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銀河最終便  1章  詩曲

                          


詩曲


ピアノ聴くけだるき午後の瑠離色のサティを聞けば夏の雪降る
夜の窓 微かに聴こえる洩れてくる 小さな灯りと「悪魔のトリル」
タルティーニ、不死を夢見るヴァイオリン 腱・腓疼く「夜のト短調」
台風が来ているらしいこんな夜 「薔薇への三つの願い」聴こうね
クレッシェンド・デクレッシェンドどうしろというのだ降ったり止んだり雨は
バルトーク、ショスタコビッチ、プロコフィエフ  圧政ありて鳴り出だす音
バルトーク・ベラ、ベラ・バルトークいずれでもいずれにしても生き難き生

雨月には透明石のような曲 ピアノと管弦楽の組曲
ドビュッシー編曲による「ジムノペディ」 秋空に浮く露草、地球
ストラホフ修道院のコンサート冬のプラハの雪のセレナーデ
森の奥 予言の鳥は飛んだかしら シューマンの鳥、眠りの森の
天井に天使舞うから図書室の空に予言の鳥も羽ばたく
ラルケット 天使が喇叭吹くときに 始まるだろう世界の終わり 
烏羽玉の夜に目覚めて儚ければヴァイオリン・ソナタのための第二楽章 
マーラーの『復活』を聴く 演奏はルツェルン祝祭管弦楽団

やわらかく弦の音から始って木管楽器が続くその後
第二楽章、中でも最も美しい数節の連弾が消えている
フリードリヒ・グルダのためのコンサート 弦とピアノと一つの記憶
リコ・グルダ、パウル・グルダに父グルダが愛していると伝える楽譜
七転び八起きの八が来ないからショーソン作曲「詩曲」の中へ
アナトール・サルバトーレの弦の音聴きつつ震えている夏の翅
旋律ハソコデ膨ラミソコデ消エソコデ躓キソコデ泣クノダ
大四楽章「生」 九十歳、朝比奈隆が振る終楽章

旋回、旋回、旋回、旋回グラン・ジュテ! 薔薇、薔薇の精、跳ぶニジンスキー
明日からはBプログラム秋燦々 シルヴィ・ギエム最後の〈ボレロ〉
中空に炎となって舞うギエム 速水御舟の〈炎舞〉にも似て
舞台には時空をこえる橋が架かり 江戸のすべてが通って行った
魚屋も飛脚も手代も虚無僧も 遊女も瓦版売りも通って行った
なんという長い退屈 絢爛な退屈として「十二夜」がある
シルエットから始まって絢爛の豪奢にいたる次第、夜の部
幕開きの桜吹雪と鏡面のほかには船の率い出される

だんまりのような春来て薄闇を動く人影、散るさくら花
小忌衣、得体知れない衣装なれど義経が着れば貴人の衣 
久松の籠かき二退三進し花道を去る 籠かきにも花道
私の金魚が仮死した日 花道引いてゆく船弁慶
「恐ろしいのはお前の心」鶴屋南北の見た人の闇
その手紙見せよと迫る鬼女がいて 脚曳き歩く歌舞伎の女
華やかなその色彩は一転しモノクロームの雪降る世界
とめどなく太鼓は打たれとめどなく舞台の雪が降りしきる

祥  * 『銀河最終便』  * 14:24 * comments(0) * trackbacks(0)

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