銀河最終便
WEB日記

白鳥座 2786首版 3-3                 
2001 子育てをするには派手では危険だと雌の野雁は薄い茶羽色
2002 正常で普通であってそれゆえに悪と思えり悪であらんと
2003 されどまた狂気などにも興味はない 綺麗な玩具、夢の白鳥
2004 美しいもの以外には興味がない ノイシュバンシュタイン、冬の白鳥
2005 貝殻の中には夢と後悔と潮騒に似た夜の音楽
2006 千年の血のつながりを疎んじた私の何が反応している
2007 瀬戸大橋渡ってゆけば私の何かが疼く 紫紺の島影
2008 今すごくゆっくりゆっくり揺れている遠い地震があったのだろう
2009 「一期は夢よただ狂え」狂いて死せる宅間守か
2010 悲しみを悲しみとして生きてゆく素直に生きて縊られる鶏
2011 ゆっくりと俯瞰してゆく鳥の眼の視野の外なる彼岸の桜
2012 虚しさもいかがわしさも同義語に思えて来たり動悸する如
2013 目に映ることのいろいろ目にしたままこの絶望の世界の外へ
2014 知ってます?おけらの花が咲いてます万葉植物園の陽だまり
2015 草炎える不知火炎える野分来て神無月の真輝く赤
2016 空中にプールを描く親子にも雨降り続く トタン屋根にも
2017 ワールドカップ、オマーン戦は延々と続いて最前線の
2018 日暮れはもうそこに来ているミッキーとプルートの時間始まる
2019 さよならを練習すればさよならは永遠となるモニターの零
2020 偶然の一つであれば私たち羅列されたる数字2・4
2021 踏切を渡れば海で階段を上れば駅でその下が川、架橋駅
2022 恐竜の痕跡こそが大切と毟り取られる鳥族の羽根
2023 静岡県石廊崎では67,7m、生温かい風渦巻く東京
2024 いつもは平手で今回は拳で殴る台風22号 
2025 どうしても≪続きを読む≫が消えませんいったいどうしたらよいのでしょう
2026 おそらくはそこにはいないあの人に 二度と逢えない胡弓の楽に
2027 今日までの晴天となる空にして下弦の月のかかる中空
2028 失ったものは言葉や物じゃない燃えていたのは火鼠の皮衣
2029 何事もなく過ぎたわけじゃない何事もない毎日を望んだ狐
2030 細心の注意を払って生きない昨日生まれた月の繊さで
2031 曇り空また台風が発生し南洋上蛇行しながら
2032 雨雨雨雨雨雨雨雨雨雨 甍に軒に私に降る
2033 あの人の心がどこかへ行った日の遠い火の色の曼殊沙華
2034 飢餓線上這ってゆく虫一列になって冬へと向かって歩く
2035 ゆっくりとレールは別れ海に入る 船は入り江に生簀を運ぶ
2036 気がつけばもう十月で閉じられた頁のように私がいる
2037 人は死ぬ必ず死ぬと教えられ 姫神、森の中にて死せり
2038 透明な青の世界に秋の月 星も瞬く夜明けであった  
2039 台風が縦断してゆく列島の無月の空によしなしごとを
2040 私の歌ならいつでもどこにでも自由に転載してくださいな
2041 「転載を禁じます」って紹介をしたいと思ったページの隅に
2042 朱の回廊、水の回廊 海に浮き水鳥のごと羽を広げて
2043 琵琶法師哀れを語る厳島 社殿冠水して神無月
2044 雨でした雨のさなかの夕ぐれを赤いバイクが角を曲がって
2045 時々は青空もみえた曇り空 次第に雲が厚くなってゆく
2046 火の山河、水の山河を渡りつつ ニッポニア・ニッポン滅びてゆくも
2047 ありがちな脚本だけど伝説の曲が流れて涼しいラスト
2048 存在という不可思議の芒野を流れる川の岸辺の家族
2049 幾度目の拒否を経験するマウス悲しみらしき青の点滅
2050 いつだって置き去りになる石ならばいっそ知らせよ石塊の重さ
2051 回廊を御柱を打つ波があり寄せくるときも青き潮騒
2052 秋は好き秋に生まれた人といる彼岸の風のように儚く
2053 鬱熱が潜熱となり気化熱となりゆくまでに滴る通草(あけび)
2054 アクチュアリティとリアリティは違うと養老孟司氏がTV画面の中にて語る
2055 黙示録の頁を捲る風があり今ほろほろと崩れゆく塔
2056 海(かい)という名前の猫の本を読む海と子猫の海辺の日記
2057 小紫、紫式部の園芸種  野火止の水ゆるやかな秋
2058 沈黙に似つかわしくない夜だから昔話をしてみたばかり
2059 砂を吐く浅蜊のように砂を吐く もっと美味しく食べてください
2060 彼岸花咲く野火止の土手にして子猫の生まれた秋の日である
2061 棚田には棚田の景色見えながら遠い夕やけ雲も映すよ
2062 川底に無数の卵産み落とし黄金の鯉流れてゆけり
2063 少しずつ時間を錯覚してゆくよ 五分遅れの時計のように
2064 主語の無い世界に生きていますから雲と霞と消える煙硝
2065 大阪と福岡拘置所に於いて死刑執行同日二人
2066 花は葉を葉は花を恋う彼岸花 泥色の稚魚泳ぐ野火止
2067 十五歳少年の行く遍路道 雨の宇和島を過ぎて讃岐へ
2068 「思川」という川の橋 その橋が投下地点と特定される
2069 追いつめて追いつめられて草の原 放り出された二つの心
2070 火柱となった心が炎えるから 鎮め給えな海を這う龍
2071 荒れた野の向こうに木立 木立の向こうに青空がある
2072 曼珠沙華夕べの道に灯るのは 赤々と咲き赤々と死す
2073 さよならと手を振っていた母だった永遠の別れになると知ってた
2074 丸亀に多度津に京極、宇和島に伊達 都に遠き流離の心
2075 いずれわれら婆裟羅の裔の萩、桔梗 吹く風に萎え降る雨に散れ
2076 海沿いの町が故郷 萩、すすき、彼岸花咲く丹尾の城跡
2077 亡くなった人の日記にハーブと本 花と大きな猫とオレンジ
2078 列島に猛烈な風吹き付けて増幅された何かも襲う
2079 津波来るという警報に醒まされる逆流をする川を見た人
2080 偶蹄目、牛科ミミナガヤギのこと母の命日だったあの日の
2081 堪えかねて噴く火の色の美しさ千年神の水を湛えて
2082 満ち潮は高潮となり風孕み月が引きゆく海の高鳴り
2083 栗に似て栗より大きい滑らかな殻と木の実が落ちていました
2084 マラトンの丘駆け抜ける選手団 希臘の青の澄みゆく時間
2085 発酵を待つ詩やパン種や葡萄樽  驟雨の後に光る雨粒
2086 失って滅びていつか消えてゆくそれでも人は夢見るさくら
2087 始まりも終わりも知らず生きていた知らないことが強さであった
2088 火祭りの写真をどうもありがとう篝火はまだ燃えていますか
2089 せせらぎの音聴きながら歩く道 木下闇をゆく水の音
2090 紫蘇、茗荷、山葵、シシトウ、生姜など夏の終りの薄闇の胃腑
2091 やがて死がそこにひっそり掛けるから古い木椅子は木洩れ日の中
2092 みんみんがつくつくぼうしが鳴き交わす晩夏になれば晩夏の心
2093 九月になったら私は何をするだろう九月になればチェホフを読むよ
2094 曇り日が好きな黄金色の鯉 橋のたもとの澱みの中の
2095 向日葵の種と蜜蜂 太陽に背いて墜ちたイカルスの裔
2096 立秋も過ぎて八月十三日 残暑お見舞い申し上げます
2097 まどろんでめざめる朝の白い蜜 季節はずれの鶯の声
2098 頼るものないとき頼る言の葉と今宵生まれた繊い三日月
2099 キスツス=私は明日死ぬだろう 8月8日の花言葉です
2100 雨の日は飴細工師の小父さんも兎も犬も鳩もお休み
