切る列車
2137 「死に至る病」ではない憂鬱というのでもない 雨の気配か
2138 退屈の病に私は侵される 病であるから治るのだろう
2139 山椒魚、山椒魚って可愛いね 石を枕にうたたねの夢
2140 誰かが歌い始めても夜は明けないかもしれないが
2141 雨のない六月だった台風が壊していった日除けを替える
2142 桜桃忌すぎて三日の夕ぐれは哀しきものの見ゆる夕ぐれ
2143 さみしくて嵐が去った空を見る遠い山野に棲む獣たち
2144 なんとなく批判をされているような夏来て白い太陽の下
2145 一匹の鼠が町を走り出し真昼の雲が白く輝く
2146 多分もう私はこれでお終いと紫陽花の青、紫陽花の雨
2147 汚された時間のようにそこにある削除できない何かのように
2148 夏空に雲一つなき桜桃忌 台風はまだ東シナ海
2149 前線は活発ならず空は晴れ桜桃の実もつややかに生り
2150 逝く人があれば生まれる人があり生誕祭となる桜桃忌
2151 O音の優雅さ雨の桜桃忌、鴎外忌にも驟雨来て去れ
2152 さみと゜りの夏来て雨の桜桃忌 さくらんぼのようなあなたの
2153 眠ろうとしても何だか眠れない 普通に戦争している時代
2154 水無月の鬱をかかえて紫陽花の半球すでに黄昏れてゆく
2155 夕暮れに風が通れば振り向けばあなたの背中見えた気がする
2156 水色の海と空とのあわいから聴こえる音をタクトにのせて
2157 隙間から一瞬見えた愛に似たものが欲しくて殺してしまう
2158 心肺に貝殻虫が棲みついて殺してしまう少女がひとり
2159 誰にでもある空洞に鳥を飼う 傷を負ってる鳥の目の青
2160 鳥籠に鳥を飼ったら青空の果てを見せてはいけないという
2161 地の底につづく階段下りてゆく黄泉とは蛆の湧く土の底
2162 窒息をするより前に死んでいた 狭い隙間も埋められていた
2163 新鮮な生みたて卵のような黄の花芯もゆれて梔子の朝
2164 家事をして運動をしてよく眠る さよなら私の夢に逢う獏
2165 水無月の雨降る雨は心にもこの素晴しい世界の片隅
2166 皮肉にも時間は流れ蛍沢、蛍田という地名も消える
2167 満月が悪かったんだ射す月のひかりの中の緑色の蝶
2168 コメントは父の言葉で語られて新聞記者の目で綴られて
2169 同級生に切られて小6の女児が死亡とテロップ流れる
2170 南風吹く東京の日暮どき 檸檬のような月も浮かんで
2171 ダービーを制したキングカメハメハ 府中の空に浮かぶ半月
2172 まだ熱が引かないけれどそのせいで見えるのかしら歪んだ檸檬
2173 名も忘れ一人の男が虎になる中島敦の小説思う
2174 感覚の教会に鳴る釣鐘や天井画など五月の空に
2175 水色の尾長が飛んで上水に夏来る 夏の涼しさの青
2176 ゴミからもアートは作れ工房の中、鎮座するプラスティック蛙
2177 熱が出る前の症状 動悸して片腕片肺酸っぱくなって
2178 羊水の中から始る絵日記のような万智さんの「プーさんの鼻」
2179 戦争が始る時と終る時 雨は烈しく降るゆえ儚
2180 サッチモの声が聴こえたサッチモは「この素晴しい世界」と歌う
2181 紫陽花の青の花火のひらく朝 小さく青く雨の紫陽花
2182 何もかも重くなってる何もかも そう何もかも何もかも重い
2183 突然にカミキリムシが這い出して紙切るという噛み切る勿れ
2184 あきらかに社会的適合欠いている天道虫は星で分けられ
2185 関わりもなく生きている淋しさに 美しいもの峠を行くも
2186 石塊の僅かばかりの土にさえ咲く紫の花のひとひら
2187 ここに咲く花の苞衣の中に充ち花の力となる何ものか
2188 こんなにも暑い日なのにあのひとは痩せた分だけ寒いと言って
2189 スカーフを帽子代わりに巻いてゆくと 締め付けられる痛さがないと
2190 猫さへも何かを感じていなくなり庭先はもう二匹の広場
2191 イラクでは毎日人が死んでいて殺害報告にも慣れる長官
2192 基本的に安否の確認などできず仰せのままに頷くばかり
2193 夕暮れの水の流れに沿ってゆく水の流れに運ばれてゆく
2194 春日井建、享年六十五歳の訃 一人の定家黄泉へ発つ夕
2195 白皙の詩人は一人旅立ちぬ皐月の空に発つ白い鳥
2196 脱落と脱出の違い知らぬままこの世の淵をさまよっている
2197 春の野の逃げ水、昼下がりの驟雨 夏には夏の烈しさに降る
2198 日曜の小川に沿った道でした 鴨も小鷺も帰った夏の
2199 香枦園、海と川との汽水には渦巻くものが見えて夏の日
2200 川沿いに歩いて下る散歩道 美術館までゆっくり歩く
2201 あの人はどうしているかと訊かれても訊かれなくても寂しい明日
2202 ポルトガルの洗濯女という風情 曇りのち晴れの空が青くて 
2203 空想と空想むすぶ接点に空の巣があり燕やすらう 
2204 台風に散らされなくてよかったね 台風はもう熱帯低気圧
2205 泥川に川魚かしら鯰かしら一瞬ゆれて再び沈む
2206 木々の影、魚の影も見えている 湖の岸近くの葦原
2207 葦の葉をのぼる天道虫のこと 蜘蛛の巣作り見ていたことも
2208 川鵜来て鳥の楽園伝説の円形の縛、縮めてゆきぬ
2209 遠く去る鳥には鳥の歌があり水没樹林に降る雨がある
2210 飛ぶ蝶の無数無声の映像の夕映えてゆく金の鱗粉
2211 鱗翅目、蝶や蛾にある鱗粉の身を守るため赦される毒
2212 六月のドナウデルタの葦原の水と光りと小さな魚影
2213 ペリカンが上昇気流に乗って飛ぶ 桃色ペリカン灰色ペリカン
2214 やがて陽はシュヴァルツヴァルトの森蔭に蒼い馬棲むその森蔭に
2215 断片は断片として断片の断片でしかない夢を夢見る
2216 墨色の壷の一に銀彩は隠れてしまう芒の穂波
2217 台風が近づいて雨、終日の雨に降られて空木の白が
2218 本能寺の変よりときは今にして田楽刺しになる心地する
2219 蒸し暑い夜には理科と算数を午前3時の3chで
2220 遠くから「暫」の声 暫くと声をかけたるものの見えなさ
2221 映像と詩も夢をみる 異次元の入り口に咲く一本の薔薇
2222 攻撃の背後にあった八割の支持を充たした奇妙な果実
2223 せっかくの自由も空しくなるわけを少年の目は見ていただろう
