銀河最終便
WEB日記

足立尚彦歌集『でろんでろ』                 











2013 年5月10日発行
発行所 ミューズ・コーポレーション
定価 本体、2000円(税別)




・新聞をやめてもいいが発見が遅れるだろう我が孤独死の  

・逝くために君が入院した春のまた巡り来る咲けチューリップ

・宮崎に足立尚彦棲むというこの真実のようなさびしさ

・世の中は東西南北で出来ている。それなら我が真ん中らしい

・信号機が月より美しい未明ダウ平均は続伸だった

・枕カバー破れ枕も破れそう孤独はつまりぼろぼろである

・サラダには何かふわふわ隠されて昨日もあった殺人事件

・何組の恋人たちの跡だろう跡を消し去り貰う賃金

・モップにも沈黙にも力を込めオフィスの隅を仕上げれば、朝

・スーパーの食えないものの代表としてお揃いのカゴが行き交う

・コンビニは明るくきれいその場所が事件現場となったとしても

・面積を持たぬ直線ありありと引くとき人はきわめて真面目

・またの名は湯豆腐ならん豆腐鍋ひとりつつけばあくまでひとり

・焼き魚食いつつ小骨にいらいらとしおり背中をすこしまるめて

・食後なることは明白、だがしかし食後の薬を飲んだかどうか

・内視鏡の先がするると迫り来て我の無頼がひるみおりたり

・誰に何をしてあげられたのだろうそもそも生きてきたのだろうか

・涙もろくなってしまった白髪が増えてしまったよきにはからえ

・合法か非合法かはわからぬがまたもやひとを捨ててしまえり



5年の月日が長いか短いか。
前歌集から5年ののちに上梓された、これは第4歌集になるという。

普通の顔をした日常に、殺人事件の容疑者がひそむように、
人生は、私たち自身の複雑な顔も隠している。
葉の1枚1枚の陰に隠れるように、
多重な心が隠れている。

未来が少し明るく強調されるが故に不穏さも増す2013年の初夏、
人々が西へ東へと移動するゴールデンウイークのさなか、
煌々と照らされたコンビニ的2013年の真白さの中で、
この歌集を手に取ると、5首目の怖さに震える。
自分自身が、容疑者となって追い詰められて行くようだ。

: 『歌集、歌書、歌誌、その他書評』 : comments(0) : trackbacks(0) : posted by 風間祥  :
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