2101 炎える樹は炎える火柱、火柱の尖端にして炎の骸
2102 光る魚一網打尽にする網が見つからなくて月光遊魚
2103 戦争は間違いだった間違いで滅んだ国の亡霊の夏
2104 空白の時が流れて七月の海に浮かんだ島影一つ
2105 アボカドもキウイも伸びて七月の朝は紫紺の花も開いて
2106 ネアンデル渓谷 遺伝子のネアンデルタール人の故郷
2107 限りなくレイアウト崩れゆき私の歌は消えてしまった
2108 鶏の頸締め付けているあの声だ高音で歌うのは疲れるだろう
2109 夏空の乳白色の雲の舟ローラースケートしているピエロ
2110 どれ程の取引をして日本はこの決定を得たのでしょうか
2111 雷雲は遠くへ去って行きました あの大雨は嘘のようです
2112 天邪鬼踏み据えられても逆らって逆らう程に怒りに触れる
2113 WEBページ消えて半身不随に似て 水栽培のアボカド林
2114 極端と極端会えば一点に還元されるヤコブの原理
2115 富士に雪、新潟三条には豪雨そして梅雨明け今日の東京
2116 七月の金魚が水に眠る午後 水はさゆらぐ光りの窓辺
2117 天からは一瞬止んだだけの雨 日本の行方まだ雨の中
2118 約束の海の歌です遠い日の記憶のように光る海です
2119 ペテン師のペテンの語源は知らないが逃げ水という夏の陽炎
2120 無理解は悪。 『沖縄ノ骨』の作者がそう語る 珊瑚の白い骨と混じって
2121 大切な一日のため雨よ降れ しずかにひらいてゆく雨の薔薇
2122 晴れの日も傘の用意は忘れずに梅雨は終ってからが本番
2123 アリゲーターブルーアリゲーター深夜に奔る風を見つけた
2124 生き残る人ゆえ覚悟の足りなさを責められている鬱熱の森
2125 愚かしいことと思えてやめました二足歩行に戻る人鳥類
2126 戦闘色消えたらしくて野を奔る王蟲の赤も一夜にて消ゆ
2127 少しずつ気道を確保するようにゆっくり と夜の帳は下りぬ
2128 約束の虹がどこかに立つという 探査衛星カッシーニの旅
2129 眠くなる 最後は眠くなって死ぬのだろうか 鳥たちも
2130 仰ぎ見る文月の空の流れ星 戦場に人は撃たれていたり
2131 雷雲にまけてはいない入道雲 青い薔薇咲く2004年夏
2132 少しずつ眠るためまた生きるため真夏の夢の浅瀬を渡る
2133 川底にいても蛍は光るという 弟の手から姉へと蛍
2134 拒否よりも手をさしのべてみる勇気 蔓性植物であろう何かも
2135 ライラック苦しきことを忘れんと買い求めくる水無月の花
2136 天空を走る列車に名づけよう 薔薇星雲を横切る列車
2137 「死に至る病」ではない憂鬱というのでもない 雨の気配か
2138 退屈の病に私は侵される 病であるから治るのだろう
2139 山椒魚、山椒魚って可愛いね 石を枕にうたたねの夢
2140 誰かが歌い始めても夜は明けないかもしれないが
2141 雨のない六月だった台風が壊していった日除けを替える
2142 桜桃忌すぎて三日の夕ぐれは哀しきものの見ゆる夕ぐれ
2143 さみしくて嵐が去った空を見る遠い山野に棲む獣たち
2144 なんとなく批判をされているような夏来て白い太陽の下
2145 一匹の鼠が町を走り出し真昼の雲が白く輝く
2146 多分もう私はこれでお終いと紫陽花の青、紫陽花の雨
2147 汚された時間のようにそこにある削除できない何かのように
2148 夏空に雲一つなき桜桃忌 台風はまだ東シナ海
2149 前線は活発ならず空は晴れ桜桃の実もつややかに生り
2150 逝く人があれば生まれる人があり生誕祭となる桜桃忌
2151 O音の優雅さ雨の桜桃忌、鴎外忌にも驟雨来て去れ
2152 さみと゜りの夏来て雨の桜桃忌 さくらんぼのようなあなたの
2153 眠ろうとしても何だか眠れない 普通に戦争している時代
2154 水無月の鬱をかかえて紫陽花の半球すでに黄昏れてゆく
2155 夕暮れに風が通れば振り向けばあなたの背中見えた気がする
2156 水色の海と空とのあわいから聴こえる音をタクトにのせて
2157 隙間から一瞬見えた愛に似たものが欲しくて殺してしまう
2158 心肺に貝殻虫が棲みついて殺してしまう少女がひとり
2159 誰にでもある空洞に鳥を飼う 傷を負ってる鳥の目の青
2160 鳥籠に鳥を飼ったら青空の果てを見せてはいけないという
2161 地の底につづく階段下りてゆく黄泉とは蛆の湧く土の底
2162 窒息をするより前に死んでいた 狭い隙間も埋められていた
2163 新鮮な生みたて卵のような黄の花芯もゆれて梔子の朝
2164 家事をして運動をしてよく眠る さよなら私の夢に逢う獏
2165 水無月の雨降る雨は心にもこの素晴しい世界の片隅
2166 皮肉にも時間は流れ蛍沢、蛍田という地名も消える
2167 満月が悪かったんだ射す月のひかりの中の緑色の蝶
2168 コメントは父の言葉で語られて新聞記者の目で綴られて
2169 同級生に切られて小6の女児が死亡とテロップ流れる
2170 南風吹く東京の日暮どき 檸檬のような月も浮かんで
2171 ダービーを制したキングカメハメハ 府中の空に浮かぶ半月
2172 まだ熱が引かないけれどそのせいで見えるのかしら歪んだ檸檬
2173 名も忘れ一人の男が虎になる中島敦の小説思う
2174 感覚の教会に鳴る釣鐘や天井画など五月の空に
2175 水色の尾長が飛んで上水に夏来る 夏の涼しさの青
2176 ゴミからもアートは作れ工房の中、鎮座するプラスティック蛙
2177 熱が出る前の症状 動悸して片腕片肺酸っぱくなって
2178 羊水の中から始る絵日記のような万智さんの「プーさんの鼻」
2179 戦争が始る時と終る時 雨は烈しく降るゆえ儚
2180 サッチモの声が聴こえたサッチモは「この素晴しい世界」と歌う
2181 紫陽花の青の花火のひらく朝 小さく青く雨の紫陽花
2182 何もかも重くなってる何もかも そう何もかも何もかも重い
2183 突然にカミキリムシが這い出して紙切るという噛み切る勿れ
2184 あきらかに社会的適合欠いている天道虫は星で分けられ
2185 関わりもなく生きている淋しさに 美しいもの峠を行くも
2186 石塊の僅かばかりの土にさえ咲く紫の花のひとひら
2187 ここに咲く花の苞衣の中に充ち花の力となる何ものか
2188 こんなにも暑い日なのにあのひとは痩せた分だけ寒いと言って
2189 スカーフを帽子代わりに巻いてゆくと 締め付けられる痛さがないと
2190 猫さへも何かを感じていなくなり庭先はもう二匹の広場
2191 イラクでは毎日人が死んでいて殺害報告にも慣れる長官
2192 基本的に安否の確認などできず仰せのままに頷くばかり
2193 夕暮れの水の流れに沿ってゆく水の流れに運ばれてゆく
2194 春日井建、享年六十五歳の訃 一人の定家黄泉へ発つ夕
2195 白皙の詩人は一人旅立ちぬ皐月の空に発つ白い鳥
2196 脱落と脱出の違い知らぬままこの世の淵をさまよっている
2197 春の野の逃げ水、昼下がりの驟雨 夏には夏の烈しさに降る
2198 日曜の小川に沿った道でした 鴨も小鷺も帰った夏の
2199 香枦園、海と川との汽水には渦巻くものが見えて夏の日
2200 川沿いに歩いて下る散歩道 美術館までゆっくり歩く
2201 あの人はどうしているかと訊かれても訊かれなくても寂しい明日
2202 ポルトガルの洗濯女という風情 曇りのち晴れの空が青くて 