2224 金銭に代えられないというけれど金銭のこと量り難しも
2225 計算し演出し演じてみせヒトラーがヒトラーになる一つの過程
2226 ヒトラーのあの髪型の何分の一の狂気を分かつ私たち
2227 今日は雨 雨の中にいる幸福を感じているか葉裏の蝸牛
2228 日の国は火の国、赤く篝火が炎えて 望月に矢も放たれて
2229 地下深く深く堆積滞留し核を守っているマントルよ
2230 温泉は蔵王の含鉄釜の湯の湯の花の咲く蓬生のお湯
2231 汚れなくイノセントであるということの 初夏の空の
2232 春蝉が啼いていました新緑の萌える林の一本
2233 春蝉が啼く季、遠い日の夕べまどろむように沈む太陽
2234 なんとなく残骸めいた掲示板 桔梗咲く頃削除しましょう
2235 黄金色の麦藁帽子出荷する小さな町の小さな港
2236 鮮やかな血の色に染まる基督のメル・ギブソンの映画も完成
2237 私には見られないけれど意味はあるそのリアルには必要性が
2238 ある人は父をある人は母を亡くして母の日の雨
2239 今日の日が無事に過ぎたということの続きに咲いて深山苧環
2240 「右ゑちご左やまみち」道標の紫に猶暮れ惑う道
2241 塩倉に釘は使わず 塩運び塩を守って千国街道
2242 多分どの一首であっても同じこと一首は既に全体である
2243 大相撲夏場所がもう始ると 水面に光りさす隅田川
2244 非表示の選択あれば埋もれ木の埋もれるままに朽ちゆくもあれ
2245 フェルディナンド・フォン・ツェッペリン伯爵の飛行船 その中空の船
2246 虚しさのかぎりもなくて赤い月 明け方に見る皆既月食
2247 欠けてゆく月の黒紙魚、月の隈 銃身の色帯びてゆく夜
2248 七つの子歌いつつゆく「二十四の瞳」の中の岬の子供
2249 花水木はらはら散れば花筏 一期一会としたためよ歌
2250 言の葉の繁りて散りて五月雨 メイストームの過ぎてしばらく
2251 猫だって家出もするさ家出した猫が子猫を連れて帰るよ
2252 屋根裏に蛇の脱殻、雀の巣 鼬も出入りした穴の跡
2253 憂鬱に似た感情の夕まぐれ 気まぐれ気まま我儘の果て
2254 川原にも陽が射し石に蜆蝶 ナンジャモンジャの花咲いて夏
2255 東北に行ってみたいと思います角館とか太宰の金木
2256 夏の日に剪定鋏光らせて花咲く花の咲かせ方など
2257 いずこにか鋸菊が育つからもう枯れ始めているベンジャミン
2258 花壇にも教育主事は入り来たりタチツボスミレの谷の群落
2259 めひかりの眼の海の色誰だって海を釣り上げられない釣り人
2260 誰だって海を釣り上げることは出来ない 神が釣り糸垂れる夕暮れ
2261 雨の日の竜巻、晴れのつむじ風 何の尻尾か見えて日が没る
2262 竜巻は上から旋風は下からと解説されている連休二日目
2263 蚕豆が弾けて夏はもう間近 遠くでゆれている青い麦
2264 やわらかく弦の音から始って木管楽器が続くその後
2265 マーラーの『復活』を聴く演奏はルツェルン祝祭管弦楽団
2266 流木が打ち寄せられて来るように悲しい心の切片もまた
2267 妖艶な鐘馗空木の花が咲き 上水の夏始るらしき
2268 いつまでも若く美しくあらねばならぬと『火の鳥』の婆
2269 ファルージャは萌黄色に見える萌黄色の中の桃色の炎
2270 まだ青い小さい苺が二つ三つ四月下旬の涼しい朝
2271 眠くってだるくて疲れてしんどくてそんな日ばかりの春ではあった
2272 シマウマの後姿を見ています夕陽に向かって歩くシマウマ
2273 象がいてキリンがいて河馬がいて縞馬がいる 地球楽園伝説を継ぐ
2274 金太郎飴よく見ればみな違う顔 それぞれに泣きそれぞれに笑う
2275 春が逝く四月が終る蜜蜂の羽音が聴こえ蝶も生まれる
2276 薔薇も咲き守宮も硝子戸を這って迷宮の森ひらくこの朝
2277 竜川と書いてリョンチョン爆風に吹飛ばされた国境の町
2278 前近代ぬっと顔出す春の闇 火山性ガス噴き出す気配
2279 それぞれの中の戦争も終るから静かに頁閉じられてゆく
2280 大方は主義や主張にあらずして多分表情筋の迷走
2281 列島を寒波が襲う四月尽 春夜の夢に帰り紛れて
2282 イラクへはもう戻れないとアナン氏が 紅砂の海に埋まる部隊
2283 こんなにも殺風景になったわけ 紙風船のような黄のチューリップ
2284 国境の駅のある町壊滅する黒い地蜂が群れて飛ぶ朝
2285 すでにあるものなぞっているだけの危機という名の安逸の胡麻
2286 ニューサマーオレンジ、小夏、日向夏 柑橘系の夏が来ている
2287 宿題を残したままの20日間 風邪後遺症だるさがとれず
2288 黄の花が終れば次は白い花 小さな虫喰いだらけの絵本
2289 雨上がる林の道の腐葉土の中のドングリ芽を出す朝
2290 漆黒の腐葉土ありて金色の朝陽の中の辛夷、木蓮
2291 松毬や泰山木の実の集り 命果ててもなお生きるもの
2292 「自爆する男」画面の金の花 田島征三、木の実のアート
2293 地に落ちたヤシャブシ伊豆の海岸の岩に置かれて花咲く木の実
2294 椿咲く、椿の赤や白の花 渚の水を水盤として
2295 木の実って生命力の塊でゆえに滅びて後もつよくて
2296 今朝落ちた木の実のうすいやわらかい明日花咲くばかりの花胞
2297 海辺には打ち上げれた海草が遥かな時を伝えています
2298 知らされなければ知らないで今日の一日の画面の向こう
2299 なま物の命を運ぶ春の月 花水木咲き躑躅も咲いて
2300 突然に夏来るように最後の日 難読氏名の話題の続き
2301 魂には晩年 亦来る春の終る日の風もない日に散るリラの花
2302 でそれから誰が報道するのだろうそこに虐殺ある日の朝
2303 「揺るがない」大統領と風の墓地 遺体七百埋まるファルージャ
2304 花水木が咲きポピーが咲いているこの夕暮れの濁りゆく空
2305 湿気のない爽やかな日で見残した桜も咲いて今日の一日
2306 夕焼に染まって緋色の鳥となる熱帯雨林の鳥かと思う
2307 港から夕陽が見える金色の海に続いてゆく道がある
2308 薄闇に包まれながら目覚めたら昨日か今日か解らなくなる
