煉瓦塀残して夾竹桃は枯れ 白壁はなお夕日に染まる
上の新屋、前の新屋と西新屋 本家とは境もあらず行き来した頃
イクパスイ彫刻された木の意匠 道南十二の館の出土品
弁財船、北前船の航路から引き揚げてくる数多の賜物
異文化と異種交易の接点に蝦夷の夕焼け落日の海
一族の興亡語る戦記にも降る雨はあれ 夏越しの祀り
潮風の街に生まれて坂道の曲がり角には海が見えていて
朝焼けの海は薔薇色、象の声時々聞こえる夏の教室
河馬眠る王子公園の昼下がりキリンは遠い海を見ていた
水の夏、火の夏、風の星祭 北の大地の古式の祭り
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◎
神話というからには神がいるだろう 原子力安全神話にも
「守りようもない」原発を曝しつつ敵基地攻撃をするという国
貧しきを憂いながらに生乳を棄てる政策もなお続けられ
高齢者は自決せよとぞ迫り来る 現代にもラスコリニコフ
舞台では三浦春馬が演じていた 帝政ロシア時代の青年
夕やけと赤とんぼではなくあれは戦闘機 松本零士氏の八月十七日
いくらでも増産をする戦争か 増産をする兵器のために
激しくもないが穏やかでもないと金星・木星寄りそって空
ガラガラとくずおれていくこの国よ むごたらしさの生れしばらく
花ばかり咲くと限らず雨の土手 なお一面の大根の花
『玲瓏』109号 2023年5月30日発行
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・日本の底には釈迦も基督も救えぬ衆生の水泥のあれば
・一筋の光のように洞窟の奥深く点る青き苔あり
・本栖湖の昏き湖底にいにしえの遺跡のあると村人の
言う
・秋月の涼しき城よ将軍家献上の茶壷をとどめ涼やかな城
・道志村、谷村城下の岨道を行けば山中湖の平野まで
・甲斐の水、相模へ流す水の道、神奈川県の水源となり
・猪や猿やハクビシンなど出没し電気柵にて囲まれた集落のある
・拒否権を発動したいことである 弓形の列島、深く犯され
・阿片で狂い七三一部隊に丸太にされたひとたちが岸信介の背後に佇む
・濃密な関係を見てもまだ葬列に並ぶ人たち これがポピュリズム
『玲瓏』108号 2022年12月31日発行
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向日葵が咲いていたのもウクライナ ソフィア・ローレンお元気ですか
情熱の火の炎える国ウクライナ 黒土の沃野にあるもの今は死か
そこは広い回廊にして広場であり 往きて還らぬ生命の通り道
「戦争犯罪人」? 戦争は犯罪だからそれはそうなる
黒煙や白煙上げるマリウポリ アゾフスタリ製鉄所の地下に二千人
攻撃の終わったのちの静寂が 海辺の街の石の回廊
人類を罰するようにパンデミック来て人類を嘲けるように戦争が来る
サラマンダー、火の神、火蜥蜴、火のドラゴン 襲い来るとき溶ける精霊
ティラノサウルス空に口あけて雨上りの虹を待っております
ハチドリは嘴に水溜めて飛ぶ 森林が今燃えているから
『玲瓏』107号 2022年6月30日発行
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・変死遺体その誰かは私であったかもしれない250人の生きた8月
・深淵に吸い込まれてゆく透明の魚のありけり秋はまだ半ば
・蜻蛉にも好かれる人はどんな人?そういえばもう秋だったんだね
・水門をくぐれば隅田川という 羨ましいな河を見ていない
・運河には渦巻く泡や芥船 秋しののめの空も曇れば
・そうそこが広い晴海の交差点 保育園まですぐそこの道
・オリーブの樹にはオリーブ実るから玉なす実にも太陽があり
・あのあたりイオンと教室のあるところ 船から見えて橋から見えず
・小舟には花も積まれて河をゆく ベトナム・メコンの流れを思う
・「広い河の岸辺」を唄う声 岸辺には花が咲いているのだろうか
『玲瓏』106号 2022年1月31日発行
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・燃える街 暖炉に落ちた焼夷弾 母の記憶の中のその夏
・海風と砂地が心地よい道を歩いて行けば見える赤い屋根
・洋館が珍しかった頃の屋根 今も車窓から見ればそのままに
・ロシアより帰った人が建てたからニコライ時代のサモワールもあり
・ロシアから来たサモワールや本箱は引越しの時も捨てないできた
・マホガニーの堅牢無比の本箱は帝政ロシア時代の名残とどめて
・その古い役に立たない湯沸かしは今も私の部屋の片隅に
・お隣と我が家を残して焼け野が原 母が語った記憶とともに
・空襲で焼けてしまったご近所と 二軒残った隣家と我が家
・母がまだ若かった頃の隣家なる「櫻正宗」砂地続きに
・防火水槽代わりに酒の大樽を隣家より頂くという 家焼け残る
・その年の神戸は焼かれ焼け残り 昔の洋館の暖炉と酒樽