2203 空想と空想むすぶ接点に空の巣があり燕やすらう 
2204 台風に散らされなくてよかったね 台風はもう熱帯低気圧
2205 泥川に川魚かしら鯰かしら一瞬ゆれて再び沈む
2206 木々の影、魚の影も見えている 湖の岸近くの葦原
2207 葦の葉をのぼる天道虫のこと 蜘蛛の巣作り見ていたことも
2208 川鵜来て鳥の楽園伝説の円形の縛、縮めてゆきぬ
2209 遠く去る鳥には鳥の歌があり水没樹林に降る雨がある
2210 飛ぶ蝶の無数無声の映像の夕映えてゆく金の鱗粉
2211 鱗翅目、蝶や蛾にある鱗粉の身を守るため赦される毒
2212 六月のドナウデルタの葦原の水と光りと小さな魚影
2213 ペリカンが上昇気流に乗って飛ぶ 桃色ペリカン灰色ペリカン
2214 やがて陽はシュヴァルツヴァルトの森蔭に蒼い馬棲むその森蔭に
2215 断片は断片として断片の断片でしかない夢を夢見る
2216 墨色の壷の一に銀彩は隠れてしまう芒の穂波
2217 台風が近づいて雨、終日の雨に降られて空木の白が
2218 本能寺の変よりときは今にして田楽刺しになる心地する
2219 蒸し暑い夜には理科と算数を午前3時の3chで
2220 遠くから「暫」の声 暫くと声をかけたるものの見えなさ
2221 映像と詩も夢をみる 異次元の入り口に咲く一本の薔薇
2222 攻撃の背後にあった八割の支持を充たした奇妙な果実
2223 せっかくの自由も空しくなるわけを少年の目は見ていただろう
2224 金銭に代えられないというけれど金銭のこと量り難しも
2225 計算し演出し演じてみせヒトラーがヒトラーになる一つの過程
2226 ヒトラーのあの髪型の何分の一の狂気を分かつ私たち
2227 今日は雨 雨の中にいる幸福を感じているか葉裏の蝸牛
2228 日の国は火の国、赤く篝火が炎えて 望月に矢も放たれて
2229 地下深く深く堆積滞留し核を守っているマントルよ
2230 温泉は蔵王の含鉄釜の湯の湯の花の咲く蓬生のお湯
2231 汚れなくイノセントであるということの 初夏の空の
2232 春蝉が啼いていました新緑の萌える林の一本
2233 春蝉が啼く季、遠い日の夕べまどろむように沈む太陽
2234 なんとなく残骸めいた掲示板 桔梗咲く頃削除しましょう
2235 黄金色の麦藁帽子出荷する小さな町の小さな港
2236 鮮やかな血の色に染まる基督のメル・ギブソンの映画も完成
2237 私には見られないけれど意味はあるそのリアルには必要性が
2238 ある人は父をある人は母を亡くして母の日の雨
2239 今日の日が無事に過ぎたということの続きに咲いて深山苧環
2240 「右ゑちご左やまみち」道標の紫に猶暮れ惑う道
2241 塩倉に釘は使わず 塩運び塩を守って千国街道
2242 多分どの一首であっても同じこと一首は既に全体である
2243 大相撲夏場所がもう始ると 水面に光りさす隅田川
2244 非表示の選択あれば埋もれ木の埋もれるままに朽ちゆくもあれ
2245 フェルディナンド・フォン・ツェッペリン伯爵の飛行船 その中空の船
2246 虚しさのかぎりもなくて赤い月 明け方に見る皆既月食
2247 欠けてゆく月の黒紙魚、月の隈 銃身の色帯びてゆく夜
2248 七つの子歌いつつゆく「二十四の瞳」の中の岬の子供
2249 花水木はらはら散れば花筏 一期一会としたためよ歌
2250 言の葉の繁りて散りて五月雨 メイストームの過ぎてしばらく
2251 猫だって家出もするさ家出した猫が子猫を連れて帰るよ
2252 屋根裏に蛇の脱殻、雀の巣 鼬も出入りした穴の跡
2253 憂鬱に似た感情の夕まぐれ 気まぐれ気まま我儘の果て
2254 川原にも陽が射し石に蜆蝶 ナンジャモンジャの花咲いて夏
2255 東北に行ってみたいと思います角館とか太宰の金木
2256 夏の日に剪定鋏光らせて花咲く花の咲かせ方など
2257 いずこにか鋸菊が育つからもう枯れ始めているベンジャミン
2258 花壇にも教育主事は入り来たりタチツボスミレの谷の群落
2259 めひかりの眼の海の色誰だって海を釣り上げられない釣り人
2260 誰だって海を釣り上げることは出来ない 神が釣り糸垂れる夕暮れ
2261 雨の日の竜巻、晴れのつむじ風 何の尻尾か見えて日が没る
2262 竜巻は上から旋風は下からと解説されている連休二日目
2263 蚕豆が弾けて夏はもう間近 遠くでゆれている青い麦
2264 やわらかく弦の音から始って木管楽器が続くその後
2265 マーラーの『復活』を聴く演奏はルツェルン祝祭管弦楽団
2266 流木が打ち寄せられて来るように悲しい心の切片もまた
2267 妖艶な鐘馗空木の花が咲き 上水の夏始るらしき
2268 いつまでも若く美しくあらねばならぬと『火の鳥』の婆
2269 ファルージャは萌黄色に見える萌黄色の中の桃色の炎
2270 まだ青い小さい苺が二つ三つ四月下旬の涼しい朝
2271 眠くってだるくて疲れてしんどくてそんな日ばかりの春ではあった
2272 シマウマの後姿を見ています夕陽に向かって歩くシマウマ
2273 象がいてキリンがいて河馬がいて縞馬がいる 地球楽園伝説を継ぐ
2274 金太郎飴よく見ればみな違う顔 それぞれに泣きそれぞれに笑う
2275 春が逝く四月が終る蜜蜂の羽音が聴こえ蝶も生まれる
2276 薔薇も咲き守宮も硝子戸を這って迷宮の森ひらくこの朝
2277 竜川と書いてリョンチョン爆風に吹飛ばされた国境の町
2278 前近代ぬっと顔出す春の闇 火山性ガス噴き出す気配
2279 それぞれの中の戦争も終るから静かに頁閉じられてゆく
2280 大方は主義や主張にあらずして多分表情筋の迷走
2281 列島を寒波が襲う四月尽 春夜の夢に帰り紛れて
2282 イラクへはもう戻れないとアナン氏が 紅砂の海に埋まる部隊
2283 こんなにも殺風景になったわけ 紙風船のような黄のチューリップ
2284 国境の駅のある町壊滅する黒い地蜂が群れて飛ぶ朝
2285 すでにあるものなぞっているだけの危機という名の安逸の胡麻
2286 ニューサマーオレンジ、小夏、日向夏 柑橘系の夏が来ている
2287 宿題を残したままの20日間 風邪後遺症だるさがとれず
2288 黄の花が終れば次は白い花 小さな虫喰いだらけの絵本
2289 雨上がる林の道の腐葉土の中のドングリ芽を出す朝
2290 漆黒の腐葉土ありて金色の朝陽の中の辛夷、木蓮
2291 松毬や泰山木の実の集り 命果ててもなお生きるもの
2292 「自爆する男」画面の金の花 田島征三、木の実のアート
2293 地に落ちたヤシャブシ伊豆の海岸の岩に置かれて花咲く木の実
2294 椿咲く、椿の赤や白の花 渚の水を水盤として
2295 木の実って生命力の塊でゆえに滅びて後もつよくて
2296 今朝落ちた木の実のうすいやわらかい明日花咲くばかりの花胞
2297 海辺には打ち上げれた海草が遥かな時を伝えています
2298 知らされなければ知らないで今日の一日の画面の向こう
2299 なま物の命を運ぶ春の月 花水木咲き躑躅も咲いて
2300 突然に夏来るように最後の日 難読氏名の話題の続き
2301 魂には晩年 亦来る春の終る日の風もない日に散るリラの花
2302 でそれから誰が報道するのだろうそこに虐殺ある日の朝
2303 「揺るがない」大統領と風の墓地 遺体七百埋まるファルージャ
2304 花水木が咲きポピーが咲いているこの夕暮れの濁りゆく空