2309 ほの甘き千枚漬けの千枚の襞に隠れている赤唐辛子
2310 長さんも弥七も逝って東京に四月の雪を降らせていって
2311 これが春これが四月の気温差か雨が上がれば欅の若葉
2312 折鶴蘭、ムラサキシキブ遅れ咲く薔薇の一輪雨の日の雨
2313 恐ろしい真実は唇が閉じたがって言えない 春浅く黄泉をゆく舟
2314 木苺と射干の花咲く裏道の水のほとりの羊歯にも降る雨
2315 朧月、卯月の空の月の暈 さくら花びら散りゆく刹那
2316 花ぴらはもう葉桜のやまざくら透ける翠の白い花びら
2317 孔雀はもう羽根をたたんだ月光の銀青色の夜が来る前に
2318 街空に煙たなびき消えゆけり卯月の木の芽さみどりの苗
2319 桜散る空掘川の河川敷 渡り鳥来て今年の春も
2320 川霧がたちこめていたのは冬の頃あの頃すでに鷺は来ていた
2321 雨の中咲いて仄かに匂う花 深夜零時に雨雲は去り
2322 紫木蓮、白木蓮が並び立つ白木蓮から零れて落ちる
2323 満開の桜が空に吸われてゆき吹雪となって散る地蔵堂
2324 風もなくお花見日和 今頃はアークも桜祭りの頃か
2325 晴れた朝詩人の誰がいなくてもさくらさくらと声低き歌
2326 花が咲く季節は花を雪の舞う季節は雪を月は見ている
2327 晴れた空が青かったから思い出す空の色
2328 川縁に桜が咲いて待っている春の終りの雨が降るのを
2329 夜になって雨 雨のなか走り去る時曳く雨の音
2330 バイパスを作ったというバイパスの管を通ってゆく舟がある
2331 白湯で服む薬のいくつほんとうの薬であるのか毒であるのか
2332 木蓮が茶色くなって枯れている春に三日の命もなくて
2333 明日はまた雨降るという三月の雪に変わってゆく夜の雨
2334 モビールのイルカが泳ぐモビールを動かす春の風があるから
2335 存在を主張している背表紙に別れを告げて今日の花びら
2336 アルヤバン日本も次に標的にしているというニュースの一文
2337 木蓮、辛夷、桜の莟 のんびりとした春の水曜
2338 東讃の屋島、西讃の観音寺おなじ四国のサヌカイト哉
2339 日本はテロと戦うということで警備の警官多数見かける
2340 混迷を深めているねバグダッド レジスタンスは激しさを増し
2341 なるようにしかならないのだし運なんだしって言って顰蹙を買う
2342 ある時は死にかけていた琉金も春を迎えた奇跡のようだ
2343 爛漫の春よ驕りの春であるよ昨日縊れた鳥もいた真昼
2344 賑わいの市に背を向け山麓の道の傾斜をゆっくり上ると
2345 山麓の南病棟、陽が当たり月も仄かに射してよいと言う
2346 満月は一昨日だったそういえば花のもとにて春死ぬ烏
2347 ぴったりと風がやんだね夕凪の夢のまどろみにも似たやすらかさ
2348 水際に風が流れて風がやむ海岸線に河口にカモメ
2349 洋燈に照らされている雪の日の硝子工房、運河のほとり
2350 混乱は全て収束する形 終息までは言えない形
2351 千年を眠るためには千年を眠れる言葉が必要であり
2352 中和する形としての一章を今からそこに書き加えます
2353 忘れているわけではないが忘れている他人事だった私にとって
2354 朴の葉に餅を包んで藁蘂でとじて村の社の天狗にしんじょ
2355 簡単にあなたも私も殺すだろう虐殺列島住人なれば
2356 鳥、卵、山積みになり棄てられて 殺して埋めてヒト科のヒトは 
2357 群像の絡んだ腕と腕と腕 乳白色の丸い眼球
2358 アポロンが追いかける時ダフネーの指が木の葉に変わるその時
2359 熊の仔は走る熊の親も走る 阿寒の冬は終ったらしい
2360 砂漠には優美なピューマ 一億二千万年前の猫
2361 雪の予報覆ってさて晴れのち雪のち大夕焼けの西空
2362 菜の花の芥子和えとかこの季節食べたくなって程よき季節
2363 満開の梅が誘って国立の谷保天神の座牛に逢いに
2364 午前三時 宙に無数の水の星 水汲み上げる滑車の音も
2365 雛の夜 火星に水とオポチュニティー 時の甘露を白酒として
2366 火星には確かに水があったという 地球に残る水の儚さ
2367 小雪舞う東京の春、今日もまた鷺は冷たい小川に立って
2368 いつのまにか中継は終っていた醒めない夢の中にまだいる
2369 朝のうち小雨ゆっくりと天気は回復すると言っていたのに
2370 テロップが流れるだけの死であってホーゼンフェルトの最後を思う
2371 宗鑑が庵を結ぶ一夜庵 室町幕府とゆかりの土地に
2372 港から夕陽が見える金色の海に続いてゆく道がある
2373 アーケード撤去されゆく柳町 財田川にも鷺が来ている
2374 木蓮がそして辛夷が咲くだろう 春ですあなたは死んではいけない
2375 三月は優しい季節しゃんしゃんと鈴を鳴らして神社の仔馬
2376 午前四時の幼児番組ゆっくりと精霊たちの揺らすぶらんこ
2377 月と星、離れ離れに西の空 軒に届くと思うばかりに
2378 まだ吹雪く空と天気図示す人 冬の最後の抵抗という
2379 北西の風つよく吹き東北はまだ氷点下の日もめぐるらし
2380 エメラルド・グリーンの果肉切り分けて春の空虚も切り分けてゆく
2381 カリフラワー、キャベツの仲間ではあるが脳葉に似て春の虚しさ
2382 霜焼けを起こした紫ブロッコリー 花の蕾を食べられてしまう
2383 殆どもう破滅を待っているような紫ブロッコリーのような夕闇
2384 そしてまたモスクワ時間を生きていて午後は一様に退屈である
2385 冬川を水が流れて水が去る 猫柳もう芽吹いていよう
2386 安部英あなたが無罪であるならば老いゆく時間も大切である
2387 一人でいい一人がいいと春の月 いつしか水に還った海月
2388 変わらない日常があり変わらない人がいるのに溺死する月
2389 物思うキカイであれば物思う 抒情というは何処のキカイ
2390 潰れてはいなくて、でもどこにも見当たらない そういう存在なのかもしれない
2391 みんなが行くという方には多分行かない 数が多すぎる
2392 書くこともない 七七を付け足し埋めている空白
2393 安静に 動けない人にはどうか別のsuggestionを
2394 文体の句切れ或いは句切れ無し 章句、文節、韻律の鷹 