・焼け出され、引き揚げて来た知人・親類も二年近くを暮らしたという
・あの街を焼いた炎の中にいた当時の人も大方は死んだ
・消え去った幻だろうその校舎講堂に置かれた死体
・小学校校舎に残る黒い跡『火垂るの墓』の頃の名残と
・酒樽が醸造用の酒樽が防火用水桶になった時代と
・頂いた大きな大きな酒樽でわが家は燃えることをまぬがれ
・結局のところ見知らぬ街となり 震災もあったし時間も経ったし
・町の地図ぬりかえ町名も変更し不可能となる存在証明
・花束が微かにゆれて陽がさして その陽のようなゆらめきの中
2015年『玲瓏』90号
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明治時代は煉瓦が流行ったのだ。
上の新屋、西新屋、前の新屋と分家ごとの塀に従い厄除けの灰
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3月14日
当直医と一緒にテレビの画面を視ていた。
津波に流されて行く町があった。
轟々と次々と消えて行った。
二万人くらい亡くなるかもと
話したりした。
祥
@sikibukyo
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3月14日
まだその時は、
原発災害のニュースは
殆どしていなかった。
ただ津波の恐ろしさを伝えていた。
祥
@sikibukyo
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3月14日
防衛医大の医師も看護士も
同時に自衛隊の技官でもあったから、
情報収集が早かった。
気仙沼が炎上していた。
祥
@sikibukyo
·
3月14日
手術待ちの入院患者が家へ帰された。
しばらく手術は無いということだった。
手術に必要な電源が足りなく
電車が不通でスタッフが来られないから
ということだった。
既に手術を終えた患者だけが
残された。
暗い空洞が幾つも開いた廊下が並んでいた。
あらゆる窓は放射能を恐れて締め切られていた。
祥
@sikibukyo
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3月14日
3.11のすぐあと、
防衛医大病院の5階から見ていた。
病院職員が人払いしてしばらく、
入間基地の車が来て、
防護服に身を包んだ人が取り巻いて、
担架を囲んで救急入り口へ搬送していた。
私たちのいた棟の窓を全部閉めるように
言われた。
祥
@sikibukyo
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3月14日
福島へバイクで通う人がいる
そんな距離に私たちはいた。
3月14日
ラドン温泉である三朝温泉の効能効果リウマチにも効き
祥
@sikibukyo
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3月14日
三朝橋、河原に湧いて癒しの湯 天然にして源泉かけ流し
祥
@sikibukyo
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3月14日
NHK小さな旅でも視ましょうか 三朝温泉湯けむりの旅
祥
@sikibukyo
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3月14日
山毛欅の森にはカワラヒワ 赤松の木をつつくホシガラスも
祥
@sikibukyo
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3月14日
御釜の碧は消えて隠れて白い湖面 冬の蔵王は樹氷の森に
祥
@sikibukyo
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3月14日
アカゲラとアオゲラがいるアカハラも 冬の森から南へ飛び立つ
3月14日
ホシガラス 松ぼっくりを食べている 頬一杯に食べて松の森
3月13日
法要はこののち六時間つづく 炎が焼いて災いは焼かれて
祥
@sikibukyo
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3月13日
松明の炎の塊火を散らし火の粉を散らし闇夜に回る
祥
@sikibukyo
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3月13日
修二会である 奈良東大寺のお水取り 1270回目の疫病退散
ビザンチン帝国にしてロシアにして正教栄える屋根の曲線
東西に分かれた文化も権力も歴史も咲いて双頭の鷲
セルビア、アルバニア、モンテネグロも祝したる双頭の鷲、街を見下ろす
燦然と輝く紋章、双頭の鷲はロシアへ移りてまたも
悪評を立てる暴君、皇帝、女王の美しすぎる物を遺せり