2305 湿気のない爽やかな日で見残した桜も咲いて今日の一日
2306 夕焼に染まって緋色の鳥となる熱帯雨林の鳥かと思う
2307 港から夕陽が見える金色の海に続いてゆく道がある
2308 薄闇に包まれながら目覚めたら昨日か今日か解らなくなる
2309 ほの甘き千枚漬けの千枚の襞に隠れている赤唐辛子
2310 長さんも弥七も逝って東京に四月の雪を降らせていって
2311 これが春これが四月の気温差か雨が上がれば欅の若葉
2312 折鶴蘭、ムラサキシキブ遅れ咲く薔薇の一輪雨の日の雨
2313 恐ろしい真実は唇が閉じたがって言えない 春浅く黄泉をゆく舟
2314 木苺と射干の花咲く裏道の水のほとりの羊歯にも降る雨
2315 朧月、卯月の空の月の暈 さくら花びら散りゆく刹那
2316 花ぴらはもう葉桜のやまざくら透ける翠の白い花びら
2317 孔雀はもう羽根をたたんだ月光の銀青色の夜が来る前に
2318 街空に煙たなびき消えゆけり卯月の木の芽さみどりの苗
2319 桜散る空掘川の河川敷 渡り鳥来て今年の春も
2320 川霧がたちこめていたのは冬の頃あの頃すでに鷺は来ていた
2321 雨の中咲いて仄かに匂う花 深夜零時に雨雲は去り
2322 紫木蓮、白木蓮が並び立つ白木蓮から零れて落ちる
2323 満開の桜が空に吸われてゆき吹雪となって散る地蔵堂
2324 風もなくお花見日和 今頃はアークも桜祭りの頃か
2325 晴れた朝詩人の誰がいなくてもさくらさくらと声低き歌
2326 花が咲く季節は花を雪の舞う季節は雪を月は見ている
2327 晴れた空が青かったから思い出す空の色
2328 川縁に桜が咲いて待っている春の終りの雨が降るのを
2329 夜になって雨 雨のなか走り去る時曳く雨の音
2330 バイパスを作ったというバイパスの管を通ってゆく舟がある
2331 白湯で服む薬のいくつほんとうの薬であるのか毒であるのか
2332 木蓮が茶色くなって枯れている春に三日の命もなくて
2333 明日はまた雨降るという三月の雪に変わってゆく夜の雨
2334 モビールのイルカが泳ぐモビールを動かす春の風があるから
2335 存在を主張している背表紙に別れを告げて今日の花びら
2336 アルヤバン日本も次に標的にしているというニュースの一文
2337 木蓮、辛夷、桜の莟 のんびりとした春の水曜
2338 東讃の屋島、西讃の観音寺おなじ四国のサヌカイト哉
2339 日本はテロと戦うということで警備の警官多数見かける
2340 混迷を深めているねバグダッド レジスタンスは激しさを増し
2341 なるようにしかならないのだし運なんだしって言って顰蹙を買う
2342 ある時は死にかけていた琉金も春を迎えた奇跡のようだ
2343 爛漫の春よ驕りの春であるよ昨日縊れた鳥もいた真昼
2344 賑わいの市に背を向け山麓の道の傾斜をゆっくり上ると
2345 山麓の南病棟、陽が当たり月も仄かに射してよいと言う
2346 満月は一昨日だったそういえば花のもとにて春死ぬ烏
2347 ぴったりと風がやんだね夕凪の夢のまどろみにも似たやすらかさ
2348 水際に風が流れて風がやむ海岸線に河口にカモメ
2349 洋燈に照らされている雪の日の硝子工房、運河のほとり
2350 混乱は全て収束する形 終息までは言えない形
2351 千年を眠るためには千年を眠れる言葉が必要であり
2352 中和する形としての一章を今からそこに書き加えます
2353 忘れているわけではないが忘れている他人事だった私にとって
2354 朴の葉に餅を包んで藁蘂でとじて村の社の天狗にしんじょ
2355 簡単にあなたも私も殺すだろう虐殺列島住人なれば
2356 鳥、卵、山積みになり棄てられて 殺して埋めてヒト科のヒトは 
2357 群像の絡んだ腕と腕と腕 乳白色の丸い眼球
2358 アポロンが追いかける時ダフネーの指が木の葉に変わるその時
2359 熊の仔は走る熊の親も走る 阿寒の冬は終ったらしい
2360 砂漠には優美なピューマ 一億二千万年前の猫
2361 雪の予報覆ってさて晴れのち雪のち大夕焼けの西空
2362 菜の花の芥子和えとかこの季節食べたくなって程よき季節
2363 満開の梅が誘って国立の谷保天神の座牛に逢いに
2364 午前三時 宙に無数の水の星 水汲み上げる滑車の音も
2365 雛の夜 火星に水とオポチュニティー 時の甘露を白酒として
2366 火星には確かに水があったという 地球に残る水の儚さ
2367 小雪舞う東京の春、今日もまた鷺は冷たい小川に立って
2368 いつのまにか中継は終っていた醒めない夢の中にまだいる
2369 朝のうち小雨ゆっくりと天気は回復すると言っていたのに
2370 テロップが流れるだけの死であってホーゼンフェルトの最後を思う
2371 宗鑑が庵を結ぶ一夜庵 室町幕府とゆかりの土地に
2372 港から夕陽が見える金色の海に続いてゆく道がある
2373 アーケード撤去されゆく柳町 財田川にも鷺が来ている
2374 木蓮がそして辛夷が咲くだろう 春ですあなたは死んではいけない
2375 三月は優しい季節しゃんしゃんと鈴を鳴らして神社の仔馬
2376 午前四時の幼児番組ゆっくりと精霊たちの揺らすぶらんこ
2377 月と星、離れ離れに西の空 軒に届くと思うばかりに
2378 まだ吹雪く空と天気図示す人 冬の最後の抵抗という
2379 北西の風つよく吹き東北はまだ氷点下の日もめぐるらし
2380 エメラルド・グリーンの果肉切り分けて春の空虚も切り分けてゆく
2381 カリフラワー、キャベツの仲間ではあるが脳葉に似て春の虚しさ
2382 霜焼けを起こした紫ブロッコリー 花の蕾を食べられてしまう
2383 殆どもう破滅を待っているような紫ブロッコリーのような夕闇
2384 そしてまたモスクワ時間を生きていて午後は一様に退屈である
2385 冬川を水が流れて水が去る 猫柳もう芽吹いていよう
2386 安部英あなたが無罪であるならば老いゆく時間も大切である
2387 一人でいい一人がいいと春の月 いつしか水に還った海月
2388 変わらない日常があり変わらない人がいるのに溺死する月
2389 物思うキカイであれば物思う 抒情というは何処のキカイ
2390 潰れてはいなくて、でもどこにも見当たらない そういう存在なのかもしれない
2391 みんなが行くという方には多分行かない 数が多すぎる
2392 書くこともない 七七を付け足し埋めている空白
2393 安静に 動けない人にはどうか別のsuggestionを
2394 文体の句切れ或いは句切れ無し 章句、文節、韻律の鷹 
2395 もう終りだという声がする雲は春 私は私でなくなっている
2396 野火止の鴨の平穏確かめて小さな橋のたもとを通る
2397 その他に何もなかった 毎日は機銃掃射がただ無いだけの
2398 曇り日の空は悲しい夜までも星もまばらで小さな星で
2399 湖の岸を周れば湖の向こうで見えた星も見えない
2400 鬱蒼と茂る森には白梟 煌く星を隠した森の
2401 春の日が菜の花飾る鶏舎にも。真珠のひかり宿す春の日
2402 薄闇に包まれながら目覚めたら昨日か今日か解らなくなる
2403 だんだんと機嫌が悪くなるような春一番が砂塵を上げて
2404 桃色の舌もつ貝がちろちろと覗っている町屋の厨
2405 スクレイピー、プリオン、ヤコブ、海綿が吸い取るだろうメタル・スポンジ
2406 伝統は確かに生きて生きのびてスポンジ脳に点る春の灯