2395 もう終りだという声がする雲は春 私は私でなくなっている
2396 野火止の鴨の平穏確かめて小さな橋のたもとを通る
2397 その他に何もなかった 毎日は機銃掃射がただ無いだけの
2398 曇り日の空は悲しい夜までも星もまばらで小さな星で
2399 湖の岸を周れば湖の向こうで見えた星も見えない
2400 鬱蒼と茂る森には白梟 煌く星を隠した森の
2401 春の日が菜の花飾る鶏舎にも。真珠のひかり宿す春の日
2402 薄闇に包まれながら目覚めたら昨日か今日か解らなくなる
2403 だんだんと機嫌が悪くなるような春一番が砂塵を上げて
2404 桃色の舌もつ貝がちろちろと覗っている町屋の厨
2405 スクレイピー、プリオン、ヤコブ、海綿が吸い取るだろうメタル・スポンジ
2406 伝統は確かに生きて生きのびてスポンジ脳に点る春の灯
2407 街空に煙たなびき消えゆけり吉野屋さんの牛丼も消え
2408 美しい茨木童子、日々荒みその片腕も綱に落とされ
2409 百円で売られるまでの暫くの歌集が歌集らしくある時
2410 光彩を放っているね移り気な忘恩の花ラナンキュラスよ
2411 息長く伝え伝える歴史です たった今始まったところです
2412 桶屋にもなれざりしかばビイドロや飴細工師らもなれないだろう
2413 柿の葉の鮨を食べたよ和歌山の海岸走る電車の中で
2414 霜柱踏んでみましたお隣の庭に繋がる草むらに立ち
2415 星の砂掬ってあげる結晶の雪の形の風に鳴る砂
2416 平和堂、平和公園、平和通り、どこまで続く日本の平和
2417 菱餅は山の旧家の慣わしの雛の節句の無礼講でも
2418 春だから白木蓮の花が咲き天に向かって祈りの形
2419 野原には春がすぐ来る土管とか地面に近い草の葉に来る
2420 筆に似て土筆、杉の子、春の花 菜の花そして大根の花
2421 フィレンツェへ、ベニスへ風の商人は巨万の富を積むフレスコ画
2422 封印は華やかに且つ軽やかに誰も知らない秘密の時間
2423 この舞台、いつかどこかで見たような記憶の島に漕ぎ出す小舟
2424 春までは持たない命だったからさまようのです冬蚊のように
2425 冬田には水凍るから月凍り心も凍る稲田の二月
2426 枕木にする栗の木は黄金沢の日当たる斜面の栗の木林に
2427 草分けの夫婦漫才の漫才師 市場の外れの二階の夫婦
2428 岬から入り江をめぐる道に咲くハマユウゆれて夏は来るらし
2429 名誉ある撤退という選択肢すでに焼かれて砂漠の戦争
2430 紋付の紋は九曜の日月の七曜越えた二つは死星
2431 八百屋にはタラの芽、蕨、フキノトウ 苦味ほろほろ今年の春の
2432 八雲立つ出雲の峰にかかる月 月が出ずれば隠れる獣
2433 黄金の山吹一重八重に咲く山路を行けば山路の黄金
2434 一片の雪の結晶、天上に生まれたままに降る北の国
2435 洋梨のジャムを一壜ヤマモモの壜も一壜、花梨は酒に
2436 浴槽に浮いた花びら桜湯の季節になればさくらの花の
2437 温厚な人が垣間見せる横顔に狂った王の徴、青痣
2438 泥の中きれいな花を咲かせても無意味無意味と蛙が騒ぐ
2439 蜜柑風呂、夏蜜柑の木のある庭の黄金色の蜜柑のお風呂
2440 蒸し器には竹の蒸篭とアルミ製蒸篭があってもちろん竹製
2441 メロンパン大好きだったあの人に持って行こうねお彼岸だから
2442 木綿とか絹ごしだとかお豆腐はやさしい繊維の名前がついて
2443 予想ではパドックにいる馬のうち唯一頭だけ抜け出すだろう
2444 何事も無かったことにして終る なお見解を異にする鯊
2445 慈しむ愛というのもあるんだね月に零れる蝋梅の花
2446 鳥、獣、雨の中なる十字路の樟の大樹に降る雨の音
2447 羊歯族の裏白の蔭、無限大 水を湛えて澄む羊歯の森
2448 白金耳焔に焼けばシャーレーの内に今宵の雪降りしきる
2449 既に死んでいたものが改めて死んでも何も不思議はない
2450 丈高き芒一本掃き流し銀彩の壷冷えてゆく冬
2451 こんなにも争う人と人と人 ベツレヘムには神の子の教会
2452 摩天楼犇く街を黒葡萄一房さげて茂吉が行くぞ
2453 大晦日というものらしい冷え冷えと冬らしい年の市
2454 先端にいたあの人が今どこにいるのかはいつも気になる
2455 青空で木枯らしも止み穏やかで 旧い映画の中の抱擁
2456 透き通る容器に入れて匿った 水より淡いウラヌスの卵
2457 明け方に雨は上ってイランでは夢の続きのような大地震
2458 ジャスダック、マザーズ&ヘラクレス 地平を僅か染める黎明
2459 薄曇る空に氷が生まれたら煙になったロンの命日
2460 富士山が林の向こうに見えた日の記憶の中の赤い日輪
2461 日常が集積すれば正確で緻密なカレンダーになるのか
2462 こんなにも退屈なのは午後五時の太陽がまだ青いせい
2463 冬の日は短く川も枯葉色 落葉のマントに包まれる蝦蟇
2464 置き忘れの文が一葉、冬木立 空を流れてゆく銀の星
2465 戦争の放棄を放棄するために派遣されるのだろう誰かも
2466 過去ログのどこへ消えたか解らない貴方の歌を探しています
2467 空を飛ぶ魔女がいるから猫だって空を飛びます或いは羊
2468 どんよりと空が曇れば藻の陰に尾鰭胸鰭隠して眠る
2469 紗や絽や羅、透ける衣を織れば夏 蛍も蝉も蜻蛉もいる
2470 91年湾岸戦争から12年 砂粒よりも小さく「ハンタイ」
2471 寒いから真紅の熾で暖めて霙のような雪降る前に
2472 回顧録の中の祖父たち降りしきる雪の中なる緑色の暈
2473 疾風のように再び戦争がそこに来ていて冬の稲妻
2474 ベケットは人間嫌い 変わり者 甥のフレディとはお友だち
2475 清王朝滅びて後の蟋蟀の手足不自由ならむ貴種なれば
2476 日の暮に橙色の月が昇るファラオのような黄金の月
2477 忘れたい何があるのだ忘れても忘れても追って来るのか
2478 青空に雲なく粉引に碧の茶 見えない雲が棚引いている
2479 孔雀を飼い鶴を飼うのも退屈な山の暮らしに倦いてだったか
2480 湖底には里村一つありましてダム干上がれば水車小屋の跡
2481 とめどなく太鼓は打たれとめどなく舞台の雪が降りしきる
