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萩原留衣さんの歌

004:淡
まだ淡い光だけれどやりたいと思えることに出会って嬉しい
003:つぼみ
傷ついて閉篭る君にもう一度咲いて欲しくてつぼみを贈る
011:都
東京都であること忘れてしまいそう滝乃川には静かな時間
008:鞄
夢だけがまだ貼り付いておりました。ぼろぼろになった鞄のなかで
007:発見
良い風が吹く筋発見するたびに似合う風鈴探して吊るす
014:主義
頑張らないでもあきらめないその主義で壁を扉に変えていきたい
024:チョコレート
画用紙にチョコレート色の江の電を走らせている十月の画家
023:うさぎ
本当は飼育小屋には抜け穴があってうさぎはときどき月へ
021:うたた寝
うたた寝をしている透明人間を踏んではいけない法律がある
026:蜘蛛
星からの手紙が入った水滴が届きましたと学者の蜘蛛が
031:盗
図書室に優雅な秘密盗まれたはずの名画は栞にされて
028:母
星祭りをひらきますので雲母粉塗っておいでになってください
052:螺旋
日本には四季があるので思い出は花を纏った螺旋になります
070:曲
曲がり角冒険家に教わった通りに楽しい迷子になった
095:翼
翼よりつかめる指がいいのです貴方の役にたちたいのです



人はどうやって希望を見失わないで生きることが出来るか。
その答えは誰にも見つからないかもしれない。
でも留衣さんの歌を読むと、いつでも内側から射しているような
仄かな明かりを感じて励まされます。

その感触は宮澤賢治に似ています。
温かで基本的に人間を信じている。
科学的な好奇心と、信頼を素にした愛情の幸福な結合。

周囲の価値観に迷わされない自分の世界を持っていることが、
萩原留衣さんの歌に創造的な光りをもたらしているのでしょう。



祥  * 『2005年「題詠マラソン」』 * 11:53 * comments(0) * trackbacks(0)

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