2407 街空に煙たなびき消えゆけり吉野屋さんの牛丼も消え
2408 美しい茨木童子、日々荒みその片腕も綱に落とされ
2409 百円で売られるまでの暫くの歌集が歌集らしくある時
2410 光彩を放っているね移り気な忘恩の花ラナンキュラスよ
2411 息長く伝え伝える歴史です たった今始まったところです
2412 桶屋にもなれざりしかばビイドロや飴細工師らもなれないだろう
2413 柿の葉の鮨を食べたよ和歌山の海岸走る電車の中で
2414 霜柱踏んでみましたお隣の庭に繋がる草むらに立ち
2415 星の砂掬ってあげる結晶の雪の形の風に鳴る砂
2416 平和堂、平和公園、平和通り、どこまで続く日本の平和
2417 菱餅は山の旧家の慣わしの雛の節句の無礼講でも
2418 春だから白木蓮の花が咲き天に向かって祈りの形
2419 野原には春がすぐ来る土管とか地面に近い草の葉に来る
2420 筆に似て土筆、杉の子、春の花 菜の花そして大根の花
2421 フィレンツェへ、ベニスへ風の商人は巨万の富を積むフレスコ画
2422 封印は華やかに且つ軽やかに誰も知らない秘密の時間
2423 この舞台、いつかどこかで見たような記憶の島に漕ぎ出す小舟
2424 春までは持たない命だったからさまようのです冬蚊のように
2425 冬田には水凍るから月凍り心も凍る稲田の二月
2426 枕木にする栗の木は黄金沢の日当たる斜面の栗の木林に
2427 草分けの夫婦漫才の漫才師 市場の外れの二階の夫婦
2428 岬から入り江をめぐる道に咲くハマユウゆれて夏は来るらし
2429 名誉ある撤退という選択肢すでに焼かれて砂漠の戦争
2430 紋付の紋は九曜の日月の七曜越えた二つは死星
2431 八百屋にはタラの芽、蕨、フキノトウ 苦味ほろほろ今年の春の
2432 八雲立つ出雲の峰にかかる月 月が出ずれば隠れる獣
2433 黄金の山吹一重八重に咲く山路を行けば山路の黄金
2434 一片の雪の結晶、天上に生まれたままに降る北の国
2435 洋梨のジャムを一壜ヤマモモの壜も一壜、花梨は酒に
2436 浴槽に浮いた花びら桜湯の季節になればさくらの花の
2437 温厚な人が垣間見せる横顔に狂った王の徴、青痣
2438 泥の中きれいな花を咲かせても無意味無意味と蛙が騒ぐ
2439 蜜柑風呂、夏蜜柑の木のある庭の黄金色の蜜柑のお風呂
2440 蒸し器には竹の蒸篭とアルミ製蒸篭があってもちろん竹製
2441 メロンパン大好きだったあの人に持って行こうねお彼岸だから
2442 木綿とか絹ごしだとかお豆腐はやさしい繊維の名前がついて
2443 予想ではパドックにいる馬のうち唯一頭だけ抜け出すだろう
2444 何事も無かったことにして終る なお見解を異にする鯊
2445 慈しむ愛というのもあるんだね月に零れる蝋梅の花
2446 鳥、獣、雨の中なる十字路の樟の大樹に降る雨の音
2447 羊歯族の裏白の蔭、無限大 水を湛えて澄む羊歯の森
2448 白金耳焔に焼けばシャーレーの内に今宵の雪降りしきる
2449 既に死んでいたものが改めて死んでも何も不思議はない
2450 丈高き芒一本掃き流し銀彩の壷冷えてゆく冬
2451 こんなにも争う人と人と人 ベツレヘムには神の子の教会
2452 摩天楼犇く街を黒葡萄一房さげて茂吉が行くぞ
2453 大晦日というものらしい冷え冷えと冬らしい年の市
2454 先端にいたあの人が今どこにいるのかはいつも気になる
2455 青空で木枯らしも止み穏やかで 旧い映画の中の抱擁
2456 透き通る容器に入れて匿った 水より淡いウラヌスの卵
2457 明け方に雨は上ってイランでは夢の続きのような大地震
2458 ジャスダック、マザーズ&ヘラクレス 地平を僅か染める黎明
2459 薄曇る空に氷が生まれたら煙になったロンの命日
2460 富士山が林の向こうに見えた日の記憶の中の赤い日輪
2461 日常が集積すれば正確で緻密なカレンダーになるのか
2462 こんなにも退屈なのは午後五時の太陽がまだ青いせい
2463 冬の日は短く川も枯葉色 落葉のマントに包まれる蝦蟇
2464 置き忘れの文が一葉、冬木立 空を流れてゆく銀の星
2465 戦争の放棄を放棄するために派遣されるのだろう誰かも
2466 過去ログのどこへ消えたか解らない貴方の歌を探しています
2467 空を飛ぶ魔女がいるから猫だって空を飛びます或いは羊
2468 どんよりと空が曇れば藻の陰に尾鰭胸鰭隠して眠る
2469 紗や絽や羅、透ける衣を織れば夏 蛍も蝉も蜻蛉もいる
2470 91年湾岸戦争から12年 砂粒よりも小さく「ハンタイ」
2471 寒いから真紅の熾で暖めて霙のような雪降る前に
2472 回顧録の中の祖父たち降りしきる雪の中なる緑色の暈
2473 疾風のように再び戦争がそこに来ていて冬の稲妻
2474 ベケットは人間嫌い 変わり者 甥のフレディとはお友だち
2475 清王朝滅びて後の蟋蟀の手足不自由ならむ貴種なれば
2476 日の暮に橙色の月が昇るファラオのような黄金の月
2477 忘れたい何があるのだ忘れても忘れても追って来るのか
2478 青空に雲なく粉引に碧の茶 見えない雲が棚引いている
2479 孔雀を飼い鶴を飼うのも退屈な山の暮らしに倦いてだったか
2480 湖底には里村一つありましてダム干上がれば水車小屋の跡
2481 とめどなく太鼓は打たれとめどなく舞台の雪が降りしきる
2482 安定という幻がある限り 金太郎飴歪んでいても
2483 もう戻れない時間の中で燃える炎を見ている真昼
2484 ゆっくりと飽和状態ゆっくりと終りに向かう炎える草叢
2485 木の断片 素朴な十字架 雨の日は雨の洗礼ラーラのために
2486 書割かト書きのように月が出て夜汽車が向かっている無人駅
2487 誰も彼もみんなが死んでしまったら 焼け野原なら猶完璧に
2488 左手はいつも同じ音の繰り返し黄金の秋が来ていても
2489 音楽は途切れても囁く雨ブロッサム・デアリーみたいに
2490 偶然なんていくらでもある私がこの世に生まれたことも
2491 いつだって気むずかし屋のアルルカン 明日は天気になるのだろうか
2492 火喰鳥、花喰い鳥は梢離れ 雨期の沼地の森へ帰るよ
2493 私の金魚が仮死した日 花道引いてゆく船弁慶
2494 だとしても死者の手紙も届きます もうすぐ青い夜が来て
2495 結局のところいつか私も焼き場の煙 「煙」という名の猫もいました
2496 雪、霙すぎゆきし日の冬の雨 夜の香りやロシアの香り
2497 タイトルを入力するのも面倒な気分だけれど秋空の青さ
2498 厳島海に浮かんで潮満ちて潮引くまでのときを蕩う
2499 花が咲き実が生り花は花疲れ 曇り空から白い太陽
2500 野ざらしの石の仏よ微笑仏 誰が彫ったか夕焼けの道
2501 紫の花が咲いてる唐辛子もうすぐ五色の宝玉になる
2502 微生物よりもやさしく強力に水素が水に戻る力で
2503 月光の天心微かに翳らせて 帆船一艘隠す洞窟
2504 餅搗いて竜神様に供えます海に呑まれる船なきことを
2505 剥げ落ちた青の色彩その質感 少し混じって夕焼けの色
2506 蟷螂が振り立てている垂直の斧であるから折れやすき斧
2507 今日という日が終っても明日が来て野鼠水漬き日にも曝され
2508 鬱々と籠もる一日の終るころ祭りの山車が勢揃いする
2509 虚しさに襲われている秋の日は鷺も烏も見分け難くなる