2482 安定という幻がある限り 金太郎飴歪んでいても
2483 もう戻れない時間の中で燃える炎を見ている真昼
2484 ゆっくりと飽和状態ゆっくりと終りに向かう炎える草叢
2485 木の断片 素朴な十字架 雨の日は雨の洗礼ラーラのために
2486 書割かト書きのように月が出て夜汽車が向かっている無人駅
2487 誰も彼もみんなが死んでしまったら 焼け野原なら猶完璧に
2488 左手はいつも同じ音の繰り返し黄金の秋が来ていても
2489 音楽は途切れても囁く雨ブロッサム・デアリーみたいに
2490 偶然なんていくらでもある私がこの世に生まれたことも
2491 いつだって気むずかし屋のアルルカン 明日は天気になるのだろうか
2492 火喰鳥、花喰い鳥は梢離れ 雨期の沼地の森へ帰るよ
2493 私の金魚が仮死した日 花道引いてゆく船弁慶
2494 だとしても死者の手紙も届きます もうすぐ青い夜が来て
2495 結局のところいつか私も焼き場の煙 「煙」という名の猫もいました
2496 雪、霙すぎゆきし日の冬の雨 夜の香りやロシアの香り
2497 タイトルを入力するのも面倒な気分だけれど秋空の青さ
2498 厳島海に浮かんで潮満ちて潮引くまでのときを蕩う
2499 花が咲き実が生り花は花疲れ 曇り空から白い太陽
2500 野ざらしの石の仏よ微笑仏 誰が彫ったか夕焼けの道
2501 紫の花が咲いてる唐辛子もうすぐ五色の宝玉になる
2502 微生物よりもやさしく強力に水素が水に戻る力で
2503 月光の天心微かに翳らせて 帆船一艘隠す洞窟
2504 餅搗いて竜神様に供えます海に呑まれる船なきことを
2505 剥げ落ちた青の色彩その質感 少し混じって夕焼けの色
2506 蟷螂が振り立てている垂直の斧であるから折れやすき斧
2507 今日という日が終っても明日が来て野鼠水漬き日にも曝され
2508 鬱々と籠もる一日の終るころ祭りの山車が勢揃いする
2509 虚しさに襲われている秋の日は鷺も烏も見分け難くなる
2510 屋上より落下物ありと朝の掲示板 落下してゆく人型の影
2511 夕映えの道に老人 年老いてゆくとき影は全てとなって
2512 地獄花死人花ともいうけれど猫も家鴨もいる土手に咲く
2513 汗ばんで葡萄の雫光ります まだ夏雲の浮かぶ空です
2514 ラングドシャ舌に溶けゆく午後三時 まだ鳴き足りないヒグラシの声
2515 簡単な文字少しずつ間違えて再入院のあなたのメール
2516 どこからか胡弓聴こえる昼下り夏の最後の日曜日です
2517 黒猫がそこを通って行ったから今宵新月 火の星を見る
2518 菊人形、遥か彼方のウルトラの母が呼んでる月光公園
2519 葦の影、薄の影や虫の影 影絵のような世界があった
2520 白孔雀、鳳凰描く打掛けを纏って熱き加納幸和
2521 椰子の実が椰子の高さで見たものは南の島に降る夏の雪
2522 金色の海に太陽、薔薇色の海に駱駝やきりんの夢が
2523 抜け殻になったら逢おう魂の三重連の水車が回る
2524 九星と波紋映して漆椀 濁った鬱のゆき場なく秋
2525 六万年ぶりに接近するという火星ゆらゆらひんがしの空
2526 冷害の東日本、欧州の熱波 火星近づく年のできごと
2527 夏去りて抜け殻のこし白蛇は大屋根の梁つたって消える
2528 夏空を見れば「夏空の櫂」思う骨の髄まで侵されている 
2529 退屈な雨の夏にも蝉しぐれ ひとしきり鳴く裏山の蝉
2530 あの貨車は今どのあたり過ぎている遠い銀河をゆく夏燕
2531 晩年は楽しからずや ハルウララそう、もっと駆けなさい
2532 ハルウララ91戦敗け続け 夏すぎてなお走りつづけよ
2533 遠からず死は現実のものとなる 雨に打たれている曼珠沙華
2534 日向灘、嵐の後の静けさに朔日の月昇る中空   
2535 海の幸ひかりの幸を引き寄せて大網を引く日向の月が
2536 雲助の将棋を打つなと阪妻の旧い映画で三條美紀が
2537 嘴が痛くはないの? 木を叩き木をつつく鳥ちいさいコゲラ
2538 嵐、虹そして何もない明日 吹き飛ばされた蝉は秋蝉
2539 切なさの色よりも濃い原色の虹がいつもの虹になるまで
2540 一人に向かって人は歌うという 海酸漿を鳴らして遊ぶ
2541 魚、貝、草の葉そして恐竜の卵 埋もれた砂の中の私
2542 満ちてゆく月からっぽの心抱き波の兎と遊べば暮れる
2543 点と点つながることがいいという考えもあり蝉時雨降る
2544 追い風と向かい風では違うよね 雲の動きが見分けられない
2545 纏わりつくような暑さが堪えられない暑熱のうさぎ耳垂れる夏
2546 こーこーと鳴き朱鷺が飛び天女のような翼があった
2547 混沌も夜明けもいいね深夜に咲いている青薔薇も
2548 夜明けには川霧のぼる川霧は無明の闇の底からのぼる
2549 星たちの駱駝のそしてオアシスの力 きれいな形にめざめる水よ
2550 八月葉月月見月月齢三日稚月満月にはまだ暫くあって
2551 あと数日で立秋という短い夏にまだ蝉の声が聴こえない
2552 誕生の約30万年後に晴れ上がる 自由であれば屈折もなく
2553 いつかきっと宇宙の果ても見えるだろうどこまでも透明に晴れた空間
2554 液晶のモニターに見る遠花火 江戸の花火を忘れずに咲く
2555 隅田にも西武園にも行かざりし 花火が見せていた万華鏡
2556 花が咲き花火が咲いて胸の花ほどけゆきたる五彩の色に
2557 夜の波 川面を走り帰らざる 船、人、花火 夏は逝くべし
2558 八月の青さの中に溶け込んで帰らぬ兄の頭蓋のうつろ
2559 タッちゃんと浅倉南の声がする 多分夏休みも始まっている
2560 ハルウララ91戦敗け続け 巻貝が抱く螺旋の記憶
2561 雪見れば雪の静内放牧場 もう走れなくなるまで走
2562 忠実に従いましたが丑の日の鰻裂かれて焼かれる煙
2563 体系化されつつあれば体系化逃れてゆかむ遊びせむとや
2564 大量に打ち寄せるのは満月の死骸にも似る越前海月
2565 虹がどこかに見えたと思ったよあれは夢だったのだろうか
2566 水中に゜゜゜゜゜゜゜゜泡見えるとき夏空の青を映した魚がよぎる
2567 あの人の歌が切り刻まれている切り刻まれるあの人の歌
2568 簡単に歌は生まれて歌は死ぬ 雲ひとつない空は嫌いだ
2569 この雨に変わってもうすぐ蝉時雨 24度で初鳴きという
2570 ゆっくりと繋がれている どこに? どこか知らない明日に
2571 悲鳴ってみんな似ているそれが誰の声でも関係なく
2572 「モデラート・カンタービレ」の悲鳴から始まる全八章
2573 この雲をスクランブルして飛ぶ機影 入間基地から飛ぶ軍用機
2574 サイパンに大きな虹がかかる頃火炎樹にいま雨降り注ぐ
2575 ブリスベンに入港してゆく白い船 コアラやカンガルーに会いにゆくんだね
2576 ゴキブリはゴキブリとして生存し生を終えるかかなしくもあれ
2577 血の山河、夏の山河を渡りつつ ニッポニア・ニッポン滅びてゆくも
2578 あの時は逃げられなかった今ならば逃げられるかしら列を乱して
2579 金星の他には誰も見ていない 早起きの鵞鳥とアヒルが村を出てゆく
2580 夏の海、月の浜辺に椰子の実が流れ着くらし海月も浮けり
2581 音楽のきれいな先生「しろばんば」みたいな恋が終って少年
2582 淋しい子、強がり泣き虫見栄っぱり 絵日記に描く白い帆船
2583 泉蔵院、城壁に似た白壁の道を曲がれば七月の海
2584 三架橋、琴弾八幡、神恵院 楠の大樹と涅槃の釈迦と
2585 銭型の寛永通宝、白砂に描かれて琴弾浜海水浴場
2586 射吹島、亦島、菊紋円神島 箕浦走る海岸電車
2587 三豊郡、十六箇村の年貢米納めて昏き蔵屋敷なれ
2588 流金も和金も川を流れ来る金魚問屋の庭陰の川
2589 雨霧城、由佐城、仁尾城、九十九城 讃岐は城もお結びコロリン
2590 四国路の衛門三郎、伝説に蓮華微笑のような昇天
2591 透き通る希望があれば希望など笹の葉流す七夕祭り
2592 明日入院あさって手術と知らされる 「世界に一つだけの花」が聴こえる
2593 何事もないかのように朝は来る消えた楽譜の淋しい音符
2594 紫蘇に雨、羊歯に霧雨、竹の秋 睡蓮はまだ眠っているね
2595 一晩中、屋根を濡らして霧雨が降っていたこと知っていました
2596 再起動繰り返し書く一つの名 消えてゆくから素敵なWEB
2597 眠りましょう私に何が起ころうと今日の眠りは私のもの
2598 再び雨 雨また雨 雨のち雨の東京の空に氷雨を曳き飛ぶオナガ
2599 悪声のオナガの青い美しい尾にも見惚れよ斑の犬よ
2600 もうこれでお別れですね透明な水の卵を産む魚たち
2601 死屍累々、象は墓場へ辿り着く 歌も墓場へ向かうのだろう
2602 長い夜明けて木洩れ日さす森に水蒸気立つ風が流れる
2603 夕べには薄紫の風が出て梔子がもう腐りはじめる
2604 花火にも鳥にもなれず胞子飛ぶ とても虚しい日暮れが来るよ
2605 また何もしないで終る一日か 少し暑いと疲れやすくて
2606 日々は夢 宮脇檀氏の教え 豪奢、逸楽、雑にして楽
2607 アカシアの白い花散る夏の雨 小猿は白い花に埋もれて
2608 山芋の蔓がこんなに伸びてきて零余子も幾つか生ってるみたい
2609 枇杷の葉に枇杷の葉の雨 枇杷茶飲み枇杷湯に浸り浸り而して
2610 いつか見た風景の唐突さ変わっていないね 鎌鼬かな?
2611 気圧の差、皮膚が切れたり血が出たり擦り傷の痕ゆえに消えない
2612 アルビレオ、デネブ、銀河を飛ぶ鳥が白鳥であるこの世の優雅
2613 しんどくてだるくてでもねそれが普通 タップダンスは踊れませんが
2614 胡桃の実、植木鉢にでも置いてみて胡桃林になるはずだから
2615 沈黙が怖くて話す最速で走ってしまう竹群に風
2616 不規則に生きているから不規則に身体も傷む 急がなければ
2617 太っちょのポーランドから来た指揮者のタクトから雨は降る
2618 義妹の植える紫陽花、百合、ハーブ 霧の鬼無里の草分けの道
2619 叩かれて打たれた鍵と擦られた弦が薔薇の崩れる刻を見ている
2620 おそらくは鹿も帰って来ないから雌鹿、牡鹿の白蝋の谷
2621 第五期はラストステージ常夜灯舞台にともる終焉序曲
2622 また一羽欠けて街空広くなる 鴉も見ているお引越しだね
2623 まぁいいさが口癖で 終る時もいつか来る 春ならいいな
2624 この世は所詮生者の宴 月の裏側には蟹がはりつく
2625 温存をしてはなくしてしまうのは温存選ぶ愚かさのため
2626 日々捨ててゆくべきものを煮凝りか膠のようになるまで置いて
2627 六粒の薬飲み込むことさえも画面で言えばあの砂嵐
2628 昨日、今日、そして明日も出かけます白い廊下が続いて寒い
2629 一瞬の眩暈で消えた歌のため水撒けばそこに立つ虹
2630 燦々と月光降れば燦々とかなしみも降る 夜の汀に
2631 暖かい羽毛のような悲しみが満ちて来ること 雨季の悲しみ
2632 紫陽花に雨が降らずに睡蓮に水辺がなくて来る夏に似て
2633 話し合うために用意をされた椅子 椅子から生えている薔薇の棘
2634 Xには限界がある つまりそのX ′の脳の限界
2635 水性のインクで書いた歌だから滲んで消える雨の朝は
2636 前頭葉杳くて雨の黄昏も水溜りには青の紫陽花
2637 夏の庭 古い庭には古井戸と思い出だけが住んでいました
2638 状況は悪化している 或いは悪化させつつ嵐の前夜
2639 八月の海に鯨を見たというそんな映画も記憶の水辺
2640 何かしら悲しい音がするようだ水禽がまた浮巣を作る
2641 雨の歌、心に雨の降るときに 雨の雫のきらめく午後に 
2642 心臓も疲れています休みなく働き続けた心筋なんです
2643 湖の岸に沈んだ葦舟も鳰の浮き巣も降る雨の中
2644 月と星二つ並んである時間 蝙蝠が飛ぶ町の夕空
2645 雨の音聴きながら見る財田川 財田川河口の廃船
2646 隠れ家の屋根裏にある天窓を抜けたら銀河星雲の船
2647 魂が孤独死しそうな朝だからお帰りなさい母船(マザー・シップ)に
2648 虚しさに蟇は篭りて桜桃忌 宇宙塵ともなりゆく蛙
2649 上水に雨降る雨の木の葉闇 きりもなきむなしさの桜桃忌
2650 どくだみの白い十字が美しい 木の下闇に死蝋は満ちる
2651 「借物の翼で飛んでいた」という映画の台詞 灰色の翼
2652 雨上がる玉川上水渦巻いて流れるままに消える病葉