2510 屋上より落下物ありと朝の掲示板 落下してゆく人型の影
2511 夕映えの道に老人 年老いてゆくとき影は全てとなって
2512 地獄花死人花ともいうけれど猫も家鴨もいる土手に咲く
2513 汗ばんで葡萄の雫光ります まだ夏雲の浮かぶ空です
2514 ラングドシャ舌に溶けゆく午後三時 まだ鳴き足りないヒグラシの声
2515 簡単な文字少しずつ間違えて再入院のあなたのメール
2516 どこからか胡弓聴こえる昼下り夏の最後の日曜日です
2517 黒猫がそこを通って行ったから今宵新月 火の星を見る
2518 菊人形、遥か彼方のウルトラの母が呼んでる月光公園
2519 葦の影、薄の影や虫の影 影絵のような世界があった
2520 白孔雀、鳳凰描く打掛けを纏って熱き加納幸和
2521 椰子の実が椰子の高さで見たものは南の島に降る夏の雪
2522 金色の海に太陽、薔薇色の海に駱駝やきりんの夢が
2523 抜け殻になったら逢おう魂の三重連の水車が回る
2524 九星と波紋映して漆椀 濁った鬱のゆき場なく秋
2525 六万年ぶりに接近するという火星ゆらゆらひんがしの空
2526 冷害の東日本、欧州の熱波 火星近づく年のできごと
2527 夏去りて抜け殻のこし白蛇は大屋根の梁つたって消える
2528 夏空を見れば「夏空の櫂」思う骨の髄まで侵されている 
2529 退屈な雨の夏にも蝉しぐれ ひとしきり鳴く裏山の蝉
2530 あの貨車は今どのあたり過ぎている遠い銀河をゆく夏燕
2531 晩年は楽しからずや ハルウララそう、もっと駆けなさい
2532 ハルウララ91戦敗け続け 夏すぎてなお走りつづけよ
2533 遠からず死は現実のものとなる 雨に打たれている曼珠沙華
2534 日向灘、嵐の後の静けさに朔日の月昇る中空   
2535 海の幸ひかりの幸を引き寄せて大網を引く日向の月が
2536 雲助の将棋を打つなと阪妻の旧い映画で三條美紀が
2537 嘴が痛くはないの? 木を叩き木をつつく鳥ちいさいコゲラ
2538 嵐、虹そして何もない明日 吹き飛ばされた蝉は秋蝉
2539 切なさの色よりも濃い原色の虹がいつもの虹になるまで
2540 一人に向かって人は歌うという 海酸漿を鳴らして遊ぶ
2541 魚、貝、草の葉そして恐竜の卵 埋もれた砂の中の私
2542 満ちてゆく月からっぽの心抱き波の兎と遊べば暮れる
2543 点と点つながることがいいという考えもあり蝉時雨降る
2544 追い風と向かい風では違うよね 雲の動きが見分けられない
2545 纏わりつくような暑さが堪えられない暑熱のうさぎ耳垂れる夏
2546 こーこーと鳴き朱鷺が飛び天女のような翼があった
2547 混沌も夜明けもいいね深夜に咲いている青薔薇も
2548 夜明けには川霧のぼる川霧は無明の闇の底からのぼる
2549 星たちの駱駝のそしてオアシスの力 きれいな形にめざめる水よ
2550 八月葉月月見月月齢三日稚月満月にはまだ暫くあって
2551 あと数日で立秋という短い夏にまだ蝉の声が聴こえない
2552 誕生の約30万年後に晴れ上がる 自由であれば屈折もなく
2553 いつかきっと宇宙の果ても見えるだろうどこまでも透明に晴れた空間
2554 液晶のモニターに見る遠花火 江戸の花火を忘れずに咲く
2555 隅田にも西武園にも行かざりし 花火が見せていた万華鏡
2556 花が咲き花火が咲いて胸の花ほどけゆきたる五彩の色に
2557 夜の波 川面を走り帰らざる 船、人、花火 夏は逝くべし
2558 八月の青さの中に溶け込んで帰らぬ兄の頭蓋のうつろ
2559 タッちゃんと浅倉南の声がする 多分夏休みも始まっている
2560 ハルウララ91戦敗け続け 巻貝が抱く螺旋の記憶
2561 雪見れば雪の静内放牧場 もう走れなくなるまで走
2562 忠実に従いましたが丑の日の鰻裂かれて焼かれる煙
2563 体系化されつつあれば体系化逃れてゆかむ遊びせむとや
2564 大量に打ち寄せるのは満月の死骸にも似る越前海月
2565 虹がどこかに見えたと思ったよあれは夢だったのだろうか
2566 水中に゜゜゜゜゜゜゜゜泡見えるとき夏空の青を映した魚がよぎる
2567 あの人の歌が切り刻まれている切り刻まれるあの人の歌
2568 簡単に歌は生まれて歌は死ぬ 雲ひとつない空は嫌いだ
2569 この雨に変わってもうすぐ蝉時雨 24度で初鳴きという
2570 ゆっくりと繋がれている どこに? どこか知らない明日に
2571 悲鳴ってみんな似ているそれが誰の声でも関係なく
2572 「モデラート・カンタービレ」の悲鳴から始まる全八章
2573 この雲をスクランブルして飛ぶ機影 入間基地から飛ぶ軍用機
2574 サイパンに大きな虹がかかる頃火炎樹にいま雨降り注ぐ
2575 ブリスベンに入港してゆく白い船 コアラやカンガルーに会いにゆくんだね
2576 ゴキブリはゴキブリとして生存し生を終えるかかなしくもあれ
2577 血の山河、夏の山河を渡りつつ ニッポニア・ニッポン滅びてゆくも
2578 あの時は逃げられなかった今ならば逃げられるかしら列を乱して
2579 金星の他には誰も見ていない 早起きの鵞鳥とアヒルが村を出てゆく
2580 夏の海、月の浜辺に椰子の実が流れ着くらし海月も浮けり
2581 音楽のきれいな先生「しろばんば」みたいな恋が終って少年
2582 淋しい子、強がり泣き虫見栄っぱり 絵日記に描く白い帆船
2583 泉蔵院、城壁に似た白壁の道を曲がれば七月の海
2584 三架橋、琴弾八幡、神恵院 楠の大樹と涅槃の釈迦と
2585 銭型の寛永通宝、白砂に描かれて琴弾浜海水浴場
2586 射吹島、亦島、菊紋円神島 箕浦走る海岸電車
2587 三豊郡、十六箇村の年貢米納めて昏き蔵屋敷なれ
2588 流金も和金も川を流れ来る金魚問屋の庭陰の川
2589 雨霧城、由佐城、仁尾城、九十九城 讃岐は城もお結びコロリン
2590 四国路の衛門三郎、伝説に蓮華微笑のような昇天
2591 透き通る希望があれば希望など笹の葉流す七夕祭り
2592 明日入院あさって手術と知らされる 「世界に一つだけの花」が聴こえる
2593 何事もないかのように朝は来る消えた楽譜の淋しい音符
2594 紫蘇に雨、羊歯に霧雨、竹の秋 睡蓮はまだ眠っているね
2595 一晩中、屋根を濡らして霧雨が降っていたこと知っていました
2596 再起動繰り返し書く一つの名 消えてゆくから素敵なWEB
2597 眠りましょう私に何が起ころうと今日の眠りは私のもの
2598 再び雨 雨また雨 雨のち雨の東京の空に氷雨を曳き飛ぶオナガ
2599 悪声のオナガの青い美しい尾にも見惚れよ斑の犬よ
2600 もうこれでお別れですね透明な水の卵を産む魚たち
2601 死屍累々、象は墓場へ辿り着く 歌も墓場へ向かうのだろう
2602 長い夜明けて木洩れ日さす森に水蒸気立つ風が流れる
2603 夕べには薄紫の風が出て梔子がもう腐りはじめる
2604 花火にも鳥にもなれず胞子飛ぶ とても虚しい日暮れが来るよ
2605 また何もしないで終る一日か 少し暑いと疲れやすくて
2606 日々は夢 宮脇檀氏の教え 豪奢、逸楽、雑にして楽
2607 アカシアの白い花散る夏の雨 小猿は白い花に埋もれて
2608 山芋の蔓がこんなに伸びてきて零余子も幾つか生ってるみたい
2609 枇杷の葉に枇杷の葉の雨 枇杷茶飲み枇杷湯に浸り浸り而して
2610 いつか見た風景の唐突さ変わっていないね 鎌鼬かな?
2611 気圧の差、皮膚が切れたり血が出たり擦り傷の痕ゆえに消えない
2612 アルビレオ、デネブ、銀河を飛ぶ鳥が白鳥であるこの世の優雅
2613 しんどくてだるくてでもねそれが普通 タップダンスは踊れませんが
2614 胡桃の実、植木鉢にでも置いてみて胡桃林になるはずだから
2615 沈黙が怖くて話す最速で走ってしまう竹群に風
2616 不規則に生きているから不規則に身体も傷む 急がなければ
2617 太っちょのポーランドから来た指揮者のタクトから雨は降る
2618 義妹の植える紫陽花、百合、ハーブ 霧の鬼無里の草分けの道
2619 叩かれて打たれた鍵と擦られた弦が薔薇の崩れる刻を見ている
2620 おそらくは鹿も帰って来ないから雌鹿、牡鹿の白蝋の谷
2621 第五期はラストステージ常夜灯舞台にともる終焉序曲
2622 また一羽欠けて街空広くなる 鴉も見ているお引越しだね
2623 まぁいいさが口癖で 終る時もいつか来る 春ならいいな
2624 この世は所詮生者の宴 月の裏側には蟹がはりつく
2625 温存をしてはなくしてしまうのは温存選ぶ愚かさのため
2626 日々捨ててゆくべきものを煮凝りか膠のようになるまで置いて
2627 六粒の薬飲み込むことさえも画面で言えばあの砂嵐
2628 昨日、今日、そして明日も出かけます白い廊下が続いて寒い
2629 一瞬の眩暈で消えた歌のため水撒けばそこに立つ虹
2630 燦々と月光降れば燦々とかなしみも降る 夜の汀に
2631 暖かい羽毛のような悲しみが満ちて来ること 雨季の悲しみ
2632 紫陽花に雨が降らずに睡蓮に水辺がなくて来る夏に似て
2633 話し合うために用意をされた椅子 椅子から生えている薔薇の棘
2634 Xには限界がある つまりそのX ′の脳の限界
2635 水性のインクで書いた歌だから滲んで消える雨の朝は
2636 前頭葉杳くて雨の黄昏も水溜りには青の紫陽花
2637 夏の庭 古い庭には古井戸と思い出だけが住んでいました
2638 状況は悪化している 或いは悪化させつつ嵐の前夜
2639 八月の海に鯨を見たというそんな映画も記憶の水辺
2640 何かしら悲しい音がするようだ水禽がまた浮巣を作る
2641 雨の歌、心に雨の降るときに 雨の雫のきらめく午後に 
2642 心臓も疲れています休みなく働き続けた心筋なんです
2643 湖の岸に沈んだ葦舟も鳰の浮き巣も降る雨の中
2644 月と星二つ並んである時間 蝙蝠が飛ぶ町の夕空
2645 雨の音聴きながら見る財田川 財田川河口の廃船
2646 隠れ家の屋根裏にある天窓を抜けたら銀河星雲の船
2647 魂が孤独死しそうな朝だからお帰りなさい母船(マザー・シップ)に
2648 虚しさに蟇は篭りて桜桃忌 宇宙塵ともなりゆく蛙
2649 上水に雨降る雨の木の葉闇 きりもなきむなしさの桜桃忌
2650 どくだみの白い十字が美しい 木の下闇に死蝋は満ちる
2651 「借物の翼で飛んでいた」という映画の台詞 灰色の翼
2652 雨上がる玉川上水渦巻いて流れるままに消える病葉
2653 降りそうで降らない白い空の下 紫陽花暗く首を傾げて
2654 弦の音だけが聴こえる朝クーセヴィッキー「小さなワルツ」
2655 ヴィオロンもコントラバスも歌います 緋色の椅子にあの人がいます
2656 どこから来てどこへ行くのかだけを問題にしていた ここにいるのに
2657 さびしさはこのふるさとのゆうまぐれ竹の林の月光の雨
2658 虚しさも寂しさもまた始まって木々の葉末に降る雨になる
2659 蓮根が綺麗な花を咲かせても無意味無意味と蛙が騒ぐ
2660 床屋にはくるくる回る棒があり目印かしら鋏の絵文字
2661 天使には天使の羽が重かった  魚になったその理由です
2662 青虫が蜜柑の葉を食べている白い蔓薔薇も咲いている
2663 この世界、灰色の世界に見えるときいつもあなたの声が聴こえた
2664 翠鳥の青き夕闇歌っていた誰かも見たのだろうか死の谷
2665 桐の花むらさきに濡れ紫の雨に打たれて咲く花の雨
2666 夏の夜も海月は赤子産み落とし月光の降る時間へ帰る
2667 初夏の金魚は眠り足りなくて終日さゆらぐ藻のなかの赤
2668 武蔵野はここ過ぎてなお春の闇 逃げ水という水のあること
2669 宝塚ホテルの蔦は見ていたね大劇場が傷んでも猶
2670 雑踏の中に一つの肩がありその肩で見る炎の祭り
2671 機械屋さん発明屋さんお父さんあなたの何を私は継いだ
2672 教えてねいつかロマンチストの一生が幸福だったか不幸だったか
2673 辛夷散り孔雀も羽を閉じたから木々は迎える驟雨の夏を
2674 プーランクの第二楽章聴いている 小鳥が聴いた風の囁き
2675 お終いにしようね夏が来ているよ蜜蜂の受粉も終った
2676 山吹も藤も城下の鯉が好き さくら吹雪も忘れぬ疎水
2677 江戸の茶屋 隅田の川の花吹雪 花はあの世もこの世も美しき
2678 藤の花はもう咲いているかしら紫の、そして白の藤の花
2679 船舶用吊り下げランプ点燈し緑色した時間始まる
2680 何日ももう何日も何日も 月が覗くよ死の翳の谷
2681 終る春 かなしみ知らぬ橡の木も若葉の五月迎えただろう
2682 ときじくの実が熟れ海の潮騒が聴こえるような春の満月
2683 満月が零した滴集まって夜は優しく プーランク「シンフォニエッタ」
2684 非時香菓(ときじくのかくのこのみ)のかぐわしく雨の春夜も日照りの夏も
2685 第二楽章、中でも最も美しい数節の連弾が消えている
2686 見憶えがあることつまらないことが気になる雛壇の雛
2687 難有りと指摘する人される人 春は朧の月も出る頃
2688 月光が覗いていった夜でした あなたが来たって思いましたよ
2689 曲線は重なってゆくピアノから半身既に抜け出している
2690 2台のピアノのための協奏曲 第1楽章から始まる朝
2691 十六夜の月の翌朝の蝙蝠や白梟の眠りのために
2692 五・七・五で書く病気まだ癒えず さよなら▼また来て■
2693 無造作にそこにあるから顧みず振り返らずにそろそろ枯れる
2694 *************蜿蜒と蜿蜒と続く鉄条網の中
2695 花びらを浮かべて夜の水溜り 飛行機雲はもう映さない
2696 ロスアラモス、原子の光生れる場所 オッペンハイマー博士の双子
2697 Atomic bomエノラ・ゲイ号が運ぶのはリトル・ボーイと名づけた爆弾
2698 Atomic bombボックス・カーが運ぶのは太った男と名づけた爆弾
2699 エノラ・ゲイはこんな飛行機 ぬばたまのヒロシマの雨降りしきる
2700 おそらくは歴史への無知が私たちをやがて滅ぼすいつかのように
2701 鉱泉が湧いている宿 黄泉の国、黄泉の霊泉などと看板
2702 いのちは陽炎なんて誰が言ったのだろう 雲雀は雲を突き抜けただけ
2703 欠けて満ち満ちて欠けゆく月影に葉月の恋は生まれたばかり
2704 鳳仙花歌えばそこは青い海 遠く離れて海燕飛ぶ  
2705 湧き水の中に青玉沈む淵 水無月、水の輝く季節
2706 いずかたへゆくとも知らぬ旅なれど<同行二人>と手を引く聖 
2707 梅雨すぎて暑熱の夏が来るとても涼しき瞳持つらむ童子
2708 臨終を待つ夜叉神の荼枳尼天  狐とも言う狸とも言う
2709 たまゆらに出逢いし光り虹に似て朝日夕日を負う火喰鳥 
2710 大いなる原生林に育てられ清楚な花となる水がある  
2711 大空と呼ぶには小さき空なれど手をさしのべてみたい絵の空  
2712 土蜘蛛は何嘆くなく山中に屍さえものこさぬものへ  
2713 隠れ里 流れる人の一族を虹立つ滝の裏に隠して
2714 虚しさに日暮れの道を辿るとき紫の花、夢の紫
2715 夕暮れの道が仄かに明るむはこの紫の大藤のため
2716 藤色の花の夕暮れお祖父さんと歩いている子とお散歩の犬
2717 伐られてもなお咲くさくら今生に愁いなきごと光りまとえば
2718 長寿の樹、薄墨桜花降らせ死者を弔う風になること
2719 薄切りの茗荷か青紫蘇。茄子は皮目から油に入れて
2720 包丁は少し寝かせて三枚におろした鯵の背に切目を入れる
2721 玲瓏と日月暮るる金色に 雨季には湖になる熱帯林
2722 偏って舟は水没ジャングルへ 櫂を流した舟の行く末
2723 筍もまだだったらしい山はまだ富士桜など咲いている春
2724 ノビルいっぱい 韮でもラッキョウでもないお土産の
2725 帆を上げよ 五月の沖の打たせ網 白帆に孕む西海の風
2726 果実酒も今年はお休み 青梅が笊に並べば桐の花咲く
2727 ほのぼのと絶望的な光景が広がってゆく木下闇に
2728 ゆっくりとしずかに深く絶望は地表を流れ春の逃げ水
2729 水は逃げ水は去りゆく陽炎か蜃気楼かは知らず武蔵野
2730 『空とぶ女友達』のような歌集が作りたかったいつでも
2731 戦争という名のスキャンダルがありSARSがありまだ続く
2732 悲しみは疾走すると誰か言う モーツァルトを愛した人か
2733 素描で描けるのならば素描で油彩が必要ならば油彩で
2734 進化には関係あるかあらざるかロンサム・ジョージ100歳の亀
2735 エスパニョーラ島のイグアナ その身体赤くしている別れの予感
2736 ゲットーに囲い込んだら夕焼けがそこにあったという気分だよ
2737 カラコルム、天山南路越えてゆく風に逢いたいウィグルの馬 
2738 もう初夏と思う暑さの午前 驟雨のひびき懐かしむ午後
2739 日溜りに猫がいる 野火止に散る桜を見ている
2740 夕闇の岸にうっとり三椏が もうすぐ春は終るのですね
2741 臆病なジョージだったが成長しGOTHAM CITY のボス猿となる
2742 湾岸の青い蛍火 聖霊に祈りを捧げて飛んだみさいる
2743 クレマチスあなたが残した風車  風車に向かえキ・ホーテの孫
2744 紫の煙が春の野を覆う 高麗の里は武蔵野の果て
2745 「魂の娯楽煮」ですか、なるほどね井上雄彦さんって素敵ね
2746 エマニエル・シカネーダーも言っていた「ザッツ・エンターテイメント」で
2747 弾痕はどこにも見えず気づかれず理想の都市の中庭の傷
2748 アカデミア橋を渡れば浮き彫りの商館見えるカナルグランデ
2749 戦争の世紀終れど戦争は始まっている クック・ロビンよ
2750 そういえば死者を焼く煙もまた空の雲に紛れる 春なのだろう
2751 戦争が始まる夜も終る夜も世界は澄んだ透明な青
2752 その強さ、その激しさが同じなら離れていよう集会の夜
2753 眼裏に光きらめく 今朝生まれ今朝死んでゆく虹の断片
2754 やさしさは儚く脆い夢に似てあなたのいない朝が来ること
2755 約束し約束守る兎には硝子の櫂や水晶の舟
2756 川岸に立って鵞鳥を見ている子 平和なころのイラクの岸辺
2757 『空ヲ飛ブ羊モ空ニ鳴る鈴モ♪』こだましてゆく戦争の夜
2758 蟋蟀を隠していたのは映画だけ?それともほんとう?溥儀の蟋蟀
2759 歴史をみつめているのは人間だけじゃない 例えば溥儀の蟋蟀
2760 蝋梅の花を活けたよ蝋梅の匂いしている春の陽だまり
2761 貝殻に残っているのは海の傷 巻貝がつつむ青い潮騒
2762 たましいを遊ばせている秋の風 木の葉さらって駆ける坂道
2763 フクロウがほうほうと呼びモモンガが斜滑降する森の夕ぐれ
2764 「勝虫」と人に呼ばれて蜻蛉は武者の兜を飾りていたり
2765 銀蜻蛉、透明な羽さしのべてあなたの肩に触れていきます
2766 雪落ちる朝のしじまに雪とけて春の先触れ福寿草咲く
2767 言葉にはあらざる言葉、梅一輪、小雪舞う日の小鷺の飛来
2768 <究極の無機質>なんて言ってたね ハイエナも棲む風のサバンナ
2769 天空の窓にも降っていたかしら 飛び散っていた白い羽毛が
2770 廃園に増え続けている球根は石榴の実にも似ている水仙 
2771 ひとひらの雪の白さの儚さにいつしか閉じてゆく花びらに
2772 幸福の第三楽章始まって水仙月に聴くコンサート 
2773 谷保天神、座牛の頭を撫でていく風の行方は春の梅林
2774 亡くなったあの人が好きな紅梅が二月の雪の晴れ間に咲いた
2775 電子体、光体X、私が思ったことが在ったそのこと
2776 峪渡るこだまのひらく季節あり 死はすこやかに育ちつつあり  
2777 寒気団迫り来るころ魚捕る四万斗の霧凍るこの朝  
2778 火を振って魚集めて漁れば魚は桜の色帯びて来る  
2779 漁火の海があるから帰るべき海もあるべし空海の幼名は真魚 
2780 海彦の裔にして婆沙羅の裔、海の彼方に立つ蜃気楼
2781 水仙は春の香りの黄水仙 海を見ていた城の水仙
2782 天界につづく階段のぼる霧、朝霧の道帰りゆくひと
2783 白鳥の湖沼に羽をたたむとき大菩薩には冬の三日月
2784 賀状無く迎える知友また一人 寒中お見舞い申し上げます
2785 瑠離色の硝子を抱いた舟がありあなたを連れてゆくよ銀河へ 
2786 ジャスミンはしずかに樹液搾られて滴る緑モロッコの夜
: 『倉庫・混:白鳥座』 : - : - : posted by 風間祥  :
<< NEW : TOP : OLD>>