2653 降りそうで降らない白い空の下 紫陽花暗く首を傾げて
2654 弦の音だけが聴こえる朝クーセヴィッキー「小さなワルツ」
2655 ヴィオロンもコントラバスも歌います 緋色の椅子にあの人がいます
2656 どこから来てどこへ行くのかだけを問題にしていた ここにいるのに
2657 さびしさはこのふるさとのゆうまぐれ竹の林の月光の雨
2658 虚しさも寂しさもまた始まって木々の葉末に降る雨になる
2659 蓮根が綺麗な花を咲かせても無意味無意味と蛙が騒ぐ
2660 床屋にはくるくる回る棒があり目印かしら鋏の絵文字
2661 天使には天使の羽が重かった  魚になったその理由です
2662 青虫が蜜柑の葉を食べている白い蔓薔薇も咲いている
2663 この世界、灰色の世界に見えるときいつもあなたの声が聴こえた
2664 翠鳥の青き夕闇歌っていた誰かも見たのだろうか死の谷
2665 桐の花むらさきに濡れ紫の雨に打たれて咲く花の雨
2666 夏の夜も海月は赤子産み落とし月光の降る時間へ帰る
2667 初夏の金魚は眠り足りなくて終日さゆらぐ藻のなかの赤
2668 武蔵野はここ過ぎてなお春の闇 逃げ水という水のあること
2669 宝塚ホテルの蔦は見ていたね大劇場が傷んでも猶
2670 雑踏の中に一つの肩がありその肩で見る炎の祭り
2671 機械屋さん発明屋さんお父さんあなたの何を私は継いだ
2672 教えてねいつかロマンチストの一生が幸福だったか不幸だったか
2673 辛夷散り孔雀も羽を閉じたから木々は迎える驟雨の夏を
2674 プーランクの第二楽章聴いている 小鳥が聴いた風の囁き
2675 お終いにしようね夏が来ているよ蜜蜂の受粉も終った
2676 山吹も藤も城下の鯉が好き さくら吹雪も忘れぬ疎水
2677 江戸の茶屋 隅田の川の花吹雪 花はあの世もこの世も美しき
2678 藤の花はもう咲いているかしら紫の、そして白の藤の花
2679 船舶用吊り下げランプ点燈し緑色した時間始まる
2680 何日ももう何日も何日も 月が覗くよ死の翳の谷
2681 終る春 かなしみ知らぬ橡の木も若葉の五月迎えただろう
2682 ときじくの実が熟れ海の潮騒が聴こえるような春の満月
2683 満月が零した滴集まって夜は優しく プーランク「シンフォニエッタ」
2684 非時香菓(ときじくのかくのこのみ)のかぐわしく雨の春夜も日照りの夏も
2685 第二楽章、中でも最も美しい数節の連弾が消えている
2686 見憶えがあることつまらないことが気になる雛壇の雛
2687 難有りと指摘する人される人 春は朧の月も出る頃
2688 月光が覗いていった夜でした あなたが来たって思いましたよ
2689 曲線は重なってゆくピアノから半身既に抜け出している
2690 2台のピアノのための協奏曲 第1楽章から始まる朝
2691 十六夜の月の翌朝の蝙蝠や白梟の眠りのために
2692 五・七・五で書く病気まだ癒えず さよなら▼また来て■
2693 無造作にそこにあるから顧みず振り返らずにそろそろ枯れる
2694 *************蜿蜒と蜿蜒と続く鉄条網の中
2695 花びらを浮かべて夜の水溜り 飛行機雲はもう映さない
2696 ロスアラモス、原子の光生れる場所 オッペンハイマー博士の双子
2697 Atomic bomエノラ・ゲイ号が運ぶのはリトル・ボーイと名づけた爆弾
2698 Atomic bombボックス・カーが運ぶのは太った男と名づけた爆弾
2699 エノラ・ゲイはこんな飛行機 ぬばたまのヒロシマの雨降りしきる
2700 おそらくは歴史への無知が私たちをやがて滅ぼすいつかのように
2701 鉱泉が湧いている宿 黄泉の国、黄泉の霊泉などと看板
2702 いのちは陽炎なんて誰が言ったのだろう 雲雀は雲を突き抜けただけ
2703 欠けて満ち満ちて欠けゆく月影に葉月の恋は生まれたばかり
2704 鳳仙花歌えばそこは青い海 遠く離れて海燕飛ぶ  
2705 湧き水の中に青玉沈む淵 水無月、水の輝く季節
2706 いずかたへゆくとも知らぬ旅なれど<同行二人>と手を引く聖 
2707 梅雨すぎて暑熱の夏が来るとても涼しき瞳持つらむ童子
2708 臨終を待つ夜叉神の荼枳尼天  狐とも言う狸とも言う
2709 たまゆらに出逢いし光り虹に似て朝日夕日を負う火喰鳥 
2710 大いなる原生林に育てられ清楚な花となる水がある  
2711 大空と呼ぶには小さき空なれど手をさしのべてみたい絵の空  
2712 土蜘蛛は何嘆くなく山中に屍さえものこさぬものへ  
2713 隠れ里 流れる人の一族を虹立つ滝の裏に隠して
2714 虚しさに日暮れの道を辿るとき紫の花、夢の紫
2715 夕暮れの道が仄かに明るむはこの紫の大藤のため
2716 藤色の花の夕暮れお祖父さんと歩いている子とお散歩の犬
2717 伐られてもなお咲くさくら今生に愁いなきごと光りまとえば
2718 長寿の樹、薄墨桜花降らせ死者を弔う風になること
2719 薄切りの茗荷か青紫蘇。茄子は皮目から油に入れて
2720 包丁は少し寝かせて三枚におろした鯵の背に切目を入れる
2721 玲瓏と日月暮るる金色に 雨季には湖になる熱帯林
2722 偏って舟は水没ジャングルへ 櫂を流した舟の行く末
2723 筍もまだだったらしい山はまだ富士桜など咲いている春
2724 ノビルいっぱい 韮でもラッキョウでもないお土産の
2725 帆を上げよ 五月の沖の打たせ網 白帆に孕む西海の風
2726 果実酒も今年はお休み 青梅が笊に並べば桐の花咲く
2727 ほのぼのと絶望的な光景が広がってゆく木下闇に
2728 ゆっくりとしずかに深く絶望は地表を流れ春の逃げ水
2729 水は逃げ水は去りゆく陽炎か蜃気楼かは知らず武蔵野
2730 『空とぶ女友達』のような歌集が作りたかったいつでも
2731 戦争という名のスキャンダルがありSARSがありまだ続く
2732 悲しみは疾走すると誰か言う モーツァルトを愛した人か
2733 素描で描けるのならば素描で油彩が必要ならば油彩で
2734 進化には関係あるかあらざるかロンサム・ジョージ100歳の亀
2735 エスパニョーラ島のイグアナ その身体赤くしている別れの予感
2736 ゲットーに囲い込んだら夕焼けがそこにあったという気分だよ
2737 カラコルム、天山南路越えてゆく風に逢いたいウィグルの馬 
2738 もう初夏と思う暑さの午前 驟雨のひびき懐かしむ午後
2739 日溜りに猫がいる 野火止に散る桜を見ている
2740 夕闇の岸にうっとり三椏が もうすぐ春は終るのですね
2741 臆病なジョージだったが成長しGOTHAM CITY のボス猿となる
2742 湾岸の青い蛍火 聖霊に祈りを捧げて飛んだみさいる
2743 クレマチスあなたが残した風車  風車に向かえキ・ホーテの孫
2744 紫の煙が春の野を覆う 高麗の里は武蔵野の果て
2745 「魂の娯楽煮」ですか、なるほどね井上雄彦さんって素敵ね
2746 エマニエル・シカネーダーも言っていた「ザッツ・エンターテイメント」で
2747 弾痕はどこにも見えず気づかれず理想の都市の中庭の傷
2748 アカデミア橋を渡れば浮き彫りの商館見えるカナルグランデ
2749 戦争の世紀終れど戦争は始まっている クック・ロビンよ
2750 そういえば死者を焼く煙もまた空の雲に紛れる 春なのだろう
2751 戦争が始まる夜も終る夜も世界は澄んだ透明な青
2752 その強さ、その激しさが同じなら離れていよう集会の夜
2753 眼裏に光きらめく 今朝生まれ今朝死んでゆく虹の断片
2754 やさしさは儚く脆い夢に似てあなたのいない朝が来ること
2755 約束し約束守る兎には硝子の櫂や水晶の舟
2756 川岸に立って鵞鳥を見ている子 平和なころのイラクの岸辺
2757 『空ヲ飛ブ羊モ空ニ鳴る鈴モ♪』こだましてゆく戦争の夜
2758 蟋蟀を隠していたのは映画だけ?それともほんとう?溥儀の蟋蟀
2759 歴史をみつめているのは人間だけじゃない 例えば溥儀の蟋蟀
2760 蝋梅の花を活けたよ蝋梅の匂いしている春の陽だまり
2761 貝殻に残っているのは海の傷 巻貝がつつむ青い潮騒
2762 たましいを遊ばせている秋の風 木の葉さらって駆ける坂道
2763 フクロウがほうほうと呼びモモンガが斜滑降する森の夕ぐれ
2764 「勝虫」と人に呼ばれて蜻蛉は武者の兜を飾りていたり
2765 銀蜻蛉、透明な羽さしのべてあなたの肩に触れていきます
2766 雪落ちる朝のしじまに雪とけて春の先触れ福寿草咲く
2767 言葉にはあらざる言葉、梅一輪、小雪舞う日の小鷺の飛来
2768 <究極の無機質>なんて言ってたね ハイエナも棲む風のサバンナ
2769 天空の窓にも降っていたかしら 飛び散っていた白い羽毛が
2770 廃園に増え続けている球根は石榴の実にも似ている水仙 
2771 ひとひらの雪の白さの儚さにいつしか閉じてゆく花びらに
2772 幸福の第三楽章始まって水仙月に聴くコンサート 
2773 谷保天神、座牛の頭を撫でていく風の行方は春の梅林
2774 亡くなったあの人が好きな紅梅が二月の雪の晴れ間に咲いた
2775 電子体、光体X、私が思ったことが在ったそのこと
2776 峪渡るこだまのひらく季節あり 死はすこやかに育ちつつあり  
2777 寒気団迫り来るころ魚捕る四万斗の霧凍るこの朝  
2778 火を振って魚集めて漁れば魚は桜の色帯びて来る  
2779 漁火の海があるから帰るべき海もあるべし空海の幼名は真魚 
2780 海彦の裔にして婆沙羅の裔、海の彼方に立つ蜃気楼
2781 水仙は春の香りの黄水仙 海を見ていた城の水仙
2782 天界につづく階段のぼる霧、朝霧の道帰りゆくひと
2783 白鳥の湖沼に羽をたたむとき大菩薩には冬の三日月
2784 賀状無く迎える知友また一人 寒中お見舞い申し上げます
2785 瑠離色の硝子を抱いた舟がありあなたを連れてゆくよ銀河へ 
2786 ジャスミンはしずかに樹液搾られて滴る緑モロッコの夜
祥  * 『倉庫・混:白鳥座』 * 13:25 * - * -

蓮華

残された時間を生きるほかはなく花を眺めて歌を歌って
覚悟を決めよう 泥でも塵でも芥でも 命あるだけ命を生きる
六月十八日 今日は辛い日になった 石榴が割れるようにざっくり
煉獄のこの世を出でて蓮の花迎えるお釈迦様の世界へ
南無地獄 南無南無地獄 殺生の噂絶えざるこの世の地獄

四万斗の雨降りそそぐ梅雨の空 ゆきて帰らぬ鳥のいる空
梔子の雨に打たれて変わりゆく蜜蜂色に変わるその色
梔子と百合が開いた雨あがり 昨日の雨が茎をのぼって
そしてまた田村高広さんの声がする干潟の二重ドキュメントのナレーション
生きてゆく世界はいつも苦しくて 空ゆく鳥の喘ぐ 声無く

『一塊の土』思い出す芥川の 淡々としたモノクロームの
戦争に往かせないため目を刺した清作の妻のその物語
モノクロの映画でよかった鮮血の飛び散る様を見ないでよかった
この二人合うのだろうか「模範兵」清作と反抗的人間、情念の妻
あらくさのしとねに逢瀬重ねゆく 清作とその妻になるひと

『清作の妻』を観ている 亡くなった田村高広も出ていて若尾文子と
急速に興味なくしてゆくように言葉が消えてゆく夏の闇
銅に見る塩素の反応 黄の煙たちこめる試験管
「折り返し鍛錬」という鍛え方「繰り返し鍛錬」まで昇格する刀鍛冶
明日もまた暑さの中で働いて それが思えば格差であるか

スキャナーには頭蓋の形撮られていてシンメトリーの影絵のように
保護膜のように時間が必要で空間もまた必要ではある
いつだって変わらない時がめぐって深夜のルーシー・ショー
しとしととなお降る雨を喜んで蝸牛這う葉裏ありけり
六月の雨は静かに降るものを コサックダンスするような雨

ムツゴロウ泥の中にて立ち上がるそれが求愛の姿だという
たましいのさいはてに咲く花に似て火縄銃にも人の手が要る
春の夜の夢は幻 過ぎゆけば シルヴェスター・リーヴァイ楽曲の誘惑
私の場合はここに抜け道があると思っていた真暗闇
蝋燭は今華やかに炎えていて 絵本の中の白鳥は死ぬ

今日一つだけいいことがありました 綺麗な声で鳴く夏の鳥
再放送を見ておりました なでしこや芍薬の咲くターシャさんの庭を
腹を摺るコギー犬ではあるけれど日陰を選ぶ花の木の下
この年になれば許されるというターシャさん 貴女ならいつでも赦されている
どんな日か忘れてしまうどんな日か 北北西に雲が流れる

祥  * 『倉庫・混:白鳥座』 * 10:09 * comments(0) * trackbacks(0)
このページの先